もう一回は何回までですか

「ちょっと、聞いてんの」

「嗚呼悪い聞いてねぇわ」

放課後の図書室、4階にある図書室の窓からは部活動に力を入れる人たちがよく見える

まぁ、その中での私たち二人も例に漏れず文芸部の活動中だ

文芸部は定住地を図書室に置いていて、開始とともに多くの部員は資料やネタを集めるために学校内の色々なところに散る

「だからぁ、、今度の合作何時発表するのって言ってんの、、マジでもう少しは気にしてw?」

「だってあれじゃん、この間出したばっかりでしょ??? もーちょっと間開けても良くねぇ~?」

「はいはい、そう言っておきながらもう構成纏まってんだろ早く出せ」

うるせぇなぁ、なんて軽口をたたきつつすでにまとまっていた合作の構成表を出す

礼だけ言って黙り出す彼女の横顔を見つつ自分も手元のパソコンに文字を打ち込んでいく

合作と並行して短編と長編の下書きを進める必要がある

抱え込むと面倒だ、、

「、、なぁゆずりは、彼氏いたっけお前」

「急だなぁ? 居るわけ無いだろアタシに 

 生憎狙ってるとかそういう話も聞かねーよ」

目の前で構成表を読んでいたはずの志音しおんがそんなことを聞く

普段見せないような恥ずかしそうな、不安そうな表情で

「ンぁ、お前なに どしたの」

「、、いや、まぁね? 何でもねぇよ手動かせ」

なんとなくごまかされたような気が思いっきりするが大人しく個人発表分の文章を作っていく

ぽんぽんと交わされる会話の途中で先生が来て本を貸し出してったり

杠がトイレに行っている途中でパソコンにやってみた悪戯がバレて殴られたり

真面目な話をしつつパソコンに打ち込んでいく

そんなこんなで部活時間も終わり、日が傾いている時間に最終確認と日誌を書いて提出

「んじゃあ帰るか、今日も家来るだろ」

「おう、行くよ ミカさん今日居ないんだろ?」

「最近彼奴家帰ってこないよ」

何時もの様に川沿いを歩きつつそんな話をする

ふと空を見上げてみればもう月が出ていて、満月が辺りを照らしていた

夏の大三角とか見えっかなぁ、、、なんて思っていると志音が隣に来て

「今日の月、綺麗だな」

「、、、ッ、まぁ、綺麗だと思うけど、」

意味を理解していってるのだろうか此奴は

急に隣に来たと思えば、月が綺麗だなんて

「意味、分からないわけじゃないよな あれだけ表現やったもんな」

「いやお前杠ゆずりは、ちゃんともっかい言えよ!! 急に言われて意味がどうのってそう言う話じゃないって分からねぇか!?」

ぎゃんぎゃんと杠の前に立って顔を赤くして思いっきり抗議する

なんで私を、なんて考えもそうだが

兎に角、嬉しいという感情と困惑が先行していて








「 何回でも言うよ、如月志音きさらぎしおん

                  貴方が好きです 」



月明かりに照らされた相棒想い人の顔は頬が赤く染まっていて

悪戯っ子の様に微笑んでいる彼女にどうしようもなく愛おしさを覚えている自分が居る



「 アタシも、好きだよ ありがとね、杠 」




照れくさそうに笑うが、少しも負の感情はない

嬉しい感情だけが先行していて




「なぁ、もっかい言ってくれねぇ?」

「もう一回とか何回までだよ、何度でもおねだりすんだろお前」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る