第6話 死人が多過ぎる
家に帰るとKさんから手紙が届いていた。
びっしりと糊付けされた封筒。ナイフで封を開けると、一枚の手紙が入っていた。3つ折りにされた手紙を広げると、一番上にKと名前が書かれていた。
ソファに横になり僕は手紙の解読にかかった。
「拝啓 お元気ですか? お仕事がお仕事なだけに体調を崩されていないか心配です。私は今はすこぶる元気です」
妙だな、と思った。わざわざ『今は』元気なんて言うだろうか。身を起こして改めて手紙を眺める。
「ここに書くことは全て真実です。どうか心に留め置いてください」
Kさんのその異変は、実家から電話がかかってきたときから始まった。祖父がなくなったのだと言う。
急いで車で実家へと向かったKさん。しばらく進むと、急に道が込み出した。パトカーや救急車のサイレンがうるさく鳴っていたので事故だと直感した。しばらくして事故現場を通り過ぎると、2台の車が正面衝突したようでボンネットはひしゃげたように大きく口を開け、窓ガラスはバラバラに砕けていた。うっすらと血のようなものも見え、もしかしたら誰かが死んだのではと思った。
不吉な予感にかられたKさん。しかし、その予感は現実のものとなったようだ。
「葬儀の帰りでした。車のフロントガラスに人が飛び降りてきたんです。まだ若い女性でした。助手席にまで飛び込んできて、即死でした。あの何とも表現できない瞳はずっと忘れられないでしょう」
Kさんは仕方なく電車に切り替えて家へと向かった。何も起こらないでくれと思った矢先、急ブレーキがかかり電車は止まった。人身事故があったようだ。
恐怖を感じながらも急いで自宅アパートへ戻ると、入口の前に黄色いテープが張られ、人だかりができていた。人々の噂に耳を傾けると、隣人が首吊りをしたらしい。
「私は恐怖に駆られながら近くのネットカフェへと入りました。そして、今この手紙を書いています。死が私を付け回しているような気がしてならないのです。祖父の死から始まった死の連鎖はどんどん私に近くなってきています。ねえ、そうでしょう? 何やら足音が気になります」
そこで手紙は終わっていた。最後の方は焦っていたのかひどく乱暴に書き殴ったようになっている。Kさんがどうなったのか手紙では結局わからなかったが、僕はどうなったのかを知っている。
なぜならさっきから窓に人影が映って消えないからだ。カーテン越しなのでシルエットしかわからないが、Kさんのフォルムに酷似していた。さらに窓には1、2、3……全部で6体の人影が
ん? 何やら足音が聞こえる。まさか……いや、そう言えば、僕がKさんと知ったのは手紙の中身を見てからで封筒には差出人の名前がなかった。
僕は急いで立ち上がった。その後ろで足音がした──。
◇◆◇◆◇◆
暑い8月に入ったということで、『怖語り』夏休みスペシャルをやりたいと思います。
1週間くらい毎日18時に短い怖い話を投稿していく予定です。
ぜひ、毎日遊びに来ていただけると嬉しいです。
よろしくお願いします!
【これまでのホラー作品】
『子供霊』https://kakuyomu.jp/works/16818093078950727481
『餓鬼憑きあるいはヒダル神による一怪異』【完結】
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