まだ、師弟として
カランベリル警察署員 Rank5 オオサキライ
誰にでも優しくて仕事もできるエースの彼は、警察からギャングへ行ってしまった
ギャングになんて行かない、此処が居場所だと言っていたはずなのに
「ぁ”~~~、、だる、、出勤しないと、、」
今日も今日とて本署の仮眠室ベッドで吐き気と頭痛にたたき起こされ、普通よりも3時間早く起きてしまった
サイドボードに置いてある沢山の薬の中から飲むべきものだけ取り出して水で流し込む
制服に着替えて無線を手に取り、あくまでも何時もの声に聞こえるよう、出勤の報告を入れる
音圧に頭痛を悪化させられながらもヘリポートへ行き警察ヘリを出して飛ばす
見回りをしなければならないことは分かっている物のこの状態でやっても罰金とか間違えるだけだろう、なんて思い誰も来ないであろう海辺にヘリを止めて沿岸に座り込む
傍にはいつも被っている少し傷のついた猫のヘルメット
何をする気にもなれないで、ただ海を眺めるだけ
無線も切って、インカムも外してヘルメットの中
何をするわけでもなくただ、海を眺めていると聞こえてくるヘリの音と見慣れた綺麗な藍色で彩られたヘリの姿が見える
堕ちた、元師匠の私物ヘリだった
何処へ行くんだろう、なんてぼんやりと回らない頭で考えていると彼の乗っているであろうヘリが此方へ飛んでくる
がしゃん、と音を立てて近くに止まったヘリから出てくる黒いスーツを着た元先輩
「、、あれ、居たんだ海里君」
「あはは、居たら駄目ですか? Aslan構成員、オオサキさん」
「んん、、やっぱ根に持ってる、? 言わなかった事」
「、、なんで、居場所って言ってた場所を捨ててまで、そっちに行ったんですか
なんで、俺には何もなかったんですか、、、! なんで、、信頼してくれてたんじゃないんですか!?」
根に持っていないわけがないだろう
あれだけ警察業務以外でも共に過ごしていたのに、大事な事を言ってくれなかった
大事な人の変化に気づいておきながら、漠然と明日も一緒に働ける
なんて、約束されたわけじゃないことを信じて疑っていなかった
堰を切ったように元師匠が黒堕ちしてから考えていたことを話す
目の前の師匠は、悲しそうな顔をしていて
「スズだから、言えなかったんだよ
決めたことだけど、スズに相談しちゃったら、揺らぎそうな自分が居たから」
ごめんね、と横に来て背中をさすってくる元師匠の優しい手を振りほどくことが出来なかった
落ち着くまで泣いて、顔を隠すためにインカムを付けてヘルメットを被りまた海の方を向く
「すいません、、先輩」
「いいんだよ、これは俺の所為でもあったからね」
変わらない声でそう言う彼の横に座っていると 未だに変わらない関係のままなんだな なんて錯覚に陥りそうになる
「、、先輩、俺がそっち側に行きたいって言ったら、歓迎してくれますか?」
灰猫の警察官は、師匠を追ってギャングへ堕ちる
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「あは、みんなごめんね?」
何時も立っていた本署内の牢屋の、中
濃い紫色の飾り紐を付けた兎面を被った同期であり親友は何も言わずに業務をこなしていく
俺の研修を受けたお揃いのヘルメットを付けた後輩は なんで と泣きながら訴えていて
残りの同期は泣いていたり何も言えないような表情で此方を見詰めていたりと、堕ちた事を信じれないような表情だ
「ライ、か?」
それまで黙っていた署長が口を開いたと思えば、堕ちた理由を聞いてくる
「ええ、その通りです あくまでも俺はあの人の弟子
弟子は師匠の元に控えておくべきでしょう?」
声高にそう言うと、数人の顔が歪む
師匠と同じく、此処が居場所だと言っていた言葉を信じていたんだろう
「じゃ、頼むよレイ 最後はお前が罰金切ってくれ」
「、、、海里スズ、罰金額が200万円を超えたため30分の収容場行きとします
何か言い残すことはありますか」
最後の同期の声を聴き、口を開く
「 俺に必要な経験を、有難う御座いました 」
一人、海へ足を運ぶ
その道を歩む隣には、師匠の姿が
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