第2話 俺、生まれ変わるみたい

 情緒さんがどこかへいって、恥も外聞もなく泣き喚いて、落ち着いてから俺は再度スキルを吟味し続けていた。


 その結果選んだスキルはこの三つだ



 一つめは【記憶】

 これはもう言わずもがな、俺の夢と希望の詰まったスキル。

 これさえあればなんでも出来るってぐらいには高く見積もってます。



 二つめは【浄化】


 これはですねえ、詳細を見てもらうのが早いかな


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 【浄化】

 汚物を殺菌、分解、浄化できる。

 アンデッドモンスターに高い効果を発揮

 する。

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 これだと思ったね。

 これ以上に重要な力が一体いくつあるのかという話なんですよ!


 例えば、文明の発達していない冬の寒村に生まれたとしよう。

 食料不足による栄養失調。それにより体力の低下と免疫力の低下。果ては病死すらあり得る。


 栄養失調はこの際どうでも良い。免疫力の低下も防げない。だが殺菌効果により病気に罹るリスクを抑えることができるし、希望的観測だが病気になってからでも【浄化】で回復することも出来るかもしれない!


 まだあるぞ、衛生面の改善だ。

 排泄や歯磨きこれらが【浄化】の一つでパパッと片付けられるかもしれない。

 中世などでは街中で野糞なんて当たり前なんて時代があったと聞くし、ラノベファンタジー準拠な世界なら冒険者という職業だってあることだろう。

 冒険において困る物それは排泄物の処理だ。人間がいた痕跡を強く残してしまう上に、鼻の良い魔物などにはすぐに嗅ぎつかれてしまうかもしれない。それを防げるのであれば生存率にも関わってくるだろう。


 と言った深読みの結果選んだのが【浄化】だ。



 最後に三つ目、【魔法の才】


 早速これも詳細を見ていただこう


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 【魔法の才】

 魔法の才能と素質を得ることが出来る。

 どのような魔法がどのように使えるかは

 努力次第。

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 言うことありません!

 【記憶】スキルとは違った意味で夢と希望に溢れた素晴らしい可能性のスキル。


 折角、魔法があると言う世界に行くのだから使えるに越したこと無いよねえ?

 これもまたせっかくだから選んでやったぜ!



 以上の三つが選りすぐった、ぼくがかんがえたさいきょうのスキルだ。


 上から順番に取得スキルを選択してYESを押していく。

 【魔法の才】を選択しYESを押すと新たなウィンドウが現れた。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 三つのスキルが選択されました。

 【記憶】【浄化】【魔法の才】

 以上の三つでよろしいですか?

     YES or NO

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 吟味は十分過ぎるほどにした。悩んで悩んで落ち込んで泣き喚いてまた悩んでその末に決めたんだ、今更変えようなどとは思うまいよ!


 俺は迷わずYESを押した。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 それでは転生を開始いたします。

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 俺の体が少しづつ光り輝き始めた。



 ....そっか。もう転生するのか....

 



 最後にお世話になった(?)ウィンドウさんにお礼言って頭下げとくか。


 ....だって今さらになって、自覚してしまった。実感してしまった。俺は死んだんだってことを。もう両親には会えないということを、友人とも遊べないし、推しも応援出来ないし、そういや大した親孝行もしてない....友人には遊びに誘われてたっけ....その返事も出来ない....やりたいことなんてなかったけれど、やりたいと思ったことはいっぱいあった。

 人は後悔せずに死ぬことなんて出来ないんだろうな....後悔ばっかだ、後悔....ばっかりだ....


 不親切でこっちが必死にならざるをえないウィンドウさんのあの仕様。ある意味で現実逃避が出来ていたのかもしれない。


 きっとそんな風にはデザインされてないだろう。きっとそんな思惑はなかったんだろう。それでも、なんとなく感謝を抱いてしまったんだ。


 どうせ無機質なシステムなら、勝手に恩を感じて、勝手にお礼を言うぐらい構わないだろう。


 「転生させてくれてありがとう....俺にもう一回チャンスをくれでありがとう....! うぐっ....ひっ....ざようなら....ズズッ....いっでぎます!」


 なんでだろう....涙がボロボロ溢れでてきて止まらない。止めたくない。涙声で鼻が詰まって聞き取りにくかったかもしれない。

 けど、それでもありがとうと言いたかった。

 誰にも言えなかった、「さようなら」と「行ってきます」を誰かに聞いて欲しかった。


 俺の身体がほぼ全身光り輝いて前も見えなくなる直前

 

 新しいウィンドウが見えた


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 良い人生を。

 いってらっしゃい。

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 テンプレートなのかもしれない、用意されてた言葉なのかもしれない。

 それでも救われたような赦されたような気がした。


 ああ、俺はもう行くよ、みんな....

 

 そうして光で前が見えなくなったと同時に俺の意識はなくなった。

 

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