初恋と後悔
さて久々の地獄だな。と口にするは物語の主人公。
人間の脳みそは悲しい事に、酷く悲しい思い出だけはしっかり覚えているものだ。
誰が言ったかは知らないが、忘れらない事は忘れちゃいけない事だ。一生背負って歩け……馬鹿にしてんのか何も責任をとらん分際で、知ったふうな口を聞きやがって。
綺麗事を口にする奴は、頭が足りないのか?人を騙す詐欺師か?ひきこもって人生経験が足りないか?のどれかであろう。
この部分いらなくない?
案の定物語は進み始めた。
「天満君は外で遊んできなさい。」
血が一滴たりとも繋がっていない女から渡されたサッカーボール、よくよく考えたらとんでもないモノを手に、ガリガリに痩せた名前の主は嫌々ながらも家の外へ追い出される。
女が弱い存在を愛する理由など血のつながりだけ……それが無いモノを排除しようとして何が悪い?
理由も真実も知らない弱者はとりあえず歩き……手頃な壁を発見。
右、左と器用に一人球蹴りを飽きずに楽しんで続けれるのなら……才能と適正次第で馬鹿騒ぎをしたいだけの無能から金を巻き上げるファンタジスタになれるだろう。
無論治世の平和な地域に産まれていればの話だが!
やりたくもない一人遊びを続けられる人間はいない、やりたいと言った事ですら始まりを忘れて投げ出すのが人なのだから。
当然すぐに飽きた天満は居心地がくそ居心地悪い生家へ嫌々ながらも足を向け、歩き出し……差別の犯行現場を見てしまう。
「さあ我が子達、あんなくそカッコウの雛鳥みたいなお邪魔虫がいないうちに、たくさん食べてパパみたいな強い男になるのよ。」
「「わーい。ママ大好き。己が欲望と現世の真理を子供に注ぎ込む最も正しき存在。」」
それは愛する我が子に見せる母の顔。
無償の愛を受ける父親が同じ弟達。
空腹の自分はこの場にいてはいけないという事実と、誰も責めることを許さない純粋にして無垢なる本能。
血の繋がっていない存在を可愛がる生物等少数派にも程があろう。
この光景に文句を言っていいのは、惚れた女が別の男と子供を作っても、おおママに似て何て可愛いんだ。と真実を知って尚育てる事ができる器量がデカイ雄。
あるいは、お前が育ってろ。と旦那が連れてきた他の女に産ませたであろう子供を、ああ何てパパに似てカッコイイの。と自分の腹が空である事等気にも止めず育てる愛情深き女だけであろう……絶対に両方とも少数派だと断言してやる。
公平さのかけらも無い圧倒的な差別の体をとった絶対なる悪意。
無知故に空腹故に、僕も食べたい。と口にするのは無理もないだろう。
極限状態の食欲を、薄っぺらい意志ごときで抑えれるのなら今すぐ修業に入って、人の世から消えたほうがいい。
飢餓状態の天満が、腹違いの弟妹から本能のままに食事を奪おうとする姿は、人間としてはクズでも動物としては間違ってないだろう。
だが、我が子に手を挙げる害悪を見て切れない女に……母親になる資格など無い。
これは聖戦、誰にも文句を言わせない真実の愛が証明。
「ウチの子から離れろ!!!色欲魔のガキが!!!アンタらの!!!アバズレの血であの人の経歴は汚れたんだ!!!死んで責任をとれ!!!もういい雌豚みたいに辱めてから殺してやる!!!ウチの子より運動神経と身体能力値が優れている事が何よりも許せない!!!違う。箸を握る手すら安定しないアンタよりウチの子達は上だ!!!何だ逆らうのか!他人に優しくもできないゴミクズが。」
優しさを履き違える天満が抵抗をやめて、馬鹿正直にサンドバッグ。
現世が知らしめるありふれた光景、勘違いする馬鹿は一生他人のために生きる。
理不尽を受け入れるというもっとも愚かな行為を……我慢と馬鹿正直に変換し、美しき光景の贄となる。
「本当に、本当に馬鹿だよ。お前は暴れて暴れて……憎まれる勇気一つで世にはばかる事ができるのに、世間様は他人の邪魔しかしないよ。天満よ一生忘れず悪夢を見る覚悟も無いくせに耐えてんじゃねえよ。俺の邪魔ばっかするなお前は!!!」
毒づくアッシュの隣では、正義と愛に猛る母の本能と、他国のアバズレに出し抜かれたという女としての敗北がフラッシュバックし、この行為は夫のためだと記憶を都合よく捏造し、正当な感情を燃料に怒りを増幅させる事も無理はなかろう。
自分に罪も心当たりも無い行動に対する罰は理不尽な暴力。
女だろうが男だろうが変わりなく、自分より弱い奴を叩く時の表情は……清々しいままの破顔。
流石に思い出補正込みの捏造だろ?いやこれより酷かったな。と口にするのは物語の主人公。
現実は小説より奇なり?
リアルの毒親なんてこれより上はごまんといるであろう……まぁ大抵は自覚等無いだろうが。
イジメといい体罰といい、加害者は覚えていないのだから……脳の仕組みを考えれば、やはり人の世的に正しきは暴力を振るう方であろう。
これに文句を言う奴は、一生殴られて、利用されて、現世の踏み台となって、行動の正しさを証明してくれ。……誰も後に続かないだろうし、憧れないだろうが、良かったな末代という少数派になれたぞ。
まぁ弱い奴が悪いしな。と冷たい事を思ったところで誰も責めないであろう……何故ならアッシュ・アスモデウスが産まれた時の名前は
己の過去を変えれるなら大抵の存在が変えたい。と願うだろう。……はいソレ弱さの証明です。
真の強者は仮に後悔等あったところで、戻らない時計を見たりする馬鹿にあらず……事実過去に戻る暇があったら先の栄光をつかむために己を磨くであろう。
空閑天満の期間があってしまった以上……彼はどう取り繕ったところで弱者。
アッシュはどれだけ己を磨いたところで、真の強者になる事は叶わない。
彼が欲しいモノはもう過去にしかないのだから……
そんな残酷ながらも、真実の正しき光景を止めるのは一人の武人。
血の繋がっていない嫁と、血の繋がっている孫……どちらの味方をする等考える必要も無し。
彼は、東亜皇国の五摂家が一つ近衛の姓に仕える武人。
治世の武術家が殺していいならできる。というトンデモ技術を、生殺の領域にすら入らず容易く使うは乱世の雄。
「本当に……コレを見て心を入れ替えていれば、武の素晴らしさを理解できていれば違う人生だったんだろうな。久しぶりだねじいちゃん。」
名を変えたアッシュに対して当然祖父は反応をしない。
そもそも彼の記憶にあるアスモデウスは、息子がブチ殺した南の悪魔でしかない。
この光景は夢ではなく過去の記憶。
どうやっても変える事ができない汚点。
「絶対にじいちゃんの仇はとってやるから!孝行こそ生きがいの可愛い孫が堕ちてくるのを地獄で楽しみに待っていてくれよ。……うん?そもそもハーフの俺はどこに行くんだ?そもそもじいちゃんは死んだら無に帰る宗教観だし。……セレナ
夢だから?空想だから?幻だから?否空閑天満を名乗っていた時間までしか二人は会っていないから……男が無反応なのは当然である。
どれだけ後悔しても、祖父が誇れる孫にはもうなれない。
そんな一連の騒ぎに欠伸を一つした後、お腹空いた。と空気を読む気すら無いハーフの少女。
その馬鹿丸出しな言葉で、シンパシーを感じる特異な見た目に……飢餓状態を改善したとはいえ、未だ空腹にも関わらず天満の食事を掻き込む手は止まった。
人が生きるための食欲すらも忘れ、旧文明も治世ですらも解き明かせない一目惚れという概念に、乱世でも変わることなき不思議に天満はただ立ち尽くす。
彼は自分をラブコメや恋愛モノの主人公と勘違いしているのであろう……たかが復讐鬼の分際で、物語の舞台に天地の開きがある事すら知らないのか?見えないのか?まぁ馬鹿だからこんな人生なんだけど。
君が転生や二度目の人生……天満と同じ生き方は拒絶するであろう?それが答え也。
そんな客観視等、世間体等どうでもいい、アッシュは思い出の人に笑う。
年齢通りに成長できなかった彼の姿は、こじらせたキショイロリコンにしか見えない。
「
いや、成長……では無く年食ったかいあって逆恨みする気力くらいはある様だ。
初恋の思い出すら、青い目の少女との出会いですら美しい思い出で無いことを、産まれつきの強者でない復讐鬼は……深く嘆き、覆せない過去に対して誰も認識できない咆哮を上げ覚醒。
あぁ、ここは現在か?現実か?とりあえず地獄から煉獄に戻って来た事を復讐モノの主人公は認識。
それは一週間前とは違う知り尽くした天井。
寝にくいベッドと、叔母からの結婚しろ、結婚しろ。結婚しろ!という圧力に耐えきった七日日間。
そんな、アップデート前の価値観乱世仕草丸出しのベルフェゴール邸では絶対に見られない光景。
あぁ、やはり畳の上に布団が一番。と口にし跳ね起きるはアッシュ。
東亜皇国では道場と呼べる程の広い場所。
下の連中を実力の世界特有たる教育方法……早い話が殴って躾けるを実践したおかげで、そこにはホコリ1つ無い清潔な場所
そんな就寝に向かないであろうイカれた環境で、何の進歩もならないであろうマヤカシに頼り
就寝をするところが彼を生粋のイビルディア人で無い上、強者たらしめない証明。
馬鹿は永遠に時を浪費する。
どこまでも自分本位に生きることがだけが人生だというのに……
歯を磨き、顔を洗い、トレーニングウェアに着替え軽く演舞。
毎日激しいトレーニングをすべき、等と考え口にするのは長期的な努力をした事が無い証明。
本番前に負荷をかける馬鹿などどこにもいない。
オフの日に己が体の動作確認プラス稼働限界を確かめるのは、乱世では褒められるべき美徳。
その行為に何の意味がある?と口にした人間の前歯をいくつも折ってきた存在は、ただ己が心中に問いただす。
成すべき事は何か?とそれは彼の人生を支える柱、どれだけ零しても、零しても最後まで残った我欲の中心。
幼き自分……空閑天満の口からは、復讐。という満点の解答が返ってきた事に気を良くした少年は柔軟運動へとはいる。
体が硬いというのは、相手の組技や絞め技に対する弱点となるだけでなく。
意外かもしれないが打撃の威力にも直結している。
事実ほんの少し可動域が広がるだけで、己が所有する攻撃力を増やせるのだからやらない手は無い。
演舞や型に並ぶ、出立前のアッシュがするにはもってこいな事である。
無駄な体力を使ったやつから……否弱き劣等な順に死ぬのが、戦場……それすなわち厳選の場。
(本当にできるの?もともと僕は弱いのに、ねぇ答えてよ。強くなれるんだったらどうしてあの時……黙れって何だよ。名前を変えた存在が正しいの?ねぇ答えてよ。)
問題はやっている事は単純であるため雑念が生じてしまう。
役にたたず、前進の邪魔になるだけの記憶と過去。
治世の弱者や負け犬は、消せるならいくらでも大金を払う。と言って新たなる搾取を受け入れる。
どこまでも、どこまでも、人の業はまばゆく輝き……次の上位層たる者を高みへ導く。
事実小さい頃の自分を脳内で何度も殴り、黙らせるのに手間取り、こんな馬鹿な事に集中力と時間を無駄にするのかと嘆息。
頑張って筋肉や技術をつけようと……心の弱さは隠せないんだな。と己の先天的な難点に目をつぶり彼は、頭を掻きむしった。
野生の嗅覚を持たない男の人生は、暗闇の中で常に一人。
生物としての本懐を遂げれないモノが、すがるのは復讐。
──明日アッシュ・アスモデウスはイビルディア帝国をたつ。
即ち、彼の名とリザルトが歴史に刻まれしガザール戦役が始まる。
その途中、記録から己の名が消える事等乱世を生きた彼には知る由もないであろう──
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