第20話王妃完治
ギルマスサイド
王の執務室
「ヤクゼン、昨日の今日で来るとは何かあったのか?」書類仕事をしながら国王が問うてくる。
「国王様、黒死病Ⅱの特効薬ができましたのじゃ。」
「なんだと!!」
ガタッと椅子を倒す勢いで立ち上がる国王。
「昨日お話しした少年がレシピを持っておりましてのぉ。そのレシピを基に出来たのがこの薬ですじゃ。」と言って特効薬を突き出して国王に見せる。
「そうかよくやった。宰相!私はヤクゼンと王妃のところに行ってくる。」
「かしこまりました。いってらっしゃいませ。」
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王妃の部屋に行くと第8王女のアマリリスが丁度王妃の見舞いに来ていた。
「薬師ギルドのギルドマスターヤクゼンが王妃様と第8王女様に挨拶申し上げます。」右手と左手を重ねて前に突き出し腰を45度に曲げて正式な挨拶をするヤクゼン。
「面をあげてくださいませ。初めましてヤクゼン様。私はカルバス王国第8王女のアマリリスでしてよ。気軽にアマリリスとお呼びくださいませ。お父様とお母様も畏まらないようにおしゃったそうですね。私に対しても畏まらないでくださいませ。」
「かしこまりました。ありがとうございますじゃ。アマリリス殿下。」
「昨日も来ていただいたそうで本日はどのような要件でこられたのですか?」
「新たに黒死病Ⅱの特効薬が完成したのでお持ちしましたのじゃ。」と言って王女に薬を渡すヤクゼン。
渡された薬を見てから国王を見る王女。
国王が頷くと王女は王妃のそばに行く。
「お母様のお薬です。どうぞ。」
「ありがとうございますわ。」
瓶の蓋を取ってゴクゴクと王妃が薬を飲み終わると全身が淡く光った。
「どうだ?ヤクゼン。」と国王が聞いてきたのでヤクゼンが素早く鑑定をすると状態は健康に変わっていた。
「おめでとう御座いますじゃ。完治しましたのじゃ。」
「おおー。マーガレット。」
「ああ、シルフォード様。」
ガシッと抱き合う2人。
その後熱い視線で見つめ合い。
「マーガレット…。」と言って右手で王妃の頬に触れる国王。
「シルフォード様…。」と言って王妃は目を閉じた。国王と王妃があと少しでキスをしようとしていたところ。
「お父様、お母様。お客様の前ですよ?」
王女の言葉でハッ!となった2人は直ぐに離れた。
「コホン!すまない、恥ずかしい姿を見せたなヤクゼン。」と少し照れる国王。
「病気が完治して喜ぶのは当たり前のことですじゃ。気にしておりませんぞ。続けてもよろしいのですぞ?」
ヤクゼンの言葉で国王の顔が赤くなる。王妃は両手で真っ赤になった顔を覆い、全身をフルフル震わせて声にならない悲鳴をあげていた。
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少し威厳を取り戻した国王が言う。
「ヤクゼンよ。特効薬を使って王妃を治したこと誠に大義であった。望む褒美を与えよう。希望はあるか?」
「ありがとうございますじゃ陛下、確かに特効薬を作成したのはワシじゃが、1番の貢献者はレシピと入手困難な材料を提供した者ですじゃ。」
「昨日も似たようなことをもうしていたな。もちろんレシピと材料を提供した者にも後ほど褒美を与えるがまずは其方からだ。願いを申してみよ。」
「感謝申し上げますじゃ。それでは王宮特別図書館の使用許可をお願いしますじゃ。」
王宮には3つの図書館がある。
一つ目は王宮図書館:王宮に出入りできる人は誰でも使用できる。
二つ目は王宮特別図書館:王族と国王が許可したものだけが使用できる。
三つ目は禁書館:王様と王様が許可したものだけが使用できる。
「そのような褒美でよいのか?」
「はいですじゃ。」
「そうか。では、其方には王宮特別図書館の入館証を与えよう。」
「ありがたき幸せですじゃ。」
「して、レシピと材料の提供者はどのような者なのだ?」
「そうですわ。お礼をしないとですわ。」
と両手を合わせて王妃も嬉しそうに言った。
「素材を提供したのは探索学園に通っておるリゼとレシピを提供したのは探索学園のケントですじゃ。」
「今回の件は公表しておらんからな。その者達にはどのような褒美が良いか…。探索学園か。そういえばアマリリスが通って居るのではなかったか?」
「はい、今年探索学園に入学しました。」
「どういうことですかのぉ?王女様が探索学園に入学した話は初耳ですぞ!」
「それは身分を隠して通っているからです。」
「どうしてですかのぉ?」
「将来のために一般人としての生活を体験したいと思いまして。」
「ほぅ、一般人の生活を体験しようとするものは殆どおりませんじゃ。アマリリス殿下は将来有望ですじゃの。」
「うふふ、それほどでもなくってよ。私の他にも数名おりましてよ。同じクラスにもストレング帝国から来た第4王子が身分を隠して通っていますのよ。」
「なんじゃと!?」
とても驚いたようにヤクゼンが仰け反る。
少し心配そうに王女が聞いた。
「どうしましたの?かなり驚かれたようですが。」
「実は、黒死病の発生源がブラックデスフラワーなのですがその花はストレング帝国の花なのですじゃ。本には黒死病Ⅱはブラックデスフラワーの花弁を乾燥した物を花弁5枚分摂取すると発生すると書かれておりましてのぉ。王妃様は黒くて乾燥している物を摂取しましたかの?」
王妃は少し考えてから侍女を呼び小声で指示をした。
侍女は直ぐ部屋の隣にある小キッチンに行き帰ってきた。その手には豪華な茶箱をもっている。
「私が最近摂取した黒い物はこれですわ。」
テーブルに置かれた箱を開くと中には真っ黒な色をした茶葉が入っていた。
「鑑定してもよろしいかの?」
「かまいませんわ。」
王妃から許可をもらったので早速ヤクゼンは鑑定道具で調べ始める。
「これはブラックデスフラワーを使って作った茶葉で間違いありませんのぅ。何処で手に入れたんですかの?」
国王が顔に青筋を浮かべながら言う。
「これはストレング帝国の王子が留学するからと挨拶に来た時に持ってきた献上品だ。」
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バタン カツカツカツ ピタッ
王妃の部屋から出て少し歩き誰もいないのを確認して「ふぅー」とため息を吐いてから額の汗をハンカチで拭いたヤクゼン。
(国王様の殺気凄かったのぉー。ワシが殺されるんじゃないかとヒヤヒヤしたわい。)
ハンカチを内ポケットにしまってから歩き出す。
(今後ストレング帝国の動きは国王様がお調べになる事になったからワシはもう手を引いても良さそうじゃのぅ。これで安心して新薬の研究に専念できるわい。あの子達も報酬が貰えることになったが王女様が聞きに行くことになったからのぅ。王家に目を付けられないと良いんじゃが…。まあ、無理じゃろうのぅ。頑張るんじゃぞ若者達よ。)
心の中でケント達に激励を送ったヤクゼンはもう自分には関係ないと研究のことを考えながらウキウキと家路についたのだった。
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自室のベランダで1人夜空を見上げて王女が口を開いた。
「ケント様とリゼ様でしたね。明日早速お会いしに行きましょう。どんな方達か楽しみですわね。お友達になってくれるかしら。」
先程まで楽しそうな表情を浮かべていたが突然真剣な表情になって考えはじめる。
(ストレング帝国の王子の目的も明日から調べないといけないわね。最初は私と同じ理由で正体を隠して学園に通っていたと思っていましたけど。今回の一件で違うとわかりました。今まで関わらないようにしていましたが、これからはこちらから話しかけないといけませんわね。ですが私人では少し不安ですわ。そうだ!ヤクゼン様の話ではケント様達にもストレング帝国の話をしたそうだから手伝って貰えるか相談してみましょう。)
明日することを大体決めたので王女は部屋に戻り早めに寝ることにした。
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