第19話ギルド長室
スライムダンジョン10階層
ザン ポトッ
スライムを一撃で倒し、落ちたアイテムを拾いながらリゼに質問する。
「お母さんの調子どう?」
するとリゼはハッという表情になった。
「伝えるの忘れてましたです。もう治ったです。」と忘れたのが申し訳なかったのか少し恥ずかしそうにしながら答える。
今日の朝、特効薬が出来たとギルマスが言った通り受付のお兄さんが届けにきたらしい。それと鑑定で病気が完治したかどうかも確認してくれたとか。薬師ギルドなだけあってそっち方面はしっかりしている様だ。
「改めてみんなありがとうです。」
「気にすんな。」
「どうたしまして。」
「う…ん。」
「あっそうです。お兄さんがレシピ登録手続して欲しいと言っていたです。」
「そういえばレシピだけ渡して手続忘れてたな。特に予定ないし10階層のボス倒したら切り上げて薬師ギルドに行ってみようか。」
「いーよー。」
「はいです。」
「う…ん。」
10分後
「ここがボス部屋だな。」
俺がボス部屋のドアを見ている後ろで3人がまた内緒話を始めた。
「ケントの強さオカシイです。」
「全部…一撃。」
「だよねー。いくらスライムだとしてもレベル10を一撃わねー?私達だと最低でも5撃必要なのに。」
「強いスキル持ってたです?」
「以前聞いたスキルは普通だったよ。もしかして隠してるスキルがあるのかな?」
(マスター、今まで全てのスライムを一撃で倒しているので皆さん変に思っている様ですよ?自重するのではなかったですか?)
(うっ!いやー。自重しようと思ってるんだよ?これでもすごく弱く攻撃してるんだけど、何故か一撃で終わっちゃうんだよ!)
(それでしたら手加減スキルを覚えるのがよろしいかと。)
(そんな便利なスキルがあるのか!取得方法教えてくれメティス。)
(かしこまりましたマスター。手加減スキルの取得方法は5以下のダメージで50回攻撃をして相手のHPが1以上残っていると取得できます。)
(俺、一撃で倒しちゃうからダメじゃん!)
(大丈夫ですマスター。このダンジョンの隠し部屋に固定ダメージ1の短剣があるのでそれを使いましょう。)
(えっ!そんなアイテムもあるの?レシピ登録が終わったらスキル取得に来るから。その時は案内よろしく。)
(はい、任せてください。)
「おーい3人ともボス部屋に入るぞー。」
「あっ!はーい」
「はいです。」
「は…い。」
まだ手加減スキルがないから結局一撃で倒してしまった。3人にジトーとした目で見られてる。
(うっ!今夜絶対手加減スキルを手に入れてやる。)
・
・
・
薬師ギルドに入ると受付のお兄さんが話しかけてきた。
「皆さん早速きてくれたんですね。」
「はい、早いほうがいいかと思って。」
「助かります。早速ですがこちらの用紙に必要事項の記入お願いします。」
レシピ本を持っているのが俺なので俺が登録することになった。
レシピの申請書をお兄さんに渡した時、丁度ギルマスが帰ってきたようだ。
「おお!お主達はっ!」と言ってギルマスが俺たちのところにやってきた。
「ちょうど良かったのじゃ!すまんがお主達ちょっとギルド長室にきてくれんかのぉ。」
3人を見ると全員頷いていたので代表して俺が「大丈夫ですよ。」と答えた。
レシピの報奨金は後ほどお兄さんがギルド長室まで届けてくれるそうだ。
「昨日は突然帰ってしまって申し訳なかったのぉ。」
「いえ。何かお急ぎでしたが大丈夫でしたか?」
「ふむ、ここだけの話じゃが。実は王妃様が黒死病で動けなくなったため王宮に呼ばれたんじゃ」
「「「「えっ!!」」」」
とんでもないことを聞いたと俺たちは表情を堅くしたがギルマスは気にせず話し続ける。
「じゃが、薬師ギルドにある最上級の鑑定道具を使って調べたところ。黒死病じゃなく黒死病Ⅱだったのじゃ。それでこの前の本にレシピが書いておらんか確認したくてのぉ?お主らを呼ぼうと思っておったんじゃ。」
(メティスあの本ページ増やせる?)
(大丈夫ですマスター。)
(良かった。じゃあ、黒死病Ⅱのレシピが載ってるページを増やしてくれ。)
(かしこまりましたマスター。)
急いでメティスに黒死病Ⅱのことを追記してもらった本をカバンから出した様に見せる。
パラパラめくる、あった。
「ありました。ここです。」
黒死病Ⅱ
指先や足先から黒く変色して変色した部分は感覚がなくなって動けせなくなる。心臓の位置まで黒くなると心臓麻痺で死に至る病気。進行速度は黒死病の2倍。
素手で触っていないブラックデスフラワーの花弁5枚を乾燥させた後摂取したことが原因。一度の摂取じゃなくて複数回の摂取でも花弁5枚分を摂取すると発病する。
特効薬のレシピ
ブラックデスフラワーの乾燥した花弁3枚、ブラックデスフラワーの種1個、解毒草3枚、回復草2枚、癒し草2枚、治癒草3枚、魔力水100ml、消味草2枚、聖水100ml、解呪草2枚をスキルの調薬6かスキルの錬金術6を使って練成する。
「助かったのじゃ。」と言ってレシピを書き写すギルマス。
「王妃様が病気になった話、俺たちが聞いても良かったんですか?」
「大丈夫じゃ。国王様に許可はとってあるんじゃ。」と聞いてホッとする俺たち。
「なら良かったです。」
「これでよしじゃの。」と言ってペンとメモ帳を懐にしまうギルマス。
「何か聞きたいことはあるかのぅ?」
「昨日おしゃっていた認識阻害の話を聞いても良いですか?」
「もちろんじゃよ。これはワシが持っている認識阻害の魔道具じゃ。」と言ってメガネを顔につけた。
「顔がボンヤリしてるのに変に感じない!!顔を見ているのに思い出そうと思っても顔がわからない!!」
「本当です!!」
「っ!!」
(あれ?普通に見えるんだが。なんでだ?)
(それはマスターのスキル耐性:全で無効化しているからですね。)
(そうだった!耐性:全持ってたんだった。)
「おそらくその行商人を名乗るものも似たような道具を持っているんじゃろう。」と言って魔道具を片付けてしまった。
「黒死病じゃが1番最初に発見されたのはサウス辺境伯領じゃった。そこから王都の間にある全ての領でそれぞれ4,5人が黒死病にかかったんじゃ。同じ領で発見された患者は皆知り合いだったんじゃ。なので最初は感染症だと思われておったんじゃよ。じゃが5人以上に感染することがなかったからのぅ。感染症じゃない可能性もあると患者全員に事情聴取をしたんじゃよ。そしたらぞれぞれの領で最初に発病した人は全員顔を覚えていない行商人に会っておったんじゃ。」
「「「「っ!?」」」」
「君たちに見せてもらった本のお陰でブラックデスフラワーの存在に初めて気づいたんじゃ。お陰で事件の糸口を掴めたんじゃ。ありがとうなのじゃ。」と言って頭を下げたギルマス。
「頭をあげてくださいギルマス。お礼なんてとんでもないです。たまたま本を持っていたんです。お気になさらず。」
また「ありがとうなのじゃ」と言って頭をあげたギルマス。
「そういえば、ずっと気になっておったんじゃが、その本はどこで手に入れたんじゃ。」
ギルマスの言葉にギクッとなる俺。頬をポリポリかきながら口を開いた。
「あっ、あー…。孤児院にいた時にあった冒険者のおじさんにもらったんです。その人も誰かからもらったみたいだけど、自分は使わないから小僧にやるよと言ってくれたんです。」
この理由なら追求できないだろう。咄嗟にしては良い理由が思いついたのではないだろうか。
この後、黒死病Ⅱのレシピ登録も行って2個分の報奨金をもらったので帰ることにした。
みんなと別れてからコッソリスライムダンジョンに行き手加減スキルを手に入れたのだった。
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