第18話

会長さんと李人くんは、しばらく多目的室や、その周辺を調査していた。


その間、優瓜くんと蜜柑くんにいろいろ話してもらった。


「俺は忍びの家系で、まあ、親しみやすくて情報が集めやすいパン屋として働いてるよ。でも、家族全員忍び。訓練は幼い頃からやってて、まあ俺らは霊力もある忍びで…だから、祓い屋に近い感じかな。」


優瓜くんは、そう説明してくれた。



「僕もそんな感じ!でも、もう両親はいなくて……お兄ちゃんと2人ぐらしなんだ!お兄ちゃんは学校の先生として情報集めとかしてるんだよぉ〜」



蜜柑くんも教えてくれた。


それぞれ、家のこととか、あるんだろうな…うちみたいに。


みんな頑張って生きてるんだ…私もがんばろっ!



「原因わかった気がするー」


会長さんが戻ってきた。



「え、なんだったぁ?」


蜜柑くんは興味津々だ。



「催眠系の物の怪。この学園全員、幻惑げんわくかけられてる。」


李人くんが淡々と答える。



「幻惑…?」


ってなんだ?


「催眠術みたいなやつかぁ」


優瓜くんが納得したように言う。


催眠術みたいなものかぁ…どうすれば解けるのかな…?



「物の怪って、どう倒すんですか?それに、どこにいるんですか?」


会長さんにきく。


「うーんと、今は……」



会長さんは少しだけ考えて、私に言った。


「小野寺さんならわかるんじゃない?」


「私ですか?」


「うん。僕より空間認識能力は高いはずだからね。」


「……探してみます。」



私は集中してあたりの気配を探った。


この能力で物の怪を探すなんて、初めてかも…。



んっ?



あっ…



「飛んで!!!!」



私はみんなにそう叫んだ。



「ぅえっっ?」


蜜柑くんたちは動揺しながらも上に飛んだ。



すると、床から物の怪がでてきた。


それも、すごい大型の蜘蛛。タランチュラ?って言うんだっけ。



みんな運動神経が良いから、捕まらずに済んだらしい。さすがだ。



「虫じゃん!無理無理無理無理無理!」


優瓜くんは、どうやら虫が苦手らしく、悲鳴に近い叫びをあげていた。


そこで、蜜柑くんが…


「優瓜くん〜!“幻惑”!」


「あれ、虫じゃないじゃん」


優瓜くんはほっとしたのか、落ち着いた。


あれ?幻惑って…


「あの物の怪の能力…?」


「そうだねー、蜜柑くんの能力は“複製”。相手の能力を複製コピーして、使えるんだよ〜。まあ、精度は多少落ちるけど…」



「なんか猫が見えるわ」


「そうだよ、あれは猫ちゃんだよぉ〜」



「ね?それでもすごい精度でしょ?」



「は、はぁ……にしても、すごいですね」



優瓜くんには、でかい蜘蛛が猫にみえるらしい。



あの蜘蛛、正直めっちゃね、気持ち悪い。蜘蛛には申し訳ないけど、一生懸命生きてるんだろうけど、ちょっと無理かなぁ…ごめんね。



……私にも幻惑かけてくれないかなあ〜、とちょっと思った。







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