変態的だけどワクワクがある関係です――4

に合ったぁああああっ!!」


 遅刻ギリギリで、俺は二年一組の教室に駆け込んだ。


 勢いよくドアが開け放たれたことで、教室内のクラスメイトたちの視線がこちらに集まり――すぐに散った。


 まあ、俺は目立つような存在じゃないから当然か。


 乱れた息を整えながらそんなことを思い、自分の席に向かう。


「おはよう、火野くん」


 席に着いたところで、花咲さんが声をかけてきた。花咲さんの席は俺の隣なのだ。


 これまで花咲さんとは挨拶をし合う仲ではなかったけれど、昨日打ち解けたことで、学校での態度にも変化が訪れたらしい。


 嬉しいことではあるが、いまは花咲さんの顔をまともに見られる状態ではなかった。視線を合わせないまま、俺は挨拶を返す。


「お、おはよう、花咲さん」

「あれ? 顔が真っ赤だね」

「うっ」

「なにがあったんだろうなー? 遅刻しそうだったのも不思議だなー? 朝、なにかしてたのかなー?」

「……わかってるでしょ、花咲さんは」

「んー? なんの話?」

「く……っ!」


 恨めしい目を向けてみるも、花咲さんにひるむ様子はなく、むしろ俺の反応を面白がるように、ニマニマと笑っていた。


 俺が遅刻しそうだったのはひとり遊びをしていたからで、顔が真っ赤になっているのは、そのオカズが花咲さんのエロ自撮りだったからだ。


 エロ自撮りをポスタしたのは花咲さん自身なのだから、当然、こちらの事情なんて筒抜けのはず。つまり、花咲さんはとぼけているのだ。わかっていながら、俺をからかって楽しんでいるのだ。


 ひとり遊びをしてもしかたないじゃないか! 真っ赤になってもしかたないじゃないか! あんなにもエロい自撮りを目にしちゃったんだからさ!


 からかわれるのは悔しいけれど、隣に花咲さんがいるだけで思い出してしまう。はだけられた制服を、くすみひとつない白肌を、圧倒されるほどたわわな胸の果実を、そしてなにより、ほとんど役目を果たしていない、透け透けのランジェリーを。


 本当にエロかったよなあ。セクシーランジェリーはもちろんだけど、上に着ているのが青海せいかいの制服ってところも……ん?


 ふと、ある可能性が頭をよぎった。


 あの自撮りで花咲さんが着ていたのは青海の制服で、ポスタされた時間は今朝だった。状況的に、着替えるついでに撮影したものと考えられる。


 だとしたら、いま、花咲さんは……。


 思い至った瞬間、カアッと全身が熱くなった。


 バクバクと心臓が荒ぶり、視線が花咲さんに引き寄せられる。


 俺の目がギラついたのに気づいたのだろう。花咲さんがうっとりと目を細め、ハァ❤ と色っぽい息を漏らした。


 花咲さんが裏アカ女子をやっているのは、自分のエロ自撮りを見られることで興奮したいから。そんな花咲さんならば、実行してもおかしくない。


 花咲さんの現状と、彼女の性癖を考慮すれば、俺の予想に間違いはないだろう。


 すなわち――



 いま、花咲さんは、制服の下にセクシーランジェリーを身につけているのだ。



 思わず生唾をのむ。


 そんな俺の反応を目にして、花咲さんがゾクゾクッと体を震えさせた。


 ついさっき処理したにもかかわらず、またしても下半身に血流が集まる。


 慌てて下腹部を隠しながらも、俺の口元には笑みが浮かんでいた。これからの生活への期待によって。




 これが、甘く楽しく変態的な、俺と花咲さんの関係の、はじまりだった。

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