第17話黒死病

リゼの家に行ってから1週間後の昼休み


あっ、またリゼがため息をついている。今日は朝からずっとため息をしているな。気になったのでメイに質問してみた。


「リゼ最近また元気がないなどうしたんだ?」


「リゼの…お母さん…また…同じ…病気。」


「え?また同じ病気になったの?」


「う…ん。」


マリーとメイが会話を続けているのを横目に俺はメティスに質問する。


(メティス、治ったばっかりなのにまた同じ病気になるのは普通なのか?)


(いいえ、マスター。短期間で同じ病気になることはありません。短期間で同じ病気になったということはあの時完治していなかったからでしょう。)


(ということは治癒ポーション特級でも治せない病気があるのか。どうやったらリゼ母を完治できる?)


(リゼ母を鑑定して病気の情報を見ないと判断できません。)


(それもそうか。)


早速リゼに話しかけて、今日の放課後はみんなでリゼの家に行くことに決まった。




リゼの家に着いた俺は早速リゼ母を鑑定してみた。

すると体調の所に黒死病と表示されている。


(黒死病?メティス黒死病についてわかるか?)


(はい、黒死病は足先から少しずつ黒くなり全身黒くなると死ぬ病気になりますね。)


(なんで治癒ポーションで治らなかったんだ?)


(治癒ポーションは単一特性の病気しか治すことができません。黒死病は特性:病・毒・傷の複数特性なので症状を和らげることができても完治させることはできないのです。)


(そうだったのか。じゃあどうすれば治すことができるんだ?)


(全部で3つの方法があります。1つ目はエリクサー、2つ目はエクストラヒール、3つ目は特効薬です。)


(3つか、どの方法が1番速い?)


(1番速いのはマスターがエクストラヒールで治す方法です。ですがマスターは…。)


(俺は治癒魔術が使えない設定だからこの方法は使えないな。2番目に速い方法を教えてくれ。)


(2番目は特効薬ですね。レシピはブラックデスフラワーの花弁2枚、ブラックデスフラワーの種1個、解毒草3枚、回復草1枚、癒し草1枚、治癒草2枚、魔力水150ml、消味草1枚をスキルの調薬5かスキルの錬金術5を使って練成することが出来ます。)


(なるほど、特効薬が1番現実的だな。けど特効薬の作り方をどうやって知ったことにすればいんだ?)


(また図書館でレシピを入手した事にするのが1番怪しまれないかと思われます。)


(そうだなその作戦で行くよ。)


「リゼ、ちょっといいか?」


「なんです?」


「君のお母さんの病気についてわかっていることはある?」


「はいです。神父様に鑑定してもらったのです。病名はたしか黒死病だったです。指先や足先から黒く変色して変色した部分は感覚がなくなって動けせなくなるです。心臓の位置まで黒くなると死んでしまうかもです。でも神父様も初めて見る病気で全然治療方法がないのです。なので神父様は治癒ポーションの1番効果が高い特級ならば直せるかもしれないと言ったです。だからこの前ポーションを飲んで治ったと思ったです。実際にお母さん良くなったです。なのにまた肌が黒くなって起き上がれなくなったです。もうエリクサーしか方法はないかもです。でもエリクサーは王様でも中々手に入らないものです。」


「話してくれてありがとうリゼ。」


「黒死病…黒死病…黒い皮膚…。」と言いながら考えているフリをする。


(メティス、黒死病の治療法が載っている本を作成してくれ。)


(かしこまりました。)


(できました。マスター。本はマスターのストレージから取り出せます。)


(了解。)


今思いついたフリをして「そうだ!」と言ってメティスに作成して貰った本「黒死病について」をだし、「ここ」といって説明のページをリゼに見せる。


黒死病

指先や足先から黒く変色して変色した部分は感覚がなくなって動けせなくなる。心臓の位置まで黒くなると心臓麻痺で死に至る病気。

ブラックデスフラワーを素手で触ったことが原因。

特効薬のレシピ

ブラックデスフラワーの花弁2枚、ブラックデスフラワーの種1個、解毒草3枚、回復草1枚、癒し草1枚、治癒草2枚、魔力水150ml、消味草1枚をスキルの調薬5・スキルの錬金術5を使って練成することが出来る。


「すごいです。これでお母さん治せるです。ありがとうです。」と言って目尻に涙を浮かべたリゼはガバッと俺に抱きついてきた。


「うおっ!!」


女の子に抱きつかれるのが気恥ずかしくてわずかに頬を染めた俺を見てマリーが慌てて引き剥がしにきた。


「わっ!?わっ!!何してるの、ダメよ!離れなさい!」

何かに気づきマリーを少し離れたところに連れて行くリゼ。


「何故くっついちゃダメです?もしかしてマリーはケントが好きです?」


「うっ!そうよ!」


「ケントは知ってるです?」


「ううん。伝えてないから。」


2人でコソコソ話しているから何も聞こえない。まだ話が終わらない様なので、今のうちにレシピの部分を書き写して本をストレージにしまう。


何もすることがなくなったので2人の方を見るとまだ話が終わらない様子…っていつのまにかメイも混じっているぞっ!!


「おーい3人とも、お喋りはそこまでにして薬師ギルドに行くぞ。」


「「はーい(です)。」」


「は…い。」



薬師ギルドの調剤依頼と書かれている受付にやってきた。

「すみません、特効薬の作成お願いします。」


「いらっしゃいませ、特効薬の調剤依頼ですね。病名はなんですか?」


「黒死病です。」


「黒死病ですか。申し訳ありません、黒死病は発見から日が浅くまだ特効薬は存在しないのです。」


「私達特効薬のレシピ持ってるです!これで作って欲しいです!」


リゼに渡されたレシピを見てから「これが黒死病のレシピ!!少々お待ちください!!」と言って受付の人はどこかにいってしまった。


数分後ドタバタと走る音がして、白髪長髪で長い白髭を生やしたおじいちゃんが走ってきている。後ろには先程の受付さんが追いかけている。元気だなーと思っていると。


「ギルド長ー、待ってくださいー。」


「待っておられるか!世紀の大発見じゃぞっ!」


おじいちゃんが俺達に気づいて止まる。


「おー、お主らがレシピを持ってきた者たちじゃな!ワシは薬師ギルドのギルドマスターのヤクゼンじゃ。それにしても…」と話が長く続きそうな予感がしたので慌てて質問をした。


「あのっ!それで特効薬の作成は出来そうですか?」


「うむ?ほとんどの材料はここで揃えることが可能じゃ。じゃがブラックデスフラワーはワシも初めて聞いたのぅ。薬師ギルドのデーターベースでも調べてみたのじゃがブラックデスフラワーの素材は未だ発見されておらんようじゃ。」


「お主たちはどうやってレシピを完成させたんじゃ?」


やばい、まさか未発見の素材があったとは。


誤魔化すためにストレージから本を取り出してギルドマスターに渡す。


「あっ!えっと…。この本に書いてあったんです。」


「ほう、こんな本があったとは。少し見させてもらいたいんじゃが良いかのぅ?」


「はい、もちろんです。どうぞみてください。」


とは言ったものの、本が偽物だとバレないか冷や冷やしている。


「この本によれば、ブラックデスフラワーはストレング帝国にある様じゃのぅ。片道だけでも1ヶ月もかかってしまうんじゃ。ここにとどく道中で花弁がダメになってしまうのぅ。」


「もうあと一歩でダメです?お母さんはもうダメです?」


リゼが涙目になってしまった。


「うむ?この本によると黒死病になるには素手でブラックフラワーに触るのが原因と書かれておる。お嬢ちゃん、母君は何処かでブラックデスフラワーに触れたはずじゃ!場所はわかるかの?」


名前 ブラックデスフラワー

説明 暖かい時期に咲く花、植えてから一ヶ月で満開になる、満開になったら寒くなるまで咲き続ける花、見た目はブラックフラワーと一緒だが葉の部分が違いギザギザになっている。満開になってから最初に素手で花に触った人を黒死病にすると枯れて実をつける。実の中にはタネが2個入っている。

ストレング帝国で開発された花。


リゼは目を閉じて考え込んでしまった。


ブラックデスフラワーか…、名前にブラックと着いてるから黒い花ってことだよな?うーん、黒い花…何処かで見たような…。はっ!?


「そうだ!リゼの家の花壇!!そこで黒い花が咲いていた!」とつい大きな声で言ってしまったため、薬師ギルドにいる全員の視線が俺に向いた。


「あっ!うるさくしてごめんなさい。」

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