第4話 ……は?
昼休み。 俺は自作の弁当を食べながらスマホにダウンロードしているソシャゲを楽しんでいた。
弁当のおかずは 卵焼き・ウィンナー・塩鮭・ほうれん草のお浸し・唐揚げ。 卵焼き以外は全て冷凍食品だけどね。 冷凍食品だけど、自炊には変わりないから両親からの一人暮らしの条件は満たしていると思うからセーフだろう。
ちなみにソシャゲはRPGで、設定されているスタミナが無くなる迄探索を行い、LEVELを上げて目的を達成するタイプのゲームだ。 スタミナは時間が経過すると回復する。
……しかし、我ながら自分で作った弁当は不味いな。卵焼きには卵の殻が少々混じっていてジャリジャリするし、味付けを間違えてしまい少々甘い。 で、やっぱり冷凍食品は冷凍食品だな。いくら最近の冷凍食品が美味しいとは言え、母親が作ったおかずには味が劣る。 極めつけはご飯だ。どうやら水加減を間違えてしまったみたいで、お米に芯が残ってしまい固い。でも食べれない程では無い。 何回か練習すれば人並みな弁当が作れる様になるだろうな。
そんな事を考えながら弁当を食べつつゲームをしていると
「う~ん。どうしても点数が取れません。どうやったら高得点が取れる様になるのでしょうか? 黒ネズミさんのスキルもちゃんと使えている筈ですのに。やっぱり自分のキャラクターを黄色の犬さんに代えた方が良いのでしょうか?」
と声が隣の席から聞こえてきた。
声がした方が気になってそちらに視線を向けると、そこには自分のスマホを凝視しながら思案顔をしている土方さんの姿が。 土方さんは俺が教えたスマホのパズルゲームをしていた。 今までゲームをした事が無い土方さんは、操作に慣れずに四苦八苦しているみたいだ。
ふとスマホの画面から視線を外した土方さんが偶然だろうけど俺の方に顔を向けた。 で、土方さんと俺は目が合ってしまう。
か、勘違いされないだろうな? 俺は別に土方さんを凝視していた訳じゃないからな? 土方さんの声が聞こえてきて気になったから土方さんの方を見ただけだからな。 " わっ、クソ陰キャが私をじっと凝視してきてる! キモいんですけど!? " って思われたら軽く死ねるぞ?
そんな事を考えて焦る俺を見て土方さんは眩しい位の笑顔を見せた後、スマホを持って座っていた席を立とうとした。
すると
「千鶴、何してんだ? ゲーム? お前がそんなクソ陰キャみたいな事してるなんて珍しいな? そんな事止めて俺達と話そうぜ?」
と陽キャ達が固まっていた場所から1人の陽キャ男子が土方さんに向かって歩いて来て土方さんに話し掛けた。
……流石陽キャ。 土方さんの事は名前呼びなんだな。 て言うかこの陽キャ男子って、俺に " 話し掛けるな " と言ってきた奴じゃん。 名前は……やべぇ、憶えてないや。 まぁいっか。どうせ関わらない奴だし。
すると土方さんはあからさまに嫌そうな顔をした後、陽キャ男子に向かって
「……は? 何故貴方にそんな指示をされなくてはいけないのですか? 私が何をしていようと私の勝手ではないでしょうか? 別に貴方に私のしているゲームをして下さいとは一言も言っていませんよね? 人が好きでしている事に口を挟まないで頂けますか? それと、私の名前を気安く呼ばないで頂けますか? 私、貴方に呼び捨てにされる覚えはありませんし許可もしていませんが? と言うか……貴方はどちら様でしょうか? 私のお友達でしたか? 私の記憶にないのでもし私のお友達でしたらごめんなさい」
と無表情な顔をしてそう言った。
「……え? 俺の事……知らない? ……マジで言ってる?」
「? はい。知りませんが? 初対面ですよね? お名前……は別に良いです教えて頂かなくて。どうせ聞いても覚えていませんから。私、男子に全く興味はありませんので」
土方さんのその言葉を聞いた陽キャ男子は、よろよろとふらつきながら後に下がり、その後
「う、嘘だ~~~~!! 俺の、俺の名前は木村拓だ~~!! 俺の事認知して無かったなんて~!! もしかして俺、結構痛い奴!?」
と言いながらその場に膝から崩れ落ちた。
……うん。端から見たら結構ヤバいね君。 イキったは良いけど名前を気安く呼ばないでと言われた挙句、存在を認知されていなかったとは……。 陰キャの俺よりヤバくね?
膝から崩れ落ちた……名前誰だっけ? まぁ、陽キャ男子君を陽キャグループが遠巻きからひそひそ言いだした。
" わぁ、イキったのに知らないだってwww "
" 名前呼ばないでって言われてるよ。ダサっwww "
" あいつ明日からハブろうぜwww "
するとそんなひそひそ言ってる声が聞こえたのかどうかは分からないけど、土方さんが陽キャグループに向かって一言
「申し訳ありませんが、私、あなた方の事も知らないのですが? 同じクラスの人でしたか?」
その言葉を聞いた陽キャグループ。 急に話すのを止めて沈黙。まるでお通夜みたいな雰囲気になってしまった。
そんな雰囲気を生み出した当の本人は、我関せずと言った感じで笑顔で俺に近付いて来て
「い、和泉君、あのですね、和泉君に教えて頂いたこのゲームなんですが、どうしても高得点が取れなくて。もし良かったら高得点の取り方を教えて貰えませんか?」
と言いながらスマホの画面を見せてきた。
「あ、ああ。良いよ。これはね……」
俺は懇切丁寧に土方さんに得点の取り方を教えていく。 ゲームオタクとしては当たり前の行為だ。
「……♡」
こうして俺と土方さんは昼休みの時間中パズルゲームをして過ごした。
ここまで読んで頂きありがとうございますm(__)m
面白いと思われたら ♡ ☆評価 コメント レビュー等を頂けたら嬉しいです (* ̄∇ ̄*)
今後とも拙作を宜しくお願い致しますm(__)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます