第14話 初めての対人戦 主人公VSライカンスロープ至上主義者
学校に行ったら、今野の元同級生に絡まれた。
「お前ら、三年生に寄生してるんだってな」
「僻むのがいるのは判るが、自分の仕事をしていれば寄生じゃないぞ。これだけスキルとアイテム出してれば僻まれるだろうとは思うが。直接戦闘してモンスターを倒すだけが仕事じゃないぞ。僻むのを止めろと言っても僻むだろうが」
「お前」
「なんだ。わざわざ他所の組に僻みに来たんだろ。このくらい言われるのは覚悟してなかったのか。僻めばこう言う目に合うんだぞ」
「よくもそんなことを」
「自分を高める努力をしないで、他人を貶めるまねをするからだ。二次職が一次職に稽古をつけてやるわけにはいかない。自分で修行しろ」
「ハナミズ、もう帰れ。恥の上塗りだ」
今野に言われて、鼻水とやらは出て行った。
午前中の座学が終わってから、先生が来た。
「飯前で悪いが、ちょっと話を聞いてくれ」
進路指導室に連れて行かれる。
「花水木がな、どうしてもお前と戦わせろって五月蠅い。二次職と一次職は模擬戦は出来ない、主戦力から軽戦士に挑戦は出来ないでつっぱねたんだが、むしろあいつのために叩きのめしてやってくれないか。こっちはボクシングルールでも圧勝のお前のスペック判ってるから、慈悲で止めてるんだが、一度痛い目を見ないと目が覚めないようだ」
「覚めなかったらどうします」
「退学だな」
「いいんですか」
「将来あいつが死ぬのは勝手だが、他人、特にここの生徒を巻き込ませたくない」
「いつまでも付き合わされたくないので、やっていいならやりますよ」
「殺さないでくれよ」
「ダメですか」
「言わなきゃやる気だったか」
「僕が壊れてるのは、軍から聞いてるでしょ」
「敵に対してリミッターがないんだよな。外れてるんじゃなくて」
「敵味方の区別はつく程度の理性は残っている、バーサーカーだそうです。自分では自覚がないんですけどね」
両親の死が切っ掛けになって、僕は壊れてしまったらしい。
翌日の戦闘実習で、模擬戦と称して鼻水の教育的指導は行われた。
ルールは12オンスグローブを着けてのボクシング。
スキル使用は無し。
スリップ以外でダウンしたら負け。
「ダンジョンで鍛えても外ではさほど変わらないと思われているが、それはチュートリアルにしか入った事がない者同士だ。メインに入るのがどういうことか知っておいて欲しいので、漆が原に頼んで、花水木と戦ってもらう事にした。花水木は漆が原を寄生だと思っているらしいからな」
先生の説明の後、中央でグラブを合わせる。
ゴングと同時に花水木が突っ込んで来て、左のジャブから右のストレートを打った。
右の拳で左を打ち、左で右を打つ。
何度打って来ても、それに合わせて拳を打ってやる。
何度目かは判らないが、向こうの左の拳が砕けた感触があったので、飛び下る。
花水木は、変な意地を張らずに、拳を護るように押さえて座り込んだ。
「拳、折れてますね」
僕が言うと先生が用意しておいたポーションを飲ませた。
「これで気が済んだか。パワレベで基礎能力だけ上げて出来る事じゃないだろ。スキルは使ってないが、それが入ってるからでも、スキル取ったのは漆が原の実力だ。三年が貰っている方だぞ」
「はい、思い知りました。どうすれば、あれほど強くなれるのでしょう」
「軍が成長の記録を買って調べたが、真似のできるものではなかった。雑魚をひたすら狩ったんだ。漆が原は戦闘で精神的な疲労を感じない。普通は頑張ってもどこかでセーブしてるし、それをなくそうとすると、狂う恐れがある」
「普通の人間じゃ出来ないってことですか」
「そうだが、漆が原と組んでる二年は二人とも三月生まれで組む相手がいなかった。二人でちまちま狩りをしてた。三人で組んでスキルを取れるようになって急に伸びた。金に困ってないなら小物を数獲ってみるんだな」
「はい」
ちょっと助言する。
「金なんですが、みんな収穫を採集にしてますか? 今組んでる三年の先輩も誰も採集になってなかったんですよ。採集があると小銭が稼げるし、デザートも贅沢言わなければ食べられるんですけど」
「野イチゴか」
「ええ。一人の頃摘んだ野イチゴが、食べ切れずにまだあります」
「そういう事なんだな。さっきも言ったが漆が原の真似を完全にやろうとすると狂うかもしれないから、ほどほどでいいから真似してみろ」
一年生はみんな、野イチゴを泣くほど食べるようになった。
笑い事ではなく、適性値の上昇が確認された。
実力を見せてしまったので、女の子達が発情してハニトラを仕掛けて来るようになったが、つかさちゃんが鈴腕輪を鳴らして鎮める。
三年生は全員フュージョンしたので卒業資格を満たした。
吉田さんに入れられるだけのスキルを入れて、6キロエリアに慣れさせた。
自分で忘れていたけど、僕の誕生日もあった。
流石にまだ転職は出来ないと思うので、試さない。
霊楽師と舞祈禱師のバフ、デバフは重ね掛けが出来る。
僕等は7キロで通用する戦力になった。
八王子の7キロ左は遺跡型廃墟で、通称は古戦場。
崩れた壁が点在する平原に、スケルトンが出て来る。
指が長い爪になった人型と、牙の長い四つ足の2種類が主力。
古戦場をさまよう死体と、それを食う野犬か。
どちらも群れで、際限なく寄って来る。
しかし、 調伏の舞と制圧の調べの二重デバフで二本足は這いつくばり、四つ足は俯せる。
残り8人で頭蓋骨を砕くだけのお仕事です。
無限湧きエリアを抜けると、熊スケルトンと宝の山エリアに入る。
最初の山で、鼻まで覆う大き目の銀仮面が出た。
一番霊力の高い吉田さんが、性能を見る。
「精神攻撃も少し防ぐわ。霊力低いのは?」
「あーしかも」
ケイコ姉で確定。次はヨシエちゃん。
銀塊の次に、D字型の銀の何かが二つ揃いで出た。
軽いダンベルか、棘のない鉄拳か。ダンベルはないよな。
「やった!
吉田さんが両手に持って鳴らして見せる。
鈴腕輪は舞祈禱師の伴奏用で、楽師用の楽器はこれなのだそうだ。
接近戦になったら、銀製の武器としても使える。
寄って来た熊の骨に向かって鳴らすと、伏せて立てなくなった。
奪取をすると、攻撃全てが3%増しになる強撃が盗れた。
強打や強斬などにも上乗せ出来る。
鈴足輪も出る。つかさちゃんが着けて踊ると、踊りだけで骨熊が伏せをする。
一日で全員分の強撃が出た。
レベルがあるので足せるが5まで。1上がるごとに1%効果が上がる。
「これ、いいわいいわで奥に行くと、帰りが無限湧きエリアと言う罠だったんだろうな」
「圧倒的ではないか我が軍は」
「霊楽師と霊歌師でもいけるんですか」
吉田さんに聞いた。
「効果は1.5倍くらい。これ程じゃない。舞祈祷師と三職揃うと、どうなんだろう」
「軍はとっくにやってるでしょうね。なんでその辺の情報が出て来ないんだろう」
「都合の悪い事でもなさそうだよな」
帰って監視所で聞いたら、霊歌師と舞祈祷師は合わせてもさほどの効果はなく、三人でも霊楽師と舞祈禱師の時より落ちるのだそうだ。
しかも戦闘が好きな者は少なく、芸で稼げるので軍に協力しない。
入れてもメインダンジョンに入りたがらないそうだ。
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