第4話
シャトルを打つ度に出るパシンという乾いた音、キュッキュッとシューズと床が擦れる時に生じる音、たまにシャトルを面で捉え損ねた時に出るラケットのフレームによる高い打球音。たまにこれらの音が恋しく感じられ、どこか寂しくなる。気の抜けた甘いジンジャーエールを飲みながら、バドミントン部だった頃の経験を思い返していた。
「あの時、あんなことさえなければ……、あの時……」
「千里、ちょっと千里ってば」
「んん、はい、天崎です」
「まーた部活のこと思い返してたろ今」
「うわぁぁ、桜さん、いつのまに」
バドミントン部のことを色々思い返していると、目の前には俺達がよく知るファミレス「グスト」の店員さんがいた。名前は桜さん。(本名は知らない)
年齢は俺達の一つ上で、高校二年生。俺達と同じ高校に通っているみたいだが、学内で彼女の姿を見たことは一度もない。俺達が学校を頻繁にサボるようになり、このファミレス「グスト」に通い始めてから仲良くなった過去がある。容姿は一言で言うと「綺麗な人」に尽き、彼氏がいても全く不思議そうではないが、以前志童が何気ない気持ちで彼氏とかいないんですかー?と質問した時に即座にげんこつを食らっていたのを見て彼氏がいないことは確認済みである。(現在は不明だが)
「また、サボりかよお前ら」
「いやー進路のこととか色々悩んじゃって、あははは」
軽いノリで志童が返す。
「逆に桜さんこそ、バイトばっかで学校行かなくていいんですか?」
「んー私は、成績がそこそこ取れてるから許されてるみたいなんだ」
「何すかそれ、桜さんらしいや」
こうして、学校に行かない理由を聞いてもいつもはぐらかされる。因みにウチの高校は原則として、アルバイト禁止である。
「それより、お前ら知ってる?泣き虫優等生の話」
「何ですかそれ、ネット掲示板の話か何かですか?」
「全然ちげーよ、隣の高校の優等生の噂話だよ」
「初耳ですね、教えてくださいよ」
どんな話が聞けるのかと、ワクワクしながら席を立ち、ジンジャーエールのおかわりをグラスに注いでいた。
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