第19話 怪盗

 フュージョンして適性値が100越えているので、キンクマさんと別れる前に転職を試した。


【 職業変更 怪盗 上忍 義賊団首領 】


 「怪盗で、お願いします」


【 職業 怪盗 職能 強奪 高速隠行 潜伏 同時入場者収得率上昇小

  習得技能 奪取 独行時収得率上昇中 】


石柱から手を離すと、キンクマさんが寄って来る。


「どうなった?」

「怪盗になれました。強奪と高速隠行と潜伏ができます」

「やったわね。強奪持ちで軍に協力してくれる人は、他にいないのよ」


 僕が軍に協力しているように聞こえるんですけど。


「強奪なら、9キロの飛行力を盗れる。大佐の獣身に飛行力を持たせられる」


 副官の人が勝手なことを言う。日本の国益にはなるんだけど。


「白鳳がいるのよ。鳳凰のレアなの」

「そんなの獲っていいんですか」

「見た目が鳳凰なだけで、獲ったら罰が当たるとかじゃないの。散々獲ってるし」

「飛行力出ないんですか」

「持ってるのが少ないらしくて、確率が低いのね。ドロップではまず無理。出たことがあるってだけ」

「俺、色はどうでもいい」

「近藤君は先に大三角羚羊獲ってからね」

「赤、緑、青、黒、白がいて、どれでも飛行力は持っている。白は珍しいだけ」


 この人達の前でやるんじゃなかった。

 何日も僕に付いてはこれないので、翌日軍は通常業務に戻ったが、赤と白のオオカミが欲しい人が付いて来た。

 山羊からの強奪は失敗することなく、リキャストタイムも短かった。


 サルはフルートで散らし、宝の山だけ取る。大き目の金の装備の出が良い。

 攻撃、防御、持久、敏捷の内二つを組み合わせて10%ずつ上がるアームレットが出て、5%の指輪、10%の腕輪と合わせて25%。

 両手にしたら50%上がる。


 オオカミエリアで鋼銀を取りながらさ迷うと、黒いオオカミがいた。

 忍者の人と近付いて、木の上で正体を現す。


「ウワッ」


 オオカミが吠えかけて止めた。

 霊気壁への衝突音がした後、あっさり刺殺された。


「笑っちゃうわ。ガハラ見てオオカミがビビった」

「今までは何だか判らなかったのがはっきり判るような感じだったけど、いないものが突然現れたように見えるんだろう。しかも三次職だから強敵に感じるはず」


 解説の後、三角鹿エリアに向かった。

 大三角羚羊の下位互換で、正面向きの角から強射を撃って来る。

 大きさはアジアゾウくらい。

 後ろに回って、蹴られないように横から足を触る。

 強射が抜けて、巨体が結晶になって崩れた。


「置いてある物を取る感じでオーブが抜けますね。9キロで通用するスキルなのが実感できます」


 チーム最強スナイパーの城嶋さんに渡す。


「これ全員に入れたら、このシカなら撃つだけでやれるわね」

「我々の翼も頼みたいので、強奪のスキル上げの為にも軍の要請を受けてくれ」


 遠藤先輩に言われる。


「そうするつもりです。むしろ安全にやれる機会を貰ったのかも」

「その話は、駐屯隊長に報告してもいいですか」


 オオカミ獲りに付いて来た軍の人に聞かれた。


「はい、お願いします。会えば直接言います」


 シカは強射の盗れるのと表示されないのがいて、強射はもう一つしか盗れなかった。

 皮は2枚。全員分の鎧になる。

 帰りに獣身のキンクマさんと一緒になった。


「どうだった」

「皮は盗れたんですが、強射のドロップ率が低いです。一週間以上掛かるかもしれません」

「ドロップだとほとんど出ないのよ。9キロの飛行力より下じゃないかしら」

「強射が全員分盗れたら、そちらをお願いします」

「あら、やってくれるの。嬉しい」


 声は生身と同じだが、白いグリズリーに笑い掛けられても、怖い。

 結局一週間掛けて強射を盗り、僕以外はレベリングになる。

 一人出向で軍の佐官尉官に混ぜられて、9キロ右エリアに。

 キンクマさんには通常業務なので、これからはずっと一緒。


「ほら、あそこに飛んでるでしょ」


 熊の手で雑に指し示す空に、鷲より翼の長い鳥が飛んでいる。

 翼長の長い細身のキジか。全体に一色ではなく、赤、青、緑の割合が多いか少ないか。

 他に、全体に黒っぽい(真っ黒ではない)のと、真っ白がいるとな。

 真っ白が欲しい人は一人、後は二人ずつ入れてある。


 飛んでいるのは、緑が濃い。

 隠行で近付いて、オナガドリみたいな体長と同じくらいの、ひらひらした尾羽を触る。

 戦闘になると、この尾羽は刃物になる。

 手が切れることもなく、収納にオーブが収まった。

 落ちて行った鳥が、地面に触った途端に結晶になる。


「飛行力盗れました」

「はい、自分です」


 喧嘩しないように、順番は決めてある。


「同じのが3つ出たらどうするんです」

「その時は、欲しいのが貰うから。1日で3つなんか、想定外よ」


 赤っぽいのがいたので、触ってみたが、飛行は持っていない。

 衝撃波の絶叫が盗れた。


「口から衝撃波を吐けるみたいなんですが、咆哮じゃなくて絶叫です」

「ちょうだい」


 キンクマさんが手の平を上に向けて出す。

 下に手を当てて、赤い珠を熊の手に乗せた。


「衝撃波の咆哮は持ってるんだけど、直ぐに拡散して射程が短いのよ」


 なんとなく言い訳に聞こえた。

 試してみると言って、センザンコウのような大きな鱗に覆われた、襟飾りがないトリケラトプスを見付けて、絶叫を吐き付けた。


「ぐわうお」


 ひどいよ、みたいに鳴いて、三本角の巨獣が逃げようとする。

 寄ってたかって殴る。動けなくしてから、僕が呼ばれた。


「肉、取れたら取って」


 盗れたのは「四足地鶏の肉」。顔が鳥っぽいと言えば鳥っぽいか。


「咆哮は今の距離から撃ったら、怒らせるだけだったのよ。これもいくらでも欲しいわ」

「角のない獣身に、中距離攻撃が出来たのです」


 赤狼の副隊長も嬉しそう。次はこの人の番だろう。

 鳳凰そのものは結構飛んでいて、絶叫2、赤い翼1。

 攻撃されずに近付けて、触れば倒せるのが反則。

 

 モブの守と言う酷い名前を付けられた、ただ巨大なだけのイノシシの肉が3つ。

 9キロエリアで特徴もなく数がいると、そんな名前を付けられてしまう。

 夕飯はモブの守丼。超デラックス豚丼だった。


 僕しか盗れないので、1つ無駄になってもいいからと、絶叫のオーブを手に出したら霊核にはならなかった。

 7キロの鳥だからか、入れたら変身中なら絶叫が出来るようになった。

 射程はやはり短いが、格闘戦で唾を吐くように使える。

 日本中から飛べない8キロ物の獣身が集まってきて、夏休み中に全員飛べるようになった。

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