②夏休み

 やまでの出来事できごと前日ぜんじつ……


 「ひさしぶりだなぁ。おばあちゃん元気かなぁ?」

 ボク、八木大翔やぎハルト(11さい)は、夏休なつやすみを祖母そぼいえごすため、とうさんにくるまおくってもらっていた。

 あおったようなそらおおきな入道雲にゅうどうぐもあふれるみどり、どれも都会とかいではことのできない景色けしきだ。

 くるままどけ、新鮮しんせん空気くうきうと、自然しぜん笑顔えがおになった。

 「ハルト、もうすぐくよ」とうさんがバックミラーしに、微笑ほほえんだ。助手席じょしゅせきすわっているおとうとうれしそうだ。

 ちいさなもり視界しかいはいってきた。そのもり入口いりぐち祖母そぼいえがある。

 さくかこまれた、ひろ庭付にわつきの古民家こみんかだ。

 到着とうちゃくすると、ボクはいの一番いちばんくるまからり、さくえた。

『おい、てよ!ハルト!』

「ヘヘンッ!ボクがいーちばん!」

 「あ、おばあちゃん!」祖母そぼは、縁側えんがわ腰掛こしかけ、しわくちゃな笑顔えがおっていた。

 「ハルくん、いらっしゃい。あら、またびたね!どんどん成長せいちょうして、おばあちゃんうれしいようなさびしいような……」

 ボクには、意味いみからなかったけど、とにかくおばあちゃんは元気げんきそうだ。

 「お義母かあさん、コイツらをおねがいします。では、わたしはこれで。とも、おばあちゃんのうこといて、お手伝てつだいもするように」

 とうさんは、仕事しごとがあるためトンボがえりした。

 兄弟ボクたちは、とうさんを見送みおくるとおばあちゃんが用意よういしてくれたつめたいスイカにかぶりついた。

 『ハルト、ヤエやさしそうなばあさんだな』

 おとうとは、みずをガブガブみながら、おばあちゃんをてにした。

 「コラッ!おまえくちわるすぎだぞ!」

 『まぁ、そんなにおこるなよ。どうせ、ほか人間にんげんにはオレさまの言葉ことばかんねぇしよ』

 このくちわるおとうと名前なまえは、

 イングリッシュ・セターのオス2さい

 そう、ボクは……イヌ言葉ことばかる。イヌ会話かいわができるのだ。

 「ハサウェイくんだったかね?わたしいえは、にわひろいから沢山たくさんまわってね」

 『わんっ』ハサウェイは、うれしそうに尻尾しっぽった。


 【イングリッシュ・セター】 (猟犬りょうけん)

 とりつかまえること得意とくい体長たいちょうおよそ65センチ。毛色けいろ白地しろじくろ斑点はんてん毛質けしつはなめらかで、可愛かわいみみ。とても人懐ひとなつっこい性格せいかくだよ!


 そんな兄弟ボクたちに、これからしんじられない冒険ぼうけんけているなんて、このとき想像そうぞうもできなかった。







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