30.卑怯

『ケケケッ、油断ゆだんしたな。おまえにやられてボロボロだが、この可愛かわいむすめちゃんをくだことくらいはできるぞ?』

 ブシェーミは、またほくそんだ。

『ラングレン!アタシのことはいいから、げて!』

なにうか!おい、フォンダをはなしてくれ、たのむ!』

『ケケケッ、じゃあおしえろよ。人間にんげんどもと、そのイヌはどこだ?むすめちゃんをたすけるか、それとも仲間なかまるか?』

『こ、この野郎ヤロウ……』

 ブシェーミの卑怯ひきょうなやりくちに、ラングレンはキバきしませた。

『さぁ、え!ふたりはど……グアァッ!!』

 ブシェーミは、前方ぜんぽうんだ!背後はいごからつよ衝撃しょうげきけたのだ。

『よう!オレさまをんだか?』

『ハサウェイ!!』


『おい、てめぇ!うしろからばすとは卑怯ひきょうだぞ!』

『あ?雌犬おんなのこくヤツがえてんじゃねぇよ!てか、だれだよおまえは?』

『ハサウェイ!!どうしてここに?』

 フォンダは、まるくしておどろいた。

『どうしてって。ほら、オレさまの友達ともだちはながきくからな』

『おーい、ハサウェイ!いてくなよぉ』

 ハサウェイのうしろをいかけ、クロードがやってた。

『なるほど、さすがはクロード!』

 ラングレンは、ちいさく微笑ほほえんだ。

『おいおい、まさかおまえ獣護山ししもりやまイヌか?!』

『ああそうだよ!オレさまはイングリッシュ・セターのハサウェイだ。なんでオレさまをさがしている?』

『ケケケッ、このくろブチが……まさかねぇ。なにかの間違まちがいじゃ?』

 ソイツは、オレさまをはなわらった。っていること意味いみからねぇ。

『ワケがからねぇよ。一体いったいなんはなしだ?説明せつめいしねぇと、そのったないケツにくぞ!』

『ハサウェイ!あまり挑発ちょうはつしちゃダメ!コイツ、ラングレンの岩石落がんせきおととしをらったのにまだうごけてるのよ!』

 フォンダは、おびえたかおでソイツをると、ふるえるカラダをせてきた。

『わぁったよ。で、おまえ、なぜオレさまのことっている?どうしてねらう?』

『そうか、くろブチくんはなにらないのか。そうだ、ひとつだけおしえてやろう。ねらっているのはおまえじゃない。おまえ大事だいじなご主人様ごしゅじんさまだ。ケケケッ』

『なっ、なんだと!!』『今頃いまごろ、ワイの兄弟きょうだいってるかもなぁ。ケケケッ』

 オレさまは、はげしく動揺どうようした。そして、そのすきをつかれた。

 それは、ほんの一瞬いっしゅん出来事できごとだった。

 スッ……ドンッ

 オレさまは、ソイツにあしっかけられころばされた。ソイツは、かぜのごとくはしってげてった。

 げられたことはどうでもいい!いそいでハルトのもとかえらなければ!

 オレさまは、つよ不安ふあんいだきながら全力ぜんりょくはしした。

〘ハルト……無事ぶじでいてくれよ!〙


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る