第15話
幼い記憶の中の男の子。名前が出てこない。
ほんとに誰だっけ?萄馬は、なんか違う気がするし……。なんか、忘れたくなかったのに、忘れさせられた感じがする……?
「小野寺さん?どうかした?」
会長さんの声で、一気に現実に戻ってきた。
「え、あ、すいません、ちょっといろいろ考えてて」
「そっかぁ。まあ、普通じゃないって苦労するよねー…。僕は、祓い屋気に入ってるけど…」
忘れてたけど、祓い屋とか能力とかの話してたんだった。
「まあ、今となっては小野寺家と久遠家の交流も少ないらしいからね。小野寺さん家になんか家系図とかあったらいろいろ繋がってくるかもね」
へー。探してみようかなぁ…。
じゃなくて。
会長さんにはいろいろ聞きたいことがあるんだ…。
まず…
「質問いいですか!!あの、いつから私の能力知ってたんですか!?」
「能力?人の心が読めるのと、空間認識能力のこと?」
ほら、わかってるじゃん…。
「あれはねぇ、入学式のときだね、マイクが壊れた時。僕は祓い屋の家系だからいろんな訓練を受けてて、僕も空間認識能力が結構高くてさ。すぐに空気の揺れとか感じたんだけど、もう1人だけ気づいている人がいた。」
「それが桃ちゃんかぁ〜」
蜜柑くんが––––いつ、どこから持ってきたのかわからないけど––––メロンパンをもぐもぐと食べながら言った。
「マイクの調子が悪いなって思った時、1人だけ、僕の方を見てさ。まるで、心の声を聞いたかのように。」
「あ~…なるほどです。確信を持つの早いですね…」
「まあ杏くんは自信家だからねぇ…あ、優瓜くん、メロンパンもう1個ない?」
「今日はもうおしまーい」
「えーーー…けち~」
蜜柑くんが食べていたメロンパンは、優瓜くんが持ってきたやつらしい…。
「それって、購買で買ったの?」
もう完全に敬語がめんどくさくなっていた私は、もうタメ口で話すことにした。
「そう思うでしょ?でも実は…」
蜜柑くんはいたずらっぽく笑って、こう続けた。
「優瓜くんがつくったんだよっ」
「えっっ!」
あのチャラそうな優瓜くんが…!?
「意外でしょ?俺、こう見えて料理上手なんだよね」
「家がパン屋さんだもんねー」
会長さんも、「優瓜くんのパンおいしいんだよね~」と言っている。
「まあ、パン屋とかやってれば、ばれないしねー」
ばれない?
優瓜くんが言ったことが気になったので、訊いてみた。
「ばれないって…何が?」
「え?杏、桃ちゃんに俺らのこと言ってないの?」
「いやぁ、いくら僕でも他人の個人情報を漏らすようなことはしないよ~」
会長がニコニコしながら言ったけど、蜜柑くんは「ほんとかなぁ…」と小さな声で呟いていた。
「桃ちゃんは信頼できるよな。だから言うね」
優瓜くんが小さい声で続けた。
「俺ら…忍びの家系なんだよね…」
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