第6話 眠れぬ少女

(スイッチを押して電気を消す)


「ご、ご主人様。お願いがあるんですけど。

 もし、もしですよ……真っ暗が怖いと言ったら、電気をつけてくれますか?」


(スイッチを押して電気をつける)


「そ、即決……。私の好感度を上げても良いことなんてありませんよ?」


「――なるほど、今日は暗闇の中で私を襲おうと思ったけど、奴隷なら気を遣わなくてもいいかって心変わりしたんですね」


「私の身体を隅々まで……

 すみません。ご主人様がそんなことするとは思ってませんよ」


「なんていうか、気を紛らわせるために早口で捲し立ててしまいました」


(少女の頭を撫でる)


「な、何ですか。子供扱いしないでください。それともペット扱いですか?」


「——そんなつもりはない、そうですよね。ご主人様は私を一人のお・ん・な・の・ことして見てますもんね?」(ジト目)


(彼女を置いて、ドアを開ける)


「ご、ごめんなさい! 謝るので、ここに、いてくれませんか?」


「——ありがとうございます」


(少女に布団をかける)


「……おかしい、ですよね。暗いところが怖いなんて。

 奴隷として囚われていたときはもちろん真っ暗ですし、もともと獣人は外で寝泊まりするんですから」


「それでも、なぜか今はとっても怖いんです。

 ……ご主人様が、いなくなってしまうんじゃないかって」


「捨てられてるとき、飽きられるときは一瞬ですから。

 そういう経験は何度もしてきました」


「私って、安いですから」


(黙って抱きしめる)


「――ふふっ、私が覚えている中でご主人様が初めてです。

 こんなにも暖かく抱きしめてくれたのは」


「……両親がそばにいたら、こんな風に抱きしめてくれたのかな」


「——やっぱり電気を消す? ど、どうしてもですか?」


「睡眠の質を高めるには暗ければ暗いほどいい……わ、分かりました」


(電気のスイッチを消す)


「ご、ご主人様ぁ……絶対に離れないって、約束してくれますか?」(涙目)


(頭をそっとなでる)


「優しく脱がして、くださいね?」


「……」


(ドアに向かう足音)


「出て行こうとしないでー!」

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