かがり針
菫野
かがり針
又三郎りんねりんねと鳴りやまぬ風鈴連れていづこへか行く
かがり針だつた記憶を物語るハンス・クリスチャン・アンデルセンは
一万年昔の絵画ながめをり 聖家族とふ古代モチーフ
カシオペヤ座矮小銀河方面の発車ベル一度だけ高く鳴る
あの月はトロンプルイユ翻る風速十五メートルの空
この度は人類として生まれたるわたくしの手に運命線なし
真夜中に置かれた金魚鉢あはくひかることばの死後を見てゐる
うすくうすくひかり切るたび思ひ出す米津玄師の Lemon のことを
友の胸に揺れゐるフローライトはも脈搏つものの素粒子含む
うつくしい嘘をつめたく保管するアテナインクの青で書くべし
かがり針 菫野 @ayagonmail
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