第5話 肩を触る手【実話注意】

 霊感が強い人の側にいると、今まで怪異に遭遇したことのない人間でも不思議な出来事が起こる──なんていう噂があります。


 僕の実家は霊感のある家系ではなかったのでほとんどその手の体験をしたことはなかったのですが、結婚した相手の家は霊感を持っている人が何人かいました。


 不思議な体験したのはいくつかありますが(※その中でも強烈だったのは第3話にて)、記憶に残っている中の一つは結婚して初めて相手の実家にお邪魔したときのことです。


 初めての家でまだ義理の両親との会話もぎこちない中で緊張してしまっていた僕は、ちょっと一息つこうと普段は誰もいない一階の奥の仏壇のある和室で座布団を二つに折って頭を乗せて横になっていました。


 緊張から解放されたことですぐにウトウトし始めた僕の肩を誰かが軽く触りました。


 トントンっていう感じです。寝ぼけ眼で顔を上げるも僕以外誰もいません。


 閉めていた襖も開いていないし、でも僕はもしかしたらパートナーの祖父、つまり義理のおじいちゃんが挨拶しにきたのかなとぼんやりした頭で考えていました。


 そしてまたウトウト。


 少しして異変に気づいた僕はそっと起き上がり、座布団を戻して和室を後にしました。


 パートナーと義理の両親に今起こったことをそのまま伝えると、口を揃えて「こわっ!」と。


 義理のおじいちゃんはもうだいぶ前に亡くなっているんです。脳貧血だったか脳出血だったか正確なところは覚えていないですが、その話はもう結婚前に聞いていました。


 つまり、僕は以前から義理のおじいちゃんは亡くなっていることを知っていたんです。


 にも関わらず、挨拶しにきたのかな、とのんびり思えてしまっていた自分に驚きました。


 今でもきっと他意はないと思います。本当に挨拶しに来てくれたのだろうと。肩を触った手は優しい感じがしていたからです。


 ……とはいえ、毎年お盆が近づくと義理の父は義理のおじいちゃんが出てくる夢を見るそうです。そうすると、お墓の草むしりをしないといけないと夢を見た翌日にすぐにお墓に行くのだとか。


 僕ら家族も毎年欠かさずお墓参りに行っていますが、もし行かなかったらどうなるのか。


 考えるとちょっと怖い気持ちもしてきます。

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