第027話 億千万!!億千万!!
「静音、光聖様に何かしてもらうなんておこがましいにもほどがあるぞ?」
「何言ってるの? 現人神様である光聖様がやりたいって言っているのを止めさせる方がおこがましいでしょ」
「うーむ、それもそうか」
静音に反論されて言い負かされる辻堂。
基本的には有能な男であるが、信仰心か可愛いモノが絡むと、少しポンコツになってしまうところがあるらしい。
「静音ちゃんが考えている仕事って何?」
考え込む辻堂の代わりに伽羅が静音に尋ねた。
「お守り作りをしてもらうのはどうかなと」
「そんなの欲しい人なんているのか?」
自分なんかが作った物を欲しがる人がいるとは思えない。それも魔法を付与したものではない、ただのお守りは特に。
「需要は大きいと思います」
「そうなのか。それなら作ってみようかな」
しかし、辻堂が断言するということは需要はあるということだ。
光聖は異世界でもお守りやお札などを作って売っていたことがある。裁縫スキルと呪文を書くスキルには一家言あるつもりだ。
まさかその技術が役立つとは思わなかったが、仕事になるのならやっていて良かった。
「それでは、明日は一緒に作ってみましょう」
「分かったよ」
翌日からお守りづくりに取り掛かることになった。
「まずはお守りの作り方をお教えしますね」
「分かった」
翌日、社務所の一室で辻堂と伽羅、そして学校が休みの静音の三人と共にお守りを作り始めた。
作り方を教えてもらいながら鮮やかな模様の布を縫っていく。
「めちゃくちゃ早くて上手いですね」
「異世界でよく作ってたからな」
前に座る静音が光聖が縫う姿を見て感心するように呟いた。
『この剣、凄くいいだろう?』
『服はもっと必要でしょ』
『肉はいくらあってもいいよな!!』
異世界では、魔王討伐の旅の途中、仲間たちのおかげで何度も路銀に困ったことがある。そういう時はよく光聖が夜なべしてお守りや護符を作って売ったものだ。
「異世界?」
「あれ、言ってないのか?」
光聖の話を聞いて首を傾げる静音を見て、辻堂に顔を向けた。
すでに話しているものと思っていたが、どうやら何も話していなかったようだ。
「はい。信じがたい話なので、特に言わなくても問題ないかと思いまして」
「そうか。実は俺が二十年前に行方不明になったのは異世界に行ってたからなんだ」
光聖はお守りを作りながら異世界に行って帰ってくるまでの経緯を語った。
「あぁ、道理でコスプレみたいな恰好で現れたわけですね」
静音は初めて光聖と会った日を思い出して納得した表情になる。
「あの時は服にまで気が回らなかったんだよ……」
今思えば、当時の自分は本当におかしな格好をしていたな、と恥ずかしい気持ちになった。
チマチマとお守り袋を縫い、中に
これでお守りの完成だ。
ただ、作れたのは三時間でたったの十個。
「これじゃあ、小遣いにもならないかも……」
量産できなかったので、報酬は期待していなかったが、その心配は杞憂だった。
「えっと……これなら一個一千万円でも欲しい人がいると思います」
お守りを見た辻堂がごくりと生唾を飲む。
「い、一千万円!?」
逆に光聖はあまりに高額な値段に目が飛び出しそうになった。
「え、ええ。少ないでしょうか?」
辻堂は申し訳なさげに尋ねる。
「いやいや、多すぎるって。たかがお守り一つでそんなに受け取れないよ」
確かにそれなりに手間は掛かっているが、一個たかだか二十分弱。それだけの手間で一千万円なんて大金をもらうなんてできそうにない。
しかも十個なら一億円だ。どう考えてもヤバすぎる。どれだけ高くてもせいぜい一個千円くらいが関の山だろう。
「しかし、このお守りには非常に強い力が宿っています。このお守りにはそれだけの価値があるんです」
「うーん」
説明を受けたが、光聖は特に力を込めたつもりはないので、自分にはどうしてもそこまでの価値があるとは思えなかった。
悩む光聖を見て辻堂が口を開く。
「それでは、私も自分の目で判断しただけなので、本部で価値を鑑定させていただく、というのはどうでしょうか?」
「適正価格になるのなら全然かまわないよ」
それならもっと低い金額に落ち着くだろう。
光聖は納得して提案を受け入れた。
「承知しました。一度持ち帰って改めてご報告に参ります」
「分かった。よろしく」
「かしこまりました」
光聖の仕事は一旦保留となり、お守りを受け取った三人は神社を後にした。
◆ ◆ ◆
静音を家に送り届け、辻堂は伽羅と二人で車を走らせていた。
「辻堂さん、そのお守り、かなり凄いモノじゃないですか?」
伽羅は後部座席で大切に布に包み込まれているお守りを振り返って尋ねる。
「ああ。ほとんどの呪詛は跳ね返すだろうし、どんな攻撃も防いでくれるだろうな」
持っているだけであらゆる不幸から身を守ることができる神聖な力が放出されていた。
誰かに持たせておけば、いざ自分の手が届かないところに出かけて何かあったとしても、その人物は必ず無事に帰ってきてくれる、そう思わせるだけの力が込められている。
「あんな素材でこれ程のお守りを作れるとはな」
「そうですね。びっくりしました」
しかも、霊験あらたかな最高級の素材で作られたお守りならまだしも、安価な素材で作られた光聖のお守りは、最高級のお守りさえ敵わない人智を超えた代物になっている。
それだけ光聖の神気は強いということだ。
「安易に作って誰かに渡さないように、しっかり言い含めておかないとな」
「本当ですね」
それほどのお守りを売り出したら、様々な組織から目をつけられることになる。
光聖には別の仕事をしてもらった方がいいかもしれない。
考えを共有した二人は、そのまま本部へと帰還を果たした。
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