⑳3年前

 じつは、ハサウェイとボクは3年前ねんまえ、ここ獣護山ししもりやま出会であった。9さいだったボクは、とうさんのふたりで登山とざんをしていた。

 やま中腹ちゅうふくあたりまでくと、きりくなりさむさがした。

とうさん、さむいね……」

「ああ、だいぶえてきたね」

 とうさんは、リュックサックから水筒すいとうし、ボクにあたたかいもの手渡てわたしてくれた。

 いまうごくのは危険きけんなので、きりれるまで休憩きゅうけいすることにした。ボクは、大きな切り株きりかぶうえすわりひといきついた。

 ふとあたりをまわすと、しろいモヤがなんともえない不気味ぶきみさを演出えんしゅつしていた。ボクは、とうさんのうでせた。

「ねぇ、とうさん。このやまけものはいないの?オオカミたらどうしよう?ボクこわいよ」

やま動物どうぶつたちの住処すみかだからね。色々いろいろ動物どうぶつんでいるさ。でも、オオカミ日本にほんにいないんだ。正確せいかくうと、むかしはニホンオオカミというオオカミがいたのだけど、絶滅ぜつめつしてしまったんだ」

絶滅ぜつめつ?……どうして?かずすくなかったの?」

「いや、たくさんいたよ。でも、ぎゃくにたくさんいたので、人間にんげん絶滅ぜつめつさせられたんだ」

 「人間にんげんに?どうして人間にんげん動物どうぶつを……?」

やま動物どうぶつたちの住処すみかと教えたよね?だけど、人間にんげんすこしずつやまうばっていったんだ。すると、エサれなくなったオオカミたちは、やまりてむら家畜かちくおそうしかなくなったんだ。しかし、家畜かちくおそわれた人間にんげんたちは、当然とうぜんかれらを駆除くじょする。そうして、すこしずつかずらし、やがて絶滅ぜつめつしたんだ。人間にんげんたちも、まさか絶滅ぜつめつするとはおもっていなかっただろうけどね……」


 ボクには理解りかいできなかった。どうして人間にんげんは、動物どうぶつたちと仲良なかよきられないのだろう?

 ボクらの地球ちきゅうは、人間にんげんだけのモノではないのに……。


 だいぶきりれてきた。ボクは、けものがいないかあたりをキョロキョロと警戒けいかいしていた。

 そのとき……


 カサカサッ


 草場くさばかげからなにかがうごおとこえた。

 ボクは、おもわずとうさんの背後はいごかくれた。



 

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