48.生まれ変わり

日本武尊命ヤマトタケルノミコトさま眷属けんぞくとなったわれは、陽菜ひな一族いちぞくともにここ獣護山ししもりやままもつづけてきた。しかし、ついに邪神じゃしん天迦久神アメノカク復活ふっかつ。つまりは、ミコトさまもまたここへあらわれ、われともたたかってくださるということわれは、山中さんちゅうまわりミコトさまさがした。しかし、姿すがたどころかかんじることすらできなかった。あること、このまちへやって童子わらしイヌうわさみみにした。われは、風神雷神ふうじんらいじん使つかい、どんな人間にんげんさぐった。そして翌日よくじつわれ神社じんじゃ石段いしだんにミコトさまかんじた。そこには童子わらしよこたわっていた。ひど大怪我おおけがい、もはやむしいきだった。しかし、童子わらしのカラダをあおほのおおおうと、みるみるうちに怪我けがなおった。われ確信かくしんした。この童子わらし……いや、この人間かたこそミコトさまだということを……〗

 オオカミたちのユートピアは、しずまりかえった。みんな絶句ぜっくしていたのだ。ボクは、その沈黙ちんもくやぶる。

「ちょっとってよ、大神様おおかみさま。ボクは八木大翔やぎハルト普通ふつう小学五年生しょうがくごねんせい……人間にんげんだよ!」

〖ミコトさま犬族イヌぞく言葉ことばかる……それがなによりの証拠しょうこでございます〗

 大神様おおかみさまは、ボクにかってこうべれた。

たしかに、ハルトさんはあおひかってオイラたちをアメノカクからまもってくれた!ね、ハサウェイ!』

『え、ああ、まあな……』

 ハサウェイは、クロードのいかけにこころここにらずの返事へんじをした。

「もちろん、ハルトくんはハルトくんよ!でも、ハルトくんのなかにミコトさま記憶きおくちからねむっているの」

おれたちは納得なっとくだ!なあ、レフト』『そうだな、ハルトさんはイヌける不思議ふしぎちからっているとかんじていた』

間違まちがいねぇ、おれもそうかんじた。なぁ、フォンダよ』『そうね、ラングレン』

『オイラだっておなじさ!ハルトさんはやさしいだけしゃない。なに不思議ふしぎあたたかさをかんじてたよ』

 みんなが、ボクにたいして不思議ふしぎなにかをかんじていた。もちろん、自分自身じぶんじしんではからない。

「なぁハサウェイ、おまえはボクとずーっと一緒いっしょにいるけど、なにかんじていたのかい?」

『……すまねぇ、オレさまはなにかんじてねぇよ。ハルトは、ただの人間にんげんさ』

「そっか……」

 ハサウェイは、ボクとわせようとしなかった。

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