鼓動を遺して
夢を叶えたこの日、私は相棒と夜の街を眺めながら雑談をする
此処まで来るまでの長かった道はもう後ろに
振り返ればずっと、ずっと、走り続けてきた気がする
漸く立ち止まる事が出来た、今日の夜
(これで私も、お役御免だ)
私の演劇もそろそろ、終わりを告げる
相棒の傍らに居れるのは、此処まで
「じゃあ、ばいばい 柚葉」
また、なんていう相棒の言葉に少し、寂しさを感じつつも手を振って別れる
身辺整理は相棒に何も告げず終わらせていて、あとはちゃんと居なくなるだけ
私の生きる意味の曲は、歌声は、私を置いて絶えず鼓動し続けるから
相棒の隣で嘘をつかずに、生きていけたことが私の幸せだった
最後に街を歩く
最初に歌った場所、喧嘩して暫く歌わなくなった時によく行っていた場所
仲直りをしてからまた歌った場所、2人であーだこーだ騒ぎながら歌詞を考えたカフェ
店の名前は スイラック
よく店主とも喧嘩をして投げ飛ばされていた
思えば、家よりもこの街に居る時間の方が長く、楽しかったと思う
自分を遠慮なく出すことが出来ていただろう
もうそろそろ終わるストリート
ストリートを抜けて歩道橋へ
そろそろ朝が顔を出してくるころ
見たくもない私の 本音 を照らし出す
(もういい、眠らせて)
最後、連絡アプリを開き、自分の作っていた曲を相棒に送る
鼓動を押し付けて、そのまま閉じる
「 もういい、なにも、要らないから 」
叶えた夢の先に何があるのか、
___おやすみ 良い夢を___
とあるストリートに伝説を樹立したペアの片方、一人の少女は
その日、東雲時に姿を消した
一つの鼓動を遺して
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