⑦ニホンオオカミ

 「ところでハルトくん、獣護山ししもりやまってますか?」

 れんくんは、あのデッカイやま視線しせんおくった。

 その山頂さんちょうくもけ、真夏まなつなのにしろゆきもっている。

 とにかくスケールがデカくて、ているだけで雄大ゆうだい自然しぜんかんじることができる。その反面はんめん……時折ときおり、なに得体えたいれない恐怖きょうふおぼえる。じつは、このやまにはボクの大切たいせつおもがある。

「うん、ってるよ。ちいさいときとうさんとのぼったことがあるんだ」

「そうですか。あのぉ……この写真しゃしんてもらえますか?」

 れんくんは、そうってウエストポーチから1まい写真しゃしんした。

 そこにうつっていたのは、しげあいだにいる、1ぴきイヌだった。

「これはなんイヌ?」

じつは、これ……なんです」

「えっ?ニ、ニホンオオカミ?!」『!?』

 ハサウェイとボクは、おど視線しせんわせた。

 写真しゃしん動物どうぶつが、ニホンオオカミ!?

 大翔ボクは、れんくん言葉ことばみみうたがった。

 ハサウェイも興味深きょうみぶか写真しゃしんのぞむ。

「ニホンオオカミって、たし明治時代めいじじだい絶滅ぜつめつしたんじゃ?」



 明治めいじ37ねん

 日本各地にほんかくちで、けものによる家畜かちく被害ひがい伝染病でんせんびょう蔓延まんえんしていた。とあるけん山間部さんかんぶでは、いくつもの銃声じゅうせいひびわたっていた。

 タンッ!タンッ!

「そっちへげたぞ!」

かった!まわんでめる!」

 タンッ!タンッ!

『ギャウッ!』

 数匹すうひきけものれは、村人むらびとたちによって駆除くじょされた。

 そのけものは……

【ニホンオオカミ】

 体長たいちょうは100cmセンチほどで、中型犬ちゅうがたけんくらいのおおきさだが、筋肉きんにく発達はったつ脚力きゃくりょくつよく、長時間ちょうじかんはしることができる。キバは、イヌよりもおおきく、つよあごちから獲物えものらえることができるんだ!


「コイツらのせいでむらはめちゃくちゃだ」

「ウチは、うまをやられた」

「オラは、にわとりを20ほどわれた」

 人間にんげんたちの開拓かいたくにより、やまわれたニホンオオカミたちは、いのしし鹿しかなどのエサることができなくなっていた。

 そのため、ふもとむらまでり、家畜かちくおそっていたのだ。こうして、人間にんげんたちに乱獲らんかくにより、ニホンオオカミは1905ねん(明治めいじ38ねん)1がつ最後さいご姿すがたした。



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