トリどころ

鳥尾巻

思ってたんと違うと言われてもだな

【取り所】

取り立てて見るべき点。取り用うべき点。長所。取り柄。(広辞苑より)


 人に聞かれて実家の子育ての話をすると、厳しいご家庭で育ったのですね、と言われることが多いのだが、実際は放任主義のゆるい家庭だった。


◎一部の例外を除きテレビ・ゲーム・漫画禁止

◎お菓子禁止 (手作りは可)

◎お小遣いなし (必要な物は都度申請)

◎自分の事は自分で


 両親は共働きで、姉私弟の三兄弟。小学一年生の頃から家事をして、中学生の頃から新聞配達などのアルバイトをしていた。

 上記はあくまで基本方針なので、いくらでも抜け道はあるし、「自分の事は自分で」とはいえ、家族は互いに足りない所や不得手な所を補い合えばいいのだ。

 父親は人脈を作るのが得意、母親は実務が得意、姉は物事を展開・発展させていくのが得意、私は手先を使うことと人の世話をするのが得意、弟は空気を読んで臨機応変に動くのが得意。

「人をよく観察して特性を見つけること」と父が言っていた。相手が子供であってもそれは同じである。


 もちろん悪いことをしたら叱られたが、それ以外は何も強制されたことはない。家事をやるのは自分が快適に過ごしたいだけであるし、バイトをしていたのは、欲しいものを自分で買いたかっただけである。

 母親がアレルギー体質で、健康食品オタクということもあり、菓子は買って貰えなかったものの、家の食材を使って作るのは自由だった。食材を買うお金は必要経費なので使い放題。(ちょっと着服したり・笑)

 分からなければ調べる、なければ作る、欲しければ稼ぐ、互いに補い合う、というシンプルな理念で実家は回っていた。


 という訳で「ご苦労されたのですね」「家族の犠牲になっていた」「ネグレクト?」「アダルトチルドレン?」などと言われても、あまりピンとこない。

 人脈を作る途中で父がちょっとオイタをしたり、実務を取り仕切る母にボコられたりした話などは些末なことなのだ。親には親の事情があるので私には関係ない。


 しかし、あえて犠牲になったものを挙げるとすれば、テレビ禁止だったせいで、同年代の友達と全く話が合わなかったことだろうか。笑

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

トリどころ 鳥尾巻 @toriokan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説