第15話 なにになりたい?


 古戦場でレベリングとアイテム集めをして、7キロ右の普通の森林のモンスターを倒しに行く。

 6キロの鳥じゃないフュージョナーに飛行力を持たせられる、大きな鳶の木っ端天狗がいる。

 つかさちゃんの調伏の舞と吉田さんの制圧の調べで飛べなくなって、落ちた処に奪取。

 出たオーブを近藤先輩に渡した。

 焦げ茶の翼が生えた。

 パタパタした後、前に持って来てなぜなぜしながら遠藤先輩に見せる。


「信じらんないわ。こんな簡単に飛行力持てるのな」

「8キロの鳥で強化も出来る。俺等6キロ物の鳥もな」


 戦闘する順で、ケイコ姉の次が吉田さん。

 一日で三人飛べるようになった。

 風属性は羽のない生身でも、ダンジョン内でだけ飛行船程度に飛べる浮遊が得られると言うので、僕も融合した。

 僕は霊力が多いので、スキルの取得制限を気にする必要はない。

 フュージョンしたら普通はダンジョンは変身して入るので、意味のない能力だと思われているが、空跳より動きやすい。


「後は、ガハラとつかさのフュージョンか」


 贅沢を言っている訳じゃないが6キロのモンスターにこれだと思うのがなかった。

 7キロエリア以上のフュージョンモンスターは、単独で獲らないとオーブを出さない。

 奪取でも表示されない。

 つかさちゃんは白い鳥の翼が欲しいと言う。

 我がままではなく、何か意味があるのではないかと、獲れそうな白い鳥を探した。


 刺殺鷺か、白鷹、白フクロウくらい。

 刺殺鷺が空戦機動は一番低いが、その名の通り一撃必殺の突きを持っている。

 躱し切れないと危険。

 白フクロウはレアモンで、北海道にしかいない。


「引き算で白鷹と言うのも、贅沢な話だけど。デバフで戦うなら、金の腕輪と足輪が欲しい」

「鷺の突きを躱す方法ってないんですか」

「忍者か盗賊が、いきなり隠形を解いて見せるのがあるけど、出が悪くなる。攻撃した事にはならないが、モンスがどっちが敵か迷って単独討伐にならなくなる」

「それなら躱した後、モンスターに敵だと認識させればいいんじゃないですか」

「そうなんだが、鷺は地上戦も強い。嘴が長くて真っすぐだから鷺と名付けられたが、戦闘力はヘビクイワシだ」

「空中からのを躱した後、硬直時間に大ダメージを入れて、速攻で倒し切らないと、相打ちに持ち込まれる」


 忍者の人は検討して止めたのだそうだ。勝負をしたいわけじゃない。


「人間頭刺されたら即死するし、胸でも心臓や肝臓潰れたら、ポーションじゃ直ぐには治らない」

「腹で受け止めて首切ったって話はあるんだが、主戦力系じゃないとショックで動けないだろう」

「北海道でいいんじゃない? フクロウは隠密力が高いから見つからないのと不意打ちでしょ。生命力感知があればどっちも無効よ」


 お嬢が解決策を出した。


「それだ」


 探知範囲が狭いので使い勝手が悪くて普段使わないので、忘れていた。

 北海道に行く前に、桝澤先輩と稗田さんにも羽根を生やしておこうとしたのだが、校内の廊下で三年生4人に土下座された。


「どうか、我々にも翼を恵んでくれ」

「なんで土下座」

「誠意をもって頼めば、聞いてもらえるかと」

「それ、された側は周りからどう見られると思います」

「凄い奴だなと」


 近藤先輩が解説してくれる。


「こいつら、リアルで頭蓋骨の中筋肉しか入ってないから、一見日本語話すけど言葉が通じない。お前と組めた俺等は例外で、この時期にフュージョン出来るのは、そう言うのじゃないと無理」


 僕等と遠近コンビのパーティを分けると、こっちに入れられるので、連れて行く。

 大森猫2、山羊2の組合せだった。 

 浮遊を取ったお陰で、奪取のタイミングが計り易くなって、1日で6人分盗れた。

 木っ端天狗は、獲り難いだけで数はいる。


 帰ろうとしたら、入り口に三年の学年主任の先生がいた。


「五体投地しようか」

「やったら一生口利きませんから」

「じゃ、立ったまま話すけど、三年の生産職上位10人にフュージョンオーブと翼を入れて欲しい。冗談じゃなしに、日本の将来の為だと思ってくれ。日本はいつどこでスタンピードが起きてもおかしくない」


 能力上げではなく、スタンピードに巻き込まれた際の生存率上げが目的だった。


「こっちに6人入れられるんで、12人でもいいです」

「多い分にはいくらでも増やしてくれ。三年全員でもいい」


 いくない。

 しかし、ちょっと突っ走り過ぎている気がする。

 つかさちゃんは去年の僕の夏休み前半くらいの歳だ。

 遠近先輩パーティにしても、夏休みにフュージョン出来たら上出来だったので、無理に8キロに行こうとは思っていない。


 夏休みまで、二年生の成績上位者もやることにした。

 成績の判定がし辛い霊歌師と霊楽師も対象にした。

 舞祈禱師はいなかった。

 戦力的に舞祈禱師がいればいいな、と言う話である。

 つかさちゃん以外の裸踊りが見たいわけではない。


 猫や狐以外がいい人は他所に行ってもらう。

 やはり、やりだすと文句や贅沢を言い出すのがいる。

 僕は理性を保ったまま敵を殲滅するバーサーカーで、敵味方の識別は出来るが、敵と見なしたら容赦しないと言う話を、学校側から故意に流してもらった。

 どうせ嫌われるなら、舐められるより恐れられたほうがいい。


 アイテムやスキル盗りを他の人にやらせようと思って、盗賊も育てたかったのだが、能力の高い盗賊になるのは個人主義者が多く、稼げるようになると金払って兵役から逃げるらしい。

 日本の戦力強化なら、斥候や先鋒を育てた方が良い。


 「この頃二年の女からハニトラされてるんだぜ」


 ケイコ姉が意味不明の供述をする。


「なんで」

「お前に紹介してくれって」

「直接こっちに来てくれたら、ハニトラをやり逃げする練習になるのに」

「断るんじゃなくて、やり逃げか」                                                


 色々あったが、みんなが楽しみにしている夏休みがやっと来た。

 金持ちパーティは羽田から札幌に飛ぶ。

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