第020話 あゝ、懐かしき青春のゲーム

「さて、早速開けるか」


 化狸を見送った後、光聖は本殿の居間に戻って段ボールを開封した。


「うぉおお……懐かしい……」


 中に入っている商品の梱包を外していくと、思わず声が漏れる。


「スーフォミ、サンテンドー64、ゲームボーズカラー……」


 昨日ショッピングサイトで購入したもの。


 それは、かつて自分が幼い頃に遊んだゲームのハードと、いくつかの有名タイトルのゲームソフトの数々だ。


 高かったが、懐かしくなってどうしても欲しくなってしまった。


 光聖はまさにゲーム機の過渡期に生まれた世代で、転移するまでに、ゲームボーズ、スーパーフォミコン、ゲームボーズカラー、プロステーション、ギガドライブ、サンテンドー64、ソガサターン、ゲームキューボ、ゲームボーズアドバンス、プロステーション2、EXboxなど様々な家庭用ゲーム機が生み出されている。


 その中でもスーフォミ、サンテンドー64、ゲームボーズカラー、プロステーションは、光聖がよく遊んだと言える機体たちだ。


 それこそ、光聖の青春時代を象徴するゲーム機だと言える。


 ただ、プロステーションだけはたまたま在庫がなくて買えなかった。


「ストモン……めちゃくちゃ面白かったなぁ……」


 段ボールの中から片手で持てるハードウェアを取り出して目を細める。


 それはゲームボーズと呼ばれる携帯型ゲーム機で、当時とあるゲームソフトが一世を風靡していた。


 それがストックモンスター、通称ストモンだ。


 ストモンはゲームボーズ用のゲームで、ストックモンスターと呼ばれる不可思議な生物が溢れる世界を舞台に、ストモンを操るストモンテイマーになる主人公に成り代わって冒険していくRPGだ。


 ゲームには百種類を超えるストモンが居て、捕まえることで自分のモンスターとして使役することできるようになる。


 六匹までストモンボールに入れて連れて歩くことができ、自分の好みのモンスターでパーティを組んで、ストモンや、別のストモンテイマーを倒して物語を進めていく。


 主に、全種類のストモンを集めてストモン図鑑を完成させることと、ストモンリーグと呼ばれる大会で勝利することが目標になる。


 色が違うゲームソフトが発売され、それぞれ色のソフトでしか出現しないストモンがいて、両方のソフトを購入した人も少なくない。


 また、ゲームボーズ同士をつなぐケーブルを購入することで、お互いのストモンを好感したり、戦わせることができる。


『ふっふっふっ。俺の考えた最強のパーティが出来上がったぜ』

『甘いな。今日の俺のパーティは一味違う。勝たせてもらう』


 何人かで集まってお互いが考えた最強のストモンパーティで戦いを挑み、切磋琢磨したものだ。


 そこには、涙なくして語れない熱いドラマがあった。


 当時、そのようなゲームはなく、アニメ化などの影響もあって人気が爆発し、続編が多数発売され続けている。


 そして転移した当時、続編もアニメも続いていた。


「スーフォミと言えば、スーパーモリオ、ドランゴクエスト、クローストリガー、ファーストファンタジー、FATHER2……本当に名作が沢山あるよな……」


 次に取り出したのは、機体の中心に長方形の穴が開いた、白と灰色がメインのゲーム機、スーフォミだ。


 光聖が小学生の頃は、簡単に持ち歩けるような携帯電話もスマホもなかったので、学校では週刊の漫画雑誌やゲームの話題で盛り上がることが多かった。


 毎日どこまでプレイしたかとか、あのキャラクターが好きだとか、あの話が良かったとか、ヒロインはどっちを選んだとか、友人たちとよく話した気がする。


 割と近くに住んでいた友人とはゲームの貸し借りもしたものだ。


『データが全部消えてる!!』

『ごめん、落っことしたら消えちゃった!!』

『くっそっ!! ぜってぇ許さねぇ!!』


 その頃のゲームは、ソフトにデータを記録するタイプで、ちょっとした衝撃でセーブしたデータが消えてしまうことがままあった。


 それが喧嘩の原因になったことも少なくない。


「大乱闘スラッシュブラザーズ、トライデンアイ 006 、ソーダの伝説 鳩のオカリナも懐かしい……」


 最後に取り出したのは、真っ黒な機体のサンテンドー64。


 四つのゲームコントローラーを付けることができ、四人まで同時に遊ぶことができる家庭用ゲーム機だ。


 一人用のゲームも勿論あったが、どちらかというと、複数人で遊ぶゲームの方が人気だった覚えがある。


 特に大乱闘スラッシュブラザーズ――スラブラは、凄まじい人気を誇っていた。


 スラブラは、様々なゲームの人気キャラクターが一堂に会し、好きなキャラクターを使って、様々なステージで対戦できるゲームで、相手をステージ外に落としたり、吹っ飛ばしたりして、その数を競う。


『お前、俺だけ狙うなんて卑怯だぞ!!』

『うるせぇ、弱い奴を狙うのは常識だろ!!』


 当時は実際に集まってプレイしていたため、その勝敗によってリアルスラブラになることもしばしばだった。


 どれもこれも懐かしい思い出ばかりだ。


 まだプレイもしていないのに、本体とゲームソフトを見るだけで胸がいっぱいになってしまった。


 まずは時間のかからない対戦型をプレイしてみる。


「あぁ~、これだよ、これ!!」


 懐かしさはさらに高まる。


「やっぱ……物足りないな……」


 しかし、それと同時に一人で対戦ゲームをするのは味気なさと物寂しさを感じた。


「皆は元気だろうか……」


 幼少期の友人たちに思いを馳せる。


 高校生まで一緒だった人間は少ないが、今どんな風に生きているのか気になった。


 特に、どの思い出の中にも必ずと言っていいほど登場する、小さい頃からずっとつるんでいた親友。高校時代の彼の笑顔が鮮明に脳裏に思い浮かぶ。


 当時の住所も思い出せないし、今の住所も連絡先も分からない。


 連絡を取りようがないが、彼が今も幸せに生きていることを切に願うばかりだ。


「……さて、片っ端から名作をプレイしていくか」


 気を取り直してRPGをプレイし始める。











 気づけば……三徹していた。

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