①白い獣

 『ハァッハァッ……大翔ハルトォ!どこだ?返事へんじをしてくれぇ!』

 兄弟おれさまたちは、やまさがしていた。

 その道中どうちゅうしろけものおそわれた。あにのハルトは、オレさまをかばい、がけうえからちたのだ。

 きっとかすりきずではまないだろう。

 あたりはきりしろ真夏まなつだけど気温きおんひくくい。ハルトは、今頃いまごろさむさにふるえていることだろう。一刻いっこくはやつけさなきゃ!

『ん?あれはなんだ?』

 とおくにあおほのおがポツリとえた。オレさまは、なぜか不安ふあんになり、そのほのおかいした。

『ハルト、無事ぶじでいてくれ!』

 しげ草木くさきが、カラダがきずつける。けど、いたみなどかんじるヒマもない!とにかくいそいだ。

 草木くさきをぬけると、石段いしだんあられた。

 すると、オレさまの首飾くびかざりのいしが、あおいオーラをはなかびがった。

 ふと見上みあげると、石段いしだん途中とちゅうにそのほのおがあった……いや、

 ソイツは、しろくておおきなイヌけものだった。

 デカイ!ホワイト・シェパードか?いや、ちがう。デカすぎる!そして、その足元あしもとにはサラサラのあおみがかったかみ少年しょうねんよこたわっている……間違まちがいねぇ、ハルトだ!

『ハルトォ!』

 オレさまは大声おおごえびかけた。しかし、ハルトはピクリともうごかない。

『さっきおそってきたのはおまえか?ハルトからはなれろっ!』

 オレさまのさけごえに、しろけものおびえる様子ようすもなく、またこちらを威嚇いかくするワケでもない。

 『え?』オレさまは、自分じぶんうたがった。

 ソイツは、まるでホログラムのようにけているのだ。

 『バ、バケモノ?』オレさまは、こわくなりガタガタとふるえた。だけど、ビビってちゃダメだ。ハルトをたすけなきゃ!

 『ウォォッ!』オレさまは、ソイツにかった。しかし、とど位置いちまでとき……ソイツは、ふわりとかびがり、まるでけむりのようにえた。

 ぞくりっ

 オレさまは、全身ぜんしん逆立さかだち、あせした。本当ほんとうにバケモノだったのか?

 いや、それよりも……

『ハルト!大丈夫だいじょうぶか?きろ!』

 ハルトは、まるで何事なにごともなかったようにました。

『ハルト!無事ぶじかった!』

 ハルトは、なぜがかすりきずひとつなかった。

 オレさまは、安心あんしんするとちからけ、石段いしだんうえしりもちをついた。

 アイツは一体いったい何者なにものだったのか?うわさ魔物まものなのか?

 これからさきなにかとんでもないことこる……オレさまの野生やせいかんが、そうっていた。









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