第9話

「あ、そういえば」



萄馬が何かを思い出したように言った。



「桃ちゃんって、違うクラスの男子に告られたの?」


「え」



日誌を書く手が止まる。



なんで知ってるんだこの子…!?



「なんで知ってるの!!??」


「あー、やっぱり。えっとね、昨日の昼頃なんか多分その男子が俺と廊下ですれ違って。その時、『お前のクラスの女子に告るからな。可愛いから俺に似合うだろ?』とかわけのわからないこと言い出して…桃ちゃんのことかなって」


「うわぁ、可愛いとか…でも、なんで私だと思ったの?結南とかじゃなくて?」


「あー…でも俺は桃ちゃんが…」



ガララッ



急に教室のドアが開いた。

誰か来たかな〜って思ってドアの方を見ると。



「えぇ…?」






なんでか生徒会長がいた。



「おはよう、小野寺さん。黒川くん」



「おはようございます、会長」


「え、あ、おはようございます。なんでここにいるんですか」



私は早口に挨拶してしまった。



「いやー、ホラ、昨日大丈夫だったかな〜って」


「昨日?」



私じゃなくて萄馬が反応する。



ああ、昨日のことかー、と呑気に思っている私とは正反対だった。



「昨日のことって…他クラスの男子生徒が桃ちゃんに告白したことですか?なんで会長が知ってるんですか?」


「黒川くん、落ち着きなよ〜。」



「ところで、お二人は知り合いなんですか?」



絶対この雰囲気じゃないなぁと思いつつも気になってたことを質問する。



なんかやけに仲がいい?感じだったから。



「ああー、黒川くんは生徒会じゃないけど、よく生徒会の仕事を手伝ってくれてるんだよね」



「こき使ってるの間違いですよね」


「ごめんって」




なるほどねー。どうりで仲が良い(というのかわからんけど)と思った。


「それで、会長。昨日のことってなんですか」


じりじりと詰め寄る萄馬に圧倒されて、こまったなぁー、という顔をして生徒会長さんがこっちを見てきた。



「なんでこっち見るんですか」



「小野寺さん助けて〜」



「はぁ…。萄馬、私が言うから」



そして、萄馬に昨日あったことを話した。


「ええっっっ!?桃ちゃん、大丈夫だったの…?」



「僕が助けてあげたんだよねぇ、小野寺さん」



「は、はい。ありがとうございました」



ずっとニコニコしてる生徒会長さんが何を考えてるのかわからないけど、助かったことに変わりはない。



「ごめんね、俺が止めておけばよかった…」


「えっ、萄馬は悪くないよ!!」



萄馬が申し訳なさそうな顔をするから、私の方が申し訳なくなった。



シーン……



謎の沈黙が一瞬訪れたが、生徒会長さんがすぐに破った。


「あ、黒川くん、今日も手伝ってね〜」



「またですか。ハァ……いいですけど」




ってなんだろ??


よくわからないけど、手伝ってあげようとしてる萄馬はほんっっっとうにいい子だ…。


「じゃあね、桃ちゃん。ちょっと行ってくるね」


そう言って萄馬は生徒会長さんと一緒に教室を出た。どこに行くの?とは訊けなかったなぁ…。







「ふーん……仲良いね、2人」


「まあ…幼馴染なんで」


「……………へぇ、いいね〜」


「…なんですか、その間は」


「別にっ?」




歩きながら2人がこんな会話をしてたことは私は知らない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る