31.ニホンオオカミは生きていた!

 そのころ大翔ボク留守番るすばんをしていた。おばあちゃんは、老人会ろうじんかいとかいうのでかけてったのだ。

「ハサウェイのヤツ、おそいなぁ。はやめにかえるようにったのに……まさか、なにかあったのかなぁ?」

 縁側えんがわで、麦茶むぎちゃみながらハサウェイのかえりをっていると、にわさくそとイヌらしきかげえた。

「ハサウェイ?おそかったじゃないか、なにかあったのかい?」

 ボクは、にわ小走こばしりでかけ、入口いりぐちまでった。しかし、そこにいたのはハサウェイではなかった。

「キミはだれ?ハサウェイの友達ともだちかい?」

 くらがりからあらわれたのは、1とうのイヌ動物どうぶつ。ボクは、ひとてすぐにかった。

「ニ、ニホン……オオカ……ミ!?」

 するつき。おデコから鼻先はなさきにかけて段差だんさがなくフラット。ピンとったみみ背中せなかひろがる黒毛くろげ、イヌよりも筋肉きんにく発達はったつしている。間違まちがいない、れんくんのったとおりだ。

 ニホンオオカミはきていた!

 ボクは、ゆっくりと1うしろにがった。


『ほぅ、よくかったな。さすがとうべきか……』

 そのニホンオオカミは、すこおどいた様子ようすだがまるですきがない。

「ボクになによう?」ボクは、緊張きんちょうくちなかがカラカラにかわいていた。

『こんなガキが、ねぇ。間違まちがいじゃないよな?』

 オオカミは、ボクのことしたからなめめるようにた。

 ミ……コト?一体いったいだれことだ?

「ボクの名前なまえはハルト。ミコトなんて名前なまえじゃないよ」

『クククッ、自覚しがくがないようだな。まぁ、どうでもいい。オレはおまえ始末しまつするだけだ』

 オオカミは、体制たいせいひくくして、そのするどキバいた!

 し、始末しまつだって?!

「ど、どうして?意味いみからない……人違ひとちがいでは?」

『クククッ、人違ひとちがいではない。だっておまえは、イヌオオカミこのオレ言葉ことばかるじゃないか。さぁ、覚悟かくごしろっ!ガルルッ』

 オオカミは、おおきなくちひらきボクにびかかってきた!

「うわぁぁあ!」

 こわくて、そのしりもちをつくと、うまい具合ぐあいにオオカミの攻撃こうげきをよけた。

『チッ、この臆病者おくびょうものめ!ミコトのくせに』

 オオカミは、ボクのうえり、ふと両脚りょうあしでボクをさえつけた!

 こわい、ているようで、全然ぜんぜんイヌとはちがう。あまりの恐怖きょうふに、ボクの目尻めじりからなみだながれた。

呆気あっけなかったな。そのほそくびってやる!』「うわぁぁあ!ハサウェイ、たすけて!」

 ボクは、をギュッとつぶった。

『ガルルルルッ!……クッ?!』

「え……?」オオカミはボクからはなれた。

 そしてだれかに威嚇いかくしている。

 をゆっくりとけると、ふたつの青白あおじろほのおえた。

「あっ!キミたちは……風神ふうじん雷神らいじん!!」

 






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