両親に恵まれなかったアッシュの幸運
馬鹿みたいに広い風呂で、バタ足を飽きるまで楽しんだ事もあり、湯気をまとうは主人公。
ぶっちゃけ一人で風呂に入ったところで、嫌な思い出がフラッシュバックするだけ。
身を清めたアッシュは、己を呼び出した存在に会うためここにいる。
「やっぱ金持ちって違うな。まぁ俺に文官の才能は無いし、頭脳労働なんて初陣でびびった腰抜けか、ヒョガリのチビがする事だしね。」
自分の屋敷と比べるのもおこがまえしい場所を歩くは物語の主人公。
まぁ、世界一の金持ちが住む場所と、アッシュが産まれるキッカケ……すなわち連合軍との激戦区だった悲劇の地を比べるのがおこがましいと言う物。
田舎の広い土地より、都会の狭い土地が取り合いになる事など、農業従事者や工場建設予定者でない限りは不動産に興味なくても分かるだろう。
まぁさんざん言ったが、この馬鹿でかい屋敷が有るのはイビルディア帝国首都パンデモニウムの一等地。
都会の広い土地という最上の選択をとれるのは勝組の証明。
人の世でしか活かせない金と物を動かすという才能。
人の身以外では淘汰されていたであろう先天的な障害のある肉体。
それらが生み出した莫大な結果を享受するは、一途に童貞を貫く老人……広大な屋敷の持ち主が姓はベルフェゴール、就いている役職は相国、冠する二つ名は支配者……後世では差別化のため足無しと呼ばれる事が多い。
そんな傑物の住処には、最近失踪した作者の絵画数点と最近死んだ作者の芸術品達が並び、何かを察したアッシュの前を、堂々と魔力に満ち溢れた案内人?が歩く。
まぁ部屋が多すぎるのと、アッシュを呼び出した存在が気まぐれすぎる故、先導は必要である。
これらの持ち主は収集癖がある?それは否。
では、欲の塊か?それは正。
「これらは買値より売値が十中八九上回るであろう最高の商品。ワシは真作か贋作か等どうでもいい利益さえあればな。何なら偽物を売りさばいても面白いかもな。果たしてどれだけの自称目利きが本物であろうか……さて東の名等呼びたく無いのでな。ワシの義娘が見出した奇貨どっちに転ぶか?手段も方法も問わないとにかく結果を示しなさい。それだけでお主の視界は明るくなるぞ。……あと気持ちは分かるが童貞は早く捨てたほうがいい。ワシは最高のオンナを知っているから、カノジョには未来どころか来世の全てまでくれてやる予定だ。」
同年代にボコボコにされ続けた幼きアッシュ即ち生粋の負け犬が、東亜皇国からイビルディア帝国に移った際、車椅子の老人……文武の違いはあれど己の理想たる先人から送られた言葉。
それが彼の心中を知らしめている。
雄は強くなければ、男は優れていなければ価値が無い。という純然にして単純な現世の真理。
美しい誠が真実の渦を作り出し、ナニかを飲み込んだ。
また一人、少年が知る。
先の思考が拭き飛ぶ程に俗物的なモノがある。
すなわち、アッシュの前には、馬鹿だろ。と言いたくなる程の無駄な金を掛けたとしか思えない装飾品だらけのドア。
そこで案内人?が白服の混血児に頭を下げると同時に、役目を終えたため折り紙へと変貌。
瞬間術式を形成していた魔力は霧散し、ドアを開ける力へと変貌し、少年の目に叔母と血の繋がりが無い叔父の姿と……死んだ目でやりたくも無い職務に励むメイド達がうつる。
イビルディア帝国で、低俗な人間ごときに服装の自由は許されない。
まぁそもそも乱世事態が、服は同じ物を大量生産したほうが早いし安いしと言わんばかりの時代。
そんな悪しき風習が支配する時代と世界に真っ向からツバをはきかけるは女……と神じゃ無くなったからこの表現でいいだろう。
「今似合ってないな……と思ったであろう?オイ!共働きをせざる得ない程の低年収夫しか選べなかった……フン負け犬にしか選ばれなかった雌豚ごときが、大将の妻で相国の義娘たる
己が生国たる東亜の装いに身を包み……世間体に喧嘩をふっかけ、この場にいる同性全てを徹底的に見下しつつマウント行為が大好きな叔母に対して、アッシュは苦笑い。
この行為だけで彼女の立場が、そんじゃそこらの連中より遥かに格上である事を証明する。
無論、それは財力や暴力という女が自身の力で身につけたモノにあらず……すなわち養父や夫という外付け要因である事を言うまでもない。
「あらアッシュ?想定より遅かったけど、まぁ貴方の性格的に叔母である
「オレの妻から時間を奪おうとした不届き者がいるのか?まぁ、ソイツは後で殴るとして……えっ殺すの?可哀想じゃん。まぁそれはおいといて腹は空かせているだろ?虫みたいな腹筋しているんだから全部食えよ。」
愛する女の胸を揉もうとした利き手を……あっさりと払われる巨漢を一言で表すなら筋肉ダルマ。
これでもかと時代考証が行き届いた事をしっかりと口にした。
ぶってえー腕と、分厚い胸板が見せ筋ならば、婿養子の分際でこんな堂々と雄々しく振る舞える訳がない。
何を食って、どんな鍛え方をすればこの身を作れるんだ?と誰もが思う恵体にして、戦士として完成する事の無い脂肪を忌避する呪縛。
燃費が最悪な身体を維持するためには膨大なエネルギーが必要であり、当然それは食事で賄われる。
シックスパック丸出しの叔父上がそれを言うのか?と心の中で毒づきながらも、目の前で飯を食らう巨漢の半分も無いであろう膨大な量に戦いを挑む。
無論、そんな事をすれば演者の体型が崩れるので、スタッフが出てくる。
食事とはある一定の基準を超えれば拷問である。
どんなにその行為を愛していても……上限を超えれば逃げたくなるのが人間。
事実、俺の夢だ!とかほざいて途中で投げ出した……もはや長所レベルに諦めがいい人間等星の数程君は見ているはず!何なら君がそうであろう?
ムキになると言う事は真実である。
旧文明でいう千年に一人の美少女が、ブス。と言われても怒ったかんなで笑ってすますだろ。
それが真実の証明。
両の手を可能な限り動かし、口にいれ続けたアッシュの視線は上向きし、嘆息。
それは、栄養を体に入れる。という戦士の素質が人並みである事実を表す行動。
「あらあら、マークと比べて二十五パーセントくらいは食べたんじゃないかしら?本当に殿方の成長は目を見張るものがあるわ。三日あわざれば刮目して見よ。とは良く言ったものね。」
規格外の将官たる夫と優秀程度の佐官たる甥を比較する女はなかなかの鬼畜であろう。
こんだけ食ってすぐ寝たら腹回りに脂肪をつけれるな。と思う。
が!アッシュは当然そんな人生上手くいかない事を知っている。
「さてここからが本題、見合いの話があるんだけど!!!」
叔母が指を鳴らすと同時に、数多の書類と肖像画がテーブルの上へ魔力と術式によって着地。
いいな〜モテて。と一ミリたりとも思っていないであろう、強姦する程に好きな女を妻にした叔父。
暇さえあれば恩着せがましく飯を食わせ、満腹状態で普通の思考状態からズラし、己の理想を叶えようとしている……悪意の集合体たる叔母の性格を知っているため、アッシュは無視。
イライラが許容範囲を超えたらこの場で殴ろう。と血の繋がらない甥に対して考えたのか、左手にもつフォークをくるくる回しパスタを口に運ぶは、ワガママを強さで押し通し続けたマーク。
「ここからはベルフェゴールとアスモデウスの家名に泥を塗らないためにも大事な話だから……」
ムラムラが許容範囲を超えたらこの場で犯そうかな。と最愛の妻に対して考えたのか両耳に情報が入らないのは筋肉ダルマ。
巨漢の血流が脳よりも下半身を優先し始める。
あっ、これさっさと話をつけないとマズイ。とあっ、これ時間切れまで粘れば勝ちだな。と双方に対して圧倒的な暴と武を持つ怪物から条件が提示された。
「さて、唯一にして絶対たる存在であるべき兄が大ポカをさらしたせいで神の価値はストップ安。こんな状態でも若手のスーパーホープたる貴方には、喜ばしい事にイビルディア帝国が誇る名家から結婚と婿養子の話が……」
あっ、嫌です。と取り付く暇も無い解答がアッシュの口から叔母の耳へ。
「そうよね。これは今までと変わらないから別にいいや。でも何と今回はグレテン王国が姫を出してくれるみたいで、一応肖像画を見てみなさい結構、わりと、まあまあ美人だから……これは絶対にインチキよね。遺伝子イジるのは許せないよね。化粧という武器に頼るのですら犯罪なのにね。……女の本音は置いといて、さぁ早く返答は?」
もっと無理です。と短くイライラさせる解答が女の耳へ甥の口から届けられる。
「あのねぇ。まさかとは思うけど、一応聞いてあげるけど将官服はどうするの?十中八九死なずに手柄上げたら確定よ。母に作ってもらうことすら恥なのに?まさか叔母に作らすの?それとも死にかけで顔が崩れている久遠とかいう、股が緩くて頭が足りない小娘にやらせるの?あんなゴミクズ女のどこがいいのか分からない?さっさと記憶から消して新しい恋を始めなさい!ねぇ元女神は間違っている?家に見捨てられた馬鹿女に貢ぐくらいなら自分か部下に投資しなさい!何、早くほら答えなさいよ?いい年になって金の管理もできないし!ほら正しいのはどっち?さぁ早くしっかりと納得できる返答を!」
優しさを持って莫大な利を提供しているにも関わらず、首をま横に振る聞き分けの無いアッシュに叔母はヒステリック。
正論と真実でひたすら叩く。という本当の愛。
それに耐えられず、克己する事ができないからアッシュはゴミで下らなき、劣等で負け犬な人生を歩むのだ。
「あぁもう無理我慢できない!オレの夢は息子と戦場に出る事!甥っ子と戦場に出て確信した!童貞のアッシュは早く部屋から出ろ!お前にとっての従兄弟か従姉妹を授かる瞬間見せる気は無い!何オレを欲情させるために東亜皇国の服を着ていたんだろ?……プレイの邪魔だから破くか!」
そして、性欲の臨界点を突破した怪物がくだらない話を終わらせる。
邪魔な雄に対して振るわれる攻撃は、完璧なタイミングとあて感でイナされた。
まぁ、これ幸いとアッシュは後ろに飛び、部屋からさようなら!
この世は暴力を軸に回る。
そんな真理に魅入られた少年の先は呪縛からの解放。
否、死ぬまで続く修羅の道であろう。
──乱世の風習たるは将官服。
どう考えても動きにくいだろ。と後世の人間は皆が思うが、本人達が気合が入る。だの妻の愛を感じて強くなれる。といったプラシーボ効果を日記に刻んでいる。──
ただ白いオタマジャクシを撒き散らすだけで済む雄は、自分の被害が一切ないせいか……とにかく配偶者に己を血をひいた子を強く望む。
それが一年近くもう一つの命を腹に宿し、産み出す際に死を覚悟する恐怖と戦う異性……の苦しみ等全く理解できない故。
二人の始まりが強姦とか信じられないよな。と思わせる程に愛しあっている様を演じる叔母が、何も考えず獣欲に従う強さ以外自慢できるモノが無い叔父に力づくで押し倒され……早い話が目の前で、食卓でおっぱじめた事もあり、邪魔をしないためにも用意された部屋で、ベッドは嫌いなんだよ。何で分かってくれないんだ?と口にした後、横になるのはアッシュ。
武術家が死ぬ時以外横になるな。等といったマヌケや意識高い系の口車は耳に入れる必要なし。
そんな馬鹿げた行為で疲れがとれなければ、トレーニングにや実戦に影響が出る事など素人でも分かる。
事実少年の心を満たすは、叔父の一撃を完ぺきにいなしたという自信。
ガザール戦役での醜態を考えれば、あんなの軽い戯れでしかない。と正常な認識ができないのは恥ずべき過信。
さっさと寝るか。と一人言を呟いた後、アッシュは筋肉をつけた身体に脂肪をのせるため睡眠。
夢だけは地獄の様な乱世から解放される方法。
そんなヌルい事が許されるのは……何のトラウマも無い恵まれた人生を歩んでいる存在だろう。
残念ながらそんなヌルい生涯を歩んでいる人間は復讐鬼に等ならない。
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