⑩小林陽菜ちゃん

八木やぎ大翔君ハルトくん……だよね?」

「あ、はい。そうですけど……」

 「ワタシのこと、おぼえてない?」

 大翔ボクは、あたまなかしをけまくった。

 「あ!もしかして小林陽菜こばやしひなちゃん?」

「そう!陽菜ひなだよ!おぼえててくれたんだ!」

 彼女かのじょは、満面まんめんみをかべた。

 彼女かのじょは、おさななじみだ。ひとつ年上としうえの12さい幼稚園ようちえんときに、よくあそんでいた。まさか、こんなに可愛かわい女子じょしになっているとは……

 「このまちもどってたの?」「いや、ちがうんだ。夏休なつやすみだから祖母そぼいえに……」

 「そうだったんだ。あっ!ワンちゃん可愛かわいい!お名前なまえは?」

 「ハサウェイっていうんだ」『ワンッ』

 ハサウェイは、あたまでられて、まんざらでもないかおをしていた。

「この首飾くびかざり、もしかして勾玉まがたま?」

「そう!陽菜ひなちゃんくわしいんだね?」


勾玉まがたま

『C』にかたちがりだまむかしひと装飾品そうしょくひん。また、祭壇さいだんかざるモノともかんがえられているんだ!


「さわってもいい?」『ワンッ』

 陽菜ひなちゃんは、勾玉まがたまのひらですくうようにせた。

「エメラルドグリーン!素敵すてき!」

 そのとき不思議ふしぎことこった。

 勾玉まがたまは、ちいさなひかりをおびて、ふわりとちゅうかんだ。しばらくすると、ひかり陽菜ひなちゃんののひらにポトリとちた。ボクたちは、おもわずかお見合みあわせた。

一体いったいなんだったのだろう?」「不思議ふしぎだけど、こわいとかはなかったね」

 じつは、ボクはこの勾玉まがたまひかるのをたのははじめてではなかった。けれど、いまはそんなことより陽菜ひなちゃんと再会さいかいできたよろこびにひたっていた。

陽菜ひなちゃんもイヌってるの?」「えっと、ってはいないんだけど……」

 クンクンッ……ってない?しかし、じょうちゃんからかすかにイヌにおいが……

「どうしたハサウェイ?眉間みけんにしわをせて?」『いや、なんでもねぇ』

 「ねぇ、ハルトくん。ここにいるあいだあそばない?」「うん!もちろん!」

うれしい!本当ほんとうは、スタ○にってみたいんだけど、ほら……このまちにないからさ」

 陽菜ひなちゃんは、かみゆびでクルクルしながら、苦笑にがわいをかべた。

「ボクがんでいるまちにはたくさんあるから、今度こんど遊びあそびにおいでよ!一緒いっしょこう」

「えっ!」陽菜ひなちゃんは、ほおめてうつむいた。

 ……え、ちょっ!もしかしてボク、キモいことった?それとも、なんかおこらせちゃったかんじ?

「あのぉ、べついやだったらにし……」

「うぅん!ちがうの!そうじゃなくて……その、それってデー……おさそ……あ、いや、えっとね、ワタシ、事情じじょうがあって、このまちかられないんだ」

「イヤイヤ、全然ぜんぜんOKオッケーだよ!このまちあそぼう!」

 ボクは、陽菜ひなちゃんと連絡先れんらくさき交換こうかんした。

 そして、きっと心配しんぱいしているだろうおばあちゃんいそいでかえった。

 



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