第16話取得条件判明
(おかしいな、条件が揃っているはずなのに獲得できないなんて。メティス、リゼがスキルを入手できなかった理由がわかるか?)
(理由はリゼが挑戦したモンスターハウスの魔物の数が50体しかいなかったからです。)
(えっ?なんでそんな少ないんだ?俺の時は確かに100体以上いたぞ?)
(それは今日マスターが1度全滅させたからです。ダンジョンのモンスターハウスは1階層の最初のモンスターハウスが100体固定でそれ以外は魔物の数の初期値は50体、その後1日に1体づつ増えていきます。最大値の200体になったところで増加が止まります。奥の方にある3部屋はまだ100以上いるのでそちらに行かれるのがよろしいかと。)
(なるほど、参考になったよ。)
「そういえばリゼ。」
「なんです?」
「出てくるのが早かったけど魔物の数はどのくらいだったんだ?」
「??そういえばさっき挑戦した時より数が少なかったです。大体半分ぐらいだから50体ぐらいだと思うです。」
「そうか。マリー。」
「なに?」
「マリーの時はどうだった?俺の時は100体ぐらいだったぞ?」
「んー。私の時も100体はいたと思う。」
「なるほどです。数が条件の可能性もあるです。早速次のモンスターハウスに行くです。」
気を取り直したリゼはすぐに次のモンスターハウスに挑戦したがそこは先程マリーが全滅させたので魔物はまた50体しかいなかった。
「なんでです?また50体です。」
「もしかしたら一度全滅させたモンスターハウスの魔物は数が減って時間が経つごとに増えていく仕組みかもしれないな。」
「そうです‼︎確かに教科書の後半に書いてあったです‼︎軽く読んだだけだから忘れてたです。」
「そうか教科書に載っているなら間違いないな。それならここから先のモンスターハウスは誰もいってないはずだから100体は確実にいそうだな。」
「そうです。ケントの言う通りです。早く行くです。」
今度こそ条件をクリアできそうなのでリゼは急に走り出した。
「おいっ⁉︎リゼ走るな‼︎」
俺の声が聞こえなかったようでリゼはそのまま走って行ってしまった。仕方なく俺達も走って追いかけることになった。
先についたリゼは俺達の到着を待たずにモンスターハウスに入ってしまった。
「どうしたんだ?リゼは。こんなことするようなやつじゃないと思ってたんだが。」
「リゼ…焦ってる…かも。」
「メイは何故なのか知ってるのか?」
「メイの…お母さん…重い病気…もうすぐ…死ぬかも…神官言った…今…治せる人…いない…治すの…治癒ポーション…高品質…が必要…だけど…ポーション…とても高価。スキルの…獲得条件…ギルドに…売れば…大金もらえる…ポーション…買える…だから…焦ってる。」
「なるほど、だからあんなに急いだのか。」
厳しく注意しようと思っていたが俺も同じ立場ならリゼと同じ行動をしたと思うのでやめることにした。7分程扉の前で待っていたらリゼがモンスターハウスから飛び出してきた。
「ハァ…ハァ…、100体以上は倒したです。ハァ…ハァ…、鑑定するです。」
多分休まず走ってスライムを倒したのだろうもの凄く息が上がっていた。俺は何も言わずに鑑定カードを渡した。鑑定カードを見たリゼは目を見開いた。
「っ⁉︎やったです‼︎スキルが増えてるです‼︎」
「良かっ…たね。」
「やったねー。」
「そうか。スキルが手に入ったか。これでノーマルドロップスキルの獲得条件がわかったわけだがこのあとはどうするんだ?」
「この後です?今度はメイにも挑戦してもらうです。それでスキルが獲得出来たらギルドに行って報告するです。スキルの獲得条件を登録するにはその条件で最低2人スキルが獲得出来てからじゃないと登録申請が出来ないんです。登録申請をしてからギルド職員1名にスキルを獲得させることで登録が完了するです。登録できたらギルドから報奨金と国から褒賞金、合わせて最低 がもらえるです。役に立つスキルであればあるほどもらえる金額も多くなるです。」
「そうなのか。」
[全く同じ種類の魔物を100体以上連続して討伐する]この条件が正しいのかどうか確かめるためにメイが次のモンスターハウスに挑戦することになった。待っている間リゼにもう少し詳しく聞いてみたところ半年前突然お母さんの足の爪が黒く変色したらしい、次の日すぐ教会に行き神官に診てもらったところ黒死病にかかっていることが判明。神官も初めてみる病気だと言った上治すことができなかった。その時神官は治癒ポーション特級なら治すことができるかもしれないとリゼのお母さんに言ったらしいがとても高価で買うことができなかったようだ。
治癒ポーション 単一特性の病気を治すポーション
初級、下級、中級、上級、特級の5つある。
20分後メイがモンスターハウスから出てきたので早速鑑定カードで確認してみた。
「スキル…あった。」
無事メイもスキルが手に入ったので俺達はギルドに向かった。
ギルドに入ると他の冒険者の姿が無く、受付もアメリアさん1人だけだったので早速アメリアさんに依頼処理をしてもらった。
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「こんな大金本当にもらっていいんです?」
「おう」
「いいんだよー。」
「もち…ろん。」
「みんなありがとうです。…うっ…うぅ…ぐすっ…。」
これで治癒ポーション高品質を買って母親を治せるとわかってリゼは泣き出してしまった。
「よしよし。」
メイがリゼを抱き締めて頭を撫でている。少ししてリゼは落ち着いた。
「それじゃあ私はポーション買いに行くです。みんなはどうするです?」
「つい…てく。」
「せっかくだから俺も一緒に行くよ。」
「もちろん私も行くよー。」
「わかったです。ついてくるです。」
しばらく歩いてリゼが校門に向かって歩いていることに気がついた。
「なぁリゼ、購買には行かないのか?」
「はいです。この前購買に行ったのですがここ暫く治癒ポーションⅨは入手できていないそうです。購買だけでなくポーション屋にも行ったけどここ数十年は作れる人がいないそうでダンジョンドロップか宝箱でしか入手できないそうです。この前神父様に教会なら数本あると教えてもらったです。」
「なるほど。」
(ポーションか。メティス、ポーションって俺でも作れるのか?)
(はい作れます。ポーションは全部で3つの作成方法があります。1つ目は薬草などの材料を集めて錬金術を使って作る方法。2つ目は魔法やスキルで出した水に魔法を付与して作る方法。3つ目は創造魔法で作る方法です。)
教会に行き無事治癒ポーションをてにいれた俺達は全員リゼの家までついて行った。
「ここが私の家です。」
リゼが示した先を見ると煉瓦造りの二階建の一軒家がある。周りも同じ感じの家ばかりで見分けがつきにくいがそれぞれ玄関付近に違うものを置いているのでそれで判断することになるようだ。
(リゼの家は花壇が目印のようだな、ん?黒い花か初めて見るな。あれ?1本だけ枯れている。)
何故一本だけ枯れているか原因が気になったが、今は花よりもリゼの母の方が重要だ。みんなに続いて俺も家の中に入っていく。
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リゼ母の寝室
「ただいまです。」
部屋に入ってすぐリゼは母親の側まで走っていった。
「お帰りなさいリゼ。あらっ、お友達も一緒なのね。」
ベッドで横になっていたリゼの母は俺たちの存在に気づいてすぐに身を起こした。
「お邪魔しています。」
「ごめんなさいね。今歩くことができなくてお構いできないけどゆっくりしていってね。」
「はい、ありがとうございます。」
「お母さん、治癒ポーション特級手に入れたのです。速く飲んでです。」
「リゼ、うちにはポーションを買うお金はなかったはずよ。貴女ポーション代をどうやって…まさかっ!!」
何やら悪い想像をしてしまったのか、リゼ母の顔が真っ青になっていく。
母の様子を見て何も説明していないのに気づき、リゼは慌てて弁明する。
リゼの説明を聞き終わると「そう、みんなの分の報酬も使ったのね。みなさん本当にありがとうございます。」
と言って頭を下げて感謝を伝えてきた。
みんなで慌てて頭を上げるようにお願いしてから早くポーションを飲むように勧めた。
覚悟を決めたリゼ母はポーションをゴクゴクッと豪快に飲み終わると体全体が淡く発光した。発光が治まってすぐ「体がものすごく軽くなったわ。」と言ってリゼの母はベッドから降りて立ち上がった。
その後、互いに自己紹介をしてから元気になったリゼ母は張り切って夕食を作り、俺たちはご馳走になってから寮に帰ったのだった。だが数日後、リゼ母はまた同じ症状になったことが発覚。治った様に見えたが治癒ポーション特級では完治しなかったのだ。
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