第10話

「桃っっっ!!!昨日はどしたのっ???先帰ってていいよ、なんて!!」



結南が登校してきて、昨日はどうしたのか、とかを訊かれた。



「あはは、なんでもないよー」


「棒読みすぎじゃない?まあ、いっか…」



なんとかごまかせた(絶対誤魔化せていないやろ)。




それにしても…さっきのやつ。なんだったんだろ。


萄馬と生徒会長さんってそもそもいつ会ったんだ?まだ高等部に入学して数日しか経ってないけど…。



まあ–––––。



中等部とかで会ってたのかな?





––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––


【萄馬side】––朝、別れた後





 



会長と桃ちゃんは昔会っている。



これは紛れもない事実だ。




だけど。







「桃ちゃん、会長のことまったく覚えてないんですね」


「まあ…めっちゃ昔だからね。」



会長は、桃ちゃんのことをバッチリ覚えてるのに、桃ちゃんは忘れてる。なぜかそれが嬉しくて、自然と笑みが溢れる。



「かわいそうですね〜」


「うるさいなぁ。別にいいよ。それにしても、なんか2人でいちゃついてたのに邪魔しちゃってごめんねー」


いつも手伝ってくれてありがとねー、と爽やかな笑顔で会長は言う。この笑顔で何人の女子生徒が犠牲になったことやら。


「別に、桃ちゃんが平和に暮らせるならなんでも手伝いますよ。あと、別にいちゃついてないです。会長こそ、昨日桃ちゃんと話したらしいじゃないですか」



「嫉妬しないでよ〜、僕は生徒の安全を守るのが仕事なんだから」



「別に、嫉妬なら……」



–––––会長の方がしてるじゃないですか。



「なにっ?」


「ふふっ、なんでもないですよ?」



会長の無自覚な嫉妬が面白かったから、言わないでおいた。




            【萄馬side】 終

–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––



「あーあ…次は数学かぁぁ」


結南が残念そうに呟く。



「別に数学楽しいじゃん」


「は?意味わからん。桃はいいよねぇ、頭よくてさー」


「結南も数学のぞけば成績いいじゃん?」



嬉しいことに、私は学年で1番成績がいいらしい。


2番目が萄馬で…結南は数学のせいで5番目くらいだが、この学園で5番目なんて十分だと思う。



「いつか桃も泣かせるくらい頭よくなってやる〜!」



それが結南の今の目標らしい。



「じゃあ、数学の教科書取ってくるわ〜」


結南はそう言って教室を出た。


※うちの学校は外のロッカーに教科書たちを入れている。




授業が始まるまで席に座ってぼーっとする。


ぼーっとしながら、周りのクラスメイトの心の声をきく。



《数学やだなぁ…》

《帰ったらゲームしよっと》

《どうしてこの世界は存在してるんだ…ッ!》



数学に落ち込む人、意味不明な思考な人。

いろんな人がいるなぁと思っていたら。




《…………》



急に何もきこえなくなった。




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