遺された想い、繋ぐ鼓動
相棒が居なくなってから、初めての春
「
「はいはい今行く~!」
私は、活動名を柚葉から
元々は二人で活動していて、バイト先でも二人一緒だったが、もうその片割れは向こう側へ一足先に逝ってしまった
葬儀の後に知ったのだが、前々から夢を叶えたらこの街から居なくなる気だったらしい
相棒だったはずなのに、なんで言わなかった
なんて考えも浮かんだが、あの日に託されたものを持ったままの私がうじうじ考えてても仕方がないだろう、、と、この街に残ることを決めた
「これメニューね、決まってんのあったらもう持ってくるけど、どーする?」
呼ばれたテーブルの方に行けば、座っていたのは常連客
抜けた口調でメニュー表を渡しては既に決まっているのを聞いてみる
「あ~、じゃあカフェオレ2つとメロンソーダ2つで!」
「りょーかいです!」
注文を手に持っていたメモに書いて厨房へ
店主のユキさんに伝えてからまたホールに出る
伝説を作り、置いて行かれた一人の少女は今
歌を歌えなくなっていた
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「はいおつかれさん、有難うね東葉」
「あは、ユキさんもお疲れ様です」
人も掃けてそろそろ閉店時間のスイラックで2人、ユキさんから渡されたメロンソーダをちびちび飲み始める
最近は閉店時間近くになるとユキさんが何かしらの飲み物を出してくれるのでそれを飲みながらの雑談がルーティーンと化しているような気がしなくもないが、まぁそれでもなんでもいいだろ
「んで、東葉はもう戻らないの?」
「ん~、、、歌わないとな、とは思ってんだけど」
あの日、東雲時に送られてきた彼奴との最後の曲を、私は見ないふりをし続けている
ずっと歌えていないんだ
「歌わない気はないってことでしょ、活動名に東入れてるしさ」
「、、あとは気持ちの問題ですね。 私が、、彼奴との決別が出来てないってだけなんで」
苦笑交じりにメロンソーダを一口
自分が歌っているときには、彼奴が居ないと不安で
一人で歌えない自分が弱いだけなのは分かっている、だが、どうしようもなくもう居ない相棒を思い浮かべてしまっては歌どころの話ではなくなってくるんだ
話を聞きたくなくて一気にメロンソーダを飲み切っては礼だけいってすぐに店を出る
「、、あ、桜」
ストリートを抜けてゆっくりと川辺を歩いていると丸い形をした桜が並木を作って夜の川辺を彩っている
「なんだっけ、この桜、、確か、河津桜とかだったよな」
何時しか此処で練習をしていた時に東雲が河津桜の話をしていたような記憶が
ふと気になって携帯で検索を掛けてみる
写真の桜は、ちゃんと河津桜だった
花言葉は _____
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翌日のストリート
懐かしい歌声が響くカフェ、スイラックには普段よりも2,3倍の人が入っていた
何時しかの伝説の歌声が戻ってくる、そう聞いた人が大半だった
「託されたものは繋げるか?」
大丈夫だよ、もう前を向いている
「あの日見た夢はもう戻らないか?」
あの日の夢は戻らないけど、もう一度超えることならできる
「もう一度掴もうとしたあの夢の隣に、私はいるかい?」
お前は、上から見守ってくれているでしょう?
あの日託されたものは、繋いだか?
「大丈夫さ、こうして繋いでいるから」
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