第18話特効薬完成

「本当です。黒い花です。」


自分の家の花壇なのに今までは興味がなかった様でリゼが驚いている。


「ワシ、鑑定道具を持ってきたんじゃ。嬢ちゃん、この花を調べても良いかの?」と言ってギルマスが鑑定道具をカバンから取り出して俺たちに見せる。


「お願いするです。」


リゼから許可を貰ったので早速鑑定を始めたギルマス。


「ふむ、ブラックデスフラワーでまちがいないようじゃのぅ。この花の種はどうやって入手したんじゃ?」


リゼはわからないそうなのでリゼ母に聞いたところ。約2ヶ月前、花壇に水をまいていた時、行商人だという男から話しかけられて、花の種をもらったそうだ。買ったのではなく全然売れないから無料だと言って無理矢理渡されたらしい。


行商人の名前や容姿を聞いてみたところ。

名前はライアーと名乗っていたそうだ。容姿も記憶の中の行商人の顔だけがぼやけていてリゼ母は思い出すことができないと首を傾げていた。


「ふむ、その症状は認識阻害の魔道具を使われた時の症状じゃのぅ。」


「「「えっ!」」」


「これは何やら事件の匂いがするのぉ。」


「どういうことですか?」


「話はギルドに戻ってからにしてもらおうかのぅ。ご婦人お邪魔したのじゃ。」


俺たちもリゼ母に別れの挨拶をして家を出ることにした。


玄関を出たところで「ギルマス〜。」と呼ぶ声が聞こえてきた。声がする方を見るとギルドで受付をしてくれたお兄さんだった。


「はあ…、はあ…、ギルマスここにおられましたか!至急ギルドにお戻りください!はあ…、はあ…。」


「どうしたんじゃ、そんなに慌てて少し落ち着くんじゃ。」


数回深呼吸をした受付のお兄さんが手で口を隠しながらギルマスの耳に近付いて小声で何やら耳打ちをした。


「なんじゃとっ!?」


なんだ?ギルマスがあんなに驚くなんてよっぽどの緊急事態か?


「すまんがリゼよ。ここにあるブラックデスフラワーを全部買い取りたいんじゃ、売ってもらえんかのぅ。」


「大丈夫です。お母さんの薬を優先で作ってくれるなら売るです。」


「あいわかった。優先で作ること約束しようぞ。早速特効薬の作成に取り掛かるのじゃ。お先に失礼するぞい。」


「先程の話はまた今度じゃ。薬が出来たら此奴にここまで届けさせるからのぅー。」

「えっ!私がですかっ?」

と言いながら2人は走っていってしまった。


「あのギルマスさん、なんか嵐の様なおじいちゃんだったね。」

マリーの言葉に俺たち3人は頷いて同意した。



ギルマスサイド


険しい顔で口を開いたギルマス。

「さっきの話は本当なのじゃな?」


「はい、王宮から連絡がありまして。王妃様が黒死病になったのは確かかと。これが書状になります。」と言って受付のお兄さんが胸ポケットから書状を取り出した。


渡された書状を確認して「本物じゃな。」と言ってから自分の胸ポケットにしまうギルマス。


(3ヶ月前にサウス辺境伯領で初めて黒死病が報告されて以来、王都に向かって黒死病の患者が増えておった。1つの領で患者は4、5人しか確認されていないからオカシイと思っておったんじゃ。感染するタイプの病じゃなく花によって病になるとはのぉ。あの子達に見せてもらった本にはブラックデスフラワーはストレング帝国に群生しておると書いておったのぉ。あの国は山脈の向こう側にあるからこちらには手を出さないと思っておったんじゃがのぉ。周辺の国を全部手に入れたから次はこの国を手に入れようとしておる様じゃのぅ。)


ふぅーとため息をついてしまった。


(今日あの子達が来てくれて本当に良かったのじゃ。お陰で薬を作ることができるのじゃ。)


薬師ギルドに戻ったギルマスは「至急この紙に書いておる材料を集めるのじゃ。」と受付のお兄さんに伝えて直ぐ調剤の準備を始めた。


(種は全部で10個、半分は栽培にまわすから今ある材料で作れるのは5つじゃな。)


12時間後


(よし出来たのじゃ。むっ!もう朝なのじゃ。)


出来た薬を持って職員室にむかうギルマス。


「メディセン、王宮に先触れを出してきて欲しいのじゃ。」


「かしこまりました。」といって副ギルドマスターのメディセンは一礼をして王宮に向かった。


「リプレ、この薬をリゼの嬢ちゃんに渡してくるんじゃ。完治したか鑑定もするんじゃぞ。」


「かしこまりましたー。ギルマス。」といって受付のお兄さんも一礼をして部屋から出ていった。


「ふぅ〜。疲れたわい。今やることは全部終わったから少し仮眠を取るのじゃ。」



王宮にて


「薬師ギルドのギルドマスターヤクゼンが国王様と王妃様に挨拶申し上げます。」右手と左手を重ねて前に突き出し腰を45度に曲げて正式な挨拶をするヤクゼン。


「おお、よく来てくれたヤクゼンよ。今回は非公式の場だそんなに畏まらんでくれ。」

カラバス王国の国王アルタイル・キング・カルバス、金髪碧眼の美丈夫だが今はとてもやつれている様に見える。


「私も同じ意見ですわ。」

カラバス王国の王妃マーガレット・サンタリア・カルバス、赤髪、赤目の美女はリゼ母と同じ様にベットで横になっていた。


「それではお言葉に甘えますじゃ。」


「すまないが早速王妃を見てやってくれ。」


「かいしこまりましたのじゃ。」


「王妃様、こちらが特効薬になりますじゃ、お飲みくだされ。」


「わかりましたわ。」


特効薬を飲んだ王妃様の体が薄く光り、黒くなっていた手足が元通りになった。


「まあ,手も足も動かせる様になりましたわ。」

ベッドから降りて元の色になった手足をみてとても喜んでいる王妃様。


「王妃様、鑑定させてもらってもよろしいかのぉ。」


「ええ、よろしくお願いいたしますわ。」と言って王妃はベッドに座った。


許可をもらったので薬師ギルドで1番効果が高い道具で鑑定を始める。


ステータス

名前 マーガレット・サンタリア・カルバス 性別 女 種族 ハイヒューマン 年齢 30歳 職業 魔法使い 体調 黒死病Ⅱ

称号 カラバス王国の王妃 

LV 40

HP 4300/4300

MP 4800/4800

SP 80/80

スキル 

・ノーマル

魔法:光LV4 魔法:火LV3 魔法:水LV4

・ユニーク

多重発動LV3


「ふむぅ。国王様ちょっとよろしいかの?」


「どうした?ヤクゼン。」


「王妃様がどの様にして黒死病にかかったか分かっておるかの?」


「いや、判明していない。」


「じつはのぅ。本日判明した事じゃが、黒死病はブラックデスフラワーに素手でふれることで発病するのですじゃ。王妃様は黒い花に接触した事がありますじゃ?」


少し考えてから王妃様は顔を横に振って「いいえ、今まで黒い花を見たことはありますせんわ。」と言った。


「ふむぅ。もしかしたら他にも発病方法があるのかもじゃ。先程王妃様を鑑定したところ、黒死病ではなく黒死病Ⅱでしたのじゃ。今回お持ちしたのは黒死病の薬なので完治出来ていない様ですじゃ。」


「なんだと?どうにかならないのか?」


「わしにはどうすることも出来ませんじゃ。これから今回黒死病のレシピを発見した少年達に聞いてみますじゃ。」


「なんとその様な者たちが。直ぐこちらに来る様通達を…。」


「待つのじゃ、国王様。そのものたちはまだ幼いのじゃ。いきなり王宮に来ると恐縮して何も出来なくなるじゃろう。」


「なに?ならどうすれば…。」


「特効薬で完治は出来んじゃが命の危険はなくなったのじゃ。まずワシが話を聞いてみますじゃ。その後どうするか決めても大丈夫ですじゃ。」


「そうか、わかった。ヤクゼンに任せるとしよう。」


「ありがとうございますじゃ。それでは国王様王妃様、御前を失礼ますじゃ。」と言って国王と王妃に一礼してから部屋から出ていく。

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