第5話 お風呂場戦争

(ゴム手袋についた突起物で洗う音)


「ふぅー、でもどうして獣人族が使える生活用品を作っているんですか?

 人口としてはヒューマンのほうが多いですし、上級貴族の多いエルフのために作れば大儲けじゃないですか」


「きっとご主人様の物づくりの才能と知識があれば、新しいものを生み出すことなんて簡単そうですし。

 それに異世界人と名乗れば、すぐに取引先や王国はのどから手が出るほど欲しがると思います」


「――お金持ちになりたいとかそういうことを考えたことがない? そ、そんなこと言ってるヒューマン初めて見ました……」


「ヒューマンは何よりもお金が好きで、交渉などに長けている非常に賢い種族。基本的に義理とか人情で動く生き物じゃありません」


「――理由は君のような可愛い女の子にもっと可愛くなって、自分に自信と誇りを持ってほしいから?

 な、何を……いきなり言ってるんですか! そんなこと……」


「ご主人様は私たち獣人のことをそのように思ってくれるのですね。誰からも人として見てくれない、ただの戦闘兵士である私たちのことをそんな風に……」


「私、私ご主人様のこと……」


(間違えて冷たい水をシャワーでかけてしまう)


「ひゃあっ! ご・しゅ・じ・ん・さ・まぁ~! 今のわざとですよね!」


「――わざとじゃないって言われても信用できません!」


「そんな悪いご主人様には、こうしてやります!」


(置かれてた水鉄砲を発射する)


「――やめてと言われても絶対にやめませんからね!」


(二人の笑い声が浴室に響く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る