二
美織のお母さんから電話がかかってきたのは、あの事件から十日経って、一時のネットの盛り上がりが徐々に落ち着いてきた頃だった。
「もしもし、はじめまして。田崎詩織さんですか?私、美織の母です。」
会社にいるときに急にそんな電話がかかってきたものだから気が動転してしまって、気づいたらなぜか早退していた。なんて言って会社を出たのかも覚えていない。
美織のお母さん、
それを聞いた時、私は自分が美織の友人だと認識されていることに驚いた。彼女と私では生きていた世界が違うから常に一緒にいることは無かったし、それにお互い別々の大学に行ってからは全くと言っていいほど会っていない。実際のところ、友人と呼べるかも怪しい仲だ。ただ数回、二人で出かけただけ。それだけのことである。
麻子さんがなぜ私の存在を知っているのかも謎だったが、どうやら美織のスマホに入っている連絡先の中に私の名前があったらしい。
もしよければ、と最後に言って、麻子さんは電話を切った。
なんだか急いでいる様子だった。私以外にも、美織の友人と思われる人たちに手当たり次第電話をかけているのかもしれない。そう考えると、私なんかが行かなくていいと思ったが、私も美織のことを聞きたかったので行ってみようと思った。
会社に明日は休むと伝えた。
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