第2話
残業のため、一人オフィスで作業していた。 眠気を堪え、ひたすらにキーボードを叩き画面を睨む。
――ことっ
顔を上げると、離れのデスクに置いてある誰かのペン立てが倒れていた。
すぐに画面に目を戻し、作業に没頭する。早く家に帰って休みたい一心でキーボードを叩く。
──ごとん
音がする方を向く。向かい側のデスクに置いてあったファイルが床に落ちていた。
席を立ち、ファイルを拾いデスクに戻す。
──がたぁぁん
振り向くと、さっきまで座っていた椅子が後ろに倒れている。少しのイラつきを感じながら椅子を戻し、また作業に戻る。
――――がりいいいいい
不意に、何かを引っ掻いたような大きな音が響き驚いて手を止める。振り向くと、オフィスの棚に置かれていた観賞用の鉢植えが倒れていた。
ため息をつきながら鉢植えを元に戻し、デスクに腰掛けて画面に目をやる。
キーボードを叩きながら思った。
がりっ?
少しの不安が胸に広がるのを感じながら、作業に集中する。何も気にする必要はないだろう。早く仕事を終わらせることに力を入れるべきだ。
──びちゃあああっ
不意にバケツをひっくり返したかのような水音がオフィスに響く。
驚いてオフィスを見渡すも、何かが起きた様子はない。どこも濡れてなどいないし、何も変化はない。
しかし脳内をかき乱す不安はもう止められず、仕事などできるような状態では無かった。
パソコンを落とし荷物をまとめていると、デスクに置いてある手のひらほどの大きさをしたクマのぬいぐるみが目に入った。
首の部分がほつれ、頭が取れかかっているそのぬいぐるみを見て思う。
──さっきは無かった
何も考えないようにしながら、そのまま荷物を抱えてオフィスから出た直後
「ごっとおおおおおおおおおおおん、ごっとおおおおおおおおおおん」
背後から聞こえるそれに気が付かないふりをして、会社を後にした。
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