第8話 優しい人

「流星。これ、できる?」


白宮は少しずつ僕に仕事を教えてくれた。


「……わかんないです」

「この間教えたじゃん」

「……ノートには、、ありました!」

「それ見ながらやってごらん?わかんなかったらまた呼んで。」

「はい!」


白宮は厳しくもあるが根底は凄く優しくて僕の事を一番理解してくれていた。


細かい作業が溜まってパニックになりかけていると、必ず声をかけてくれる。


「流星。まずどれから先にやらなきゃいけない?付箋でもいいから順番つけてみて。そこからこなせばいいから。もし分からなかったら聞いて。」

「はい。」


いつもどんな時も白宮は僕を見てくれていた。


仕事が終わると一緒に帰って彼女を送り届けていた。



そんなある日、白宮といる時にスマホが鳴った。


僕が画面を見て放置していると、


「出ないの?」と。

「いい。大晴だから。」

「…元カレ?」

「そう。」

「出なくていいの?」

「今はもう出る理由が無い。」


本当は怖かった。

自分自身がまた大晴に戻ってしまいそうで。


『男が』というよりも、『大晴が』よかったから。


―――――――――帰宅後。22時。


『なに?さっきの』


僕は折り返した。


『流星、やりなおさないか?』

『いやだ。』

『どうして?今相手いるのか?』

『うん。』


『本当にそれでいいのか?』


『……うるさい!お前に何がわかる!』



僕はそう叫んで電話を切った。



――――――次の日、体調不良と言って仕事を休んだ。

誰からの連絡も取らなかった。


ずっと悩んでいた。


僕は…心の底から大晴がすきだったから。

でも、白宮を捨てる理由はない。



その日の夜、家のチャイムが鳴って勝手に誰かが入ってきた。


「どういう事?なんで電話もLINEも出ないし返して来ないの?」と言っては見たものの、僕が布団の中から出てこないのを見て、僕の顔の方に来た。


布団を被って出てこない僕に、


「なにがあったの。」と優しく聞く。


僕は少しだけ布団から顔を出して、


「梨沙、しよ。」と言うと、


白宮は僕の頭を撫でた。


「あの元彼か。言っとくけど今あんたはもうあたしのものだからね?誰にも渡さないから。」


と言われ、僕が起き上がると梨沙が僕の上に乗って抱きしめた。


「あたしとする?」

「抱かれたい」

「わかってる」

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