ハサウェイとボク～白狼神話～

39.ハルトの抵抗

　ハサウェイは得意（とくい）のジャンプ！

　邪神（じゃしん） 天迦久神（アメノカク）の頭上（ずじょう）へ！

　前転（ぜんてん）して勢（いきお）いを加速（かそく）！！

　アメノカクの鼻（はな）ヅラに噛（か）み付（つ）いた！！

　しかし、ハサウェイの牙（キバ）は喰（く）い込（こ）まない！

　アメノカクは、頭（あたま）をブンッと振（ふ）り回（まわ）し、ハサウェイを吹（ふ）き飛（と）ばした！

　しかし！ハサウェイは、反転（はんてん）して木（き）を蹴（け）る！

　もう一度（いちど）アメノカクに噛（か）み付（つ）いた！

〖ほほぅ、中々（なかなか）やるな。褒（ほ）めてつかわす〗

　鼻（はな）ズラに噛（か）み付（つ）くハサウェイを、真（ま）っ赤（か）な目（め）がギョロリと覗（のぞ）く。

『クッソッ！このバケモノめ！』

　アメノカクは、今度（こんど）は頭（あたま）を縦（たて）に振（ふ）った！

　ハサウェイは、地面（じめん）に強（つよ）く叩（たた）きつけられた！

『グハァ！！』「ハサウェイ！！」

　その頃（ころ）、フォンダとクロードは……

『クロード、アンタの鼻（はな）で水（みず）の匂（にお）いを嗅（か）ぎつけて！』『OK（オッケー）！任（まか）せて！』

　クンクンッ……クンクンッ……

『フォンダ、あっちだ！近（ちか）いぞ、ここから50メートルほど先（さき）に川（かわ）があるはずだよ！』

『さすがはクロード！よし！みんなを呼（よ）びに戻（もど）るよ！』『おう！』

　大翔（ボク）は、足（あし）が震（ふる）えて動（うご）けずにいた。みんなが勇敢（ゆうかん）に戦（たたか）っているのに、なんて情（なさ）けないんだ。ハサウェイに、足手（あしで）まといと言（い）われても仕方（しかた）がない。ボクは……弱虫（よわむし）だ。

『ハ、ハルト！に、逃げろ……』

　ボロボロになったハサウェイが、ボクに逃（に）げろと言（い）った。助（たす）けて……じゃないんだ？やっぱ、役（やく）に立（た）たないから？

「クソぅ、ハサウェイ！兄（にい）ちゃんに向（む）かって生意気（なまいき）だぞ！今（いま）助（たす）けてやるっ！！」

　ボクは、足元（あしもと）にあった石（いし）を拾（ひろ）い、邪神（じゃしん）アメノカクに向（む）かって投（な）げた！

　ボクの投（な）げた石（いし）は、ヤツの前脚（まえあし）に当（あ）たった……が、壁（かべ）にでも当（あ）たったかのように跳（は）ね返（かえ）り、むなしく転（ころ）がった。

　でも、諦（あきら）めない！

「チクショウ！チクショウ！」

　ボクは、手当（てあ）たり次第（しだい）石（いし）を投（な）げつけた。でも、結果（けっか）は同（おな）じ……アメノカクにしてみれば、豆粒（まめつぶ）が当（あ）たったようなものだろう。

「クソゥ、チクショウ……」

　ボクは、泣（な）き崩（くず）れた。

『ハルトさぁん！ハサウェイ！』

　そこへ、クロードとフォンダが戻（もど）ってきた。ボロボロにやられたみんなを見（み）て驚愕（きょうがく）している。

〖ミコトよ、失望（しつぼう）したぞ。まぁいい、今（いま）ここで消（き）え去（さ）るがよい！〗

　アメノカクはズイッと頭（あたま）を下（さ）げると、その屈強（くっきょう）なツノで地面（じめん）ごとボクを突（つ）き上（あ）げた。

　ボコッ！！！

　ボクは、土（つち）にまみれながら宙（ちゅう）を浮（う）いている。なぜかスローモーションに感（かん）じた。

　ハサウェイ、ごめん。ボクは兄（にい）ちゃんなのに、守（まも）ってあげることができなかった。

『ハルトォォォオ！！』