10.5話 間話
ドラグノフはヘリの中へと移り、ぐったりと席へ座り込む。
「ふぅ〜……思ったよりキツかったぜ」
ヘリの操縦桿を握った男に、ドラグノフは話しかけた。
「首元のやつは回収できなかったが、とりあえず足は回収してきたぜ」
「おつかれ、それだけでも大きな成果だ」
もう一人の男は、目線を変えずに答えた。
ドラグノフはぐったりと背もたれに寄っかかったまま、さらに質問をする。
「でもなんで、お前『アンドロイド本体、特に首元の宝石、それが出来なくてもせめて足は回収するように』なんて言ってきたんだ?」
「おそらくその部分に、あのアンドロイドの秘密が隠されていると考えているからね」
「はぁ」
難しそうな話題だと悟ったドラグノフは、どうでも良さそうに返事をする。
その様子を一切気にすることはなく、もう一人の男は続けて話し始めた。
「首元にある宝石は、恐らくあのアンドロイドの異常なまでの力を成立させるためのパーツの一つなんだよ。外部、内部のエネルギーを変換、増大させてエンジンとして出力。君の戦った個体名リリィの場合は機動力に生かされていたようだね」
「へいへい、そうですか。で、この足は?」
「その部分にも考察できる要素は沢山ある。作り出された膨大なエネルギーは足元のエンジン部分に出力。六本の放出部から噴射し高速での移動を可能にしているのだろう。さらに膝部分にある部品は内部エネルギー増幅の役割を持ち、そのまま放出部から噴射することで蓄積されたエネルギーを移動させる際に生まれるロスを……」
「……あーあー分かった分かった。それよりも、俺あそこ爆発させちまったけどよかったのか?」
無理矢理ドラグノフが話題を変えようとすると、もう一人の男は残念そうな顔をした後、質問に答えた。
「……問題ない。あそこにあったデータはもう本部に全て移してある。兵器たちの指示系統が使えなくなったのは痛いが、後々解析されてこちらの技術が大幅に露呈するのは防げたからね。君が爆破してくれて助かったよ」
「そりゃどうも」
「君とアンドロイドの戦闘データ、そして回収できたアンドロイドの一部。どちらも新兵器開発の研究に役立たせてもらうよ」
男は不敵に笑い、ヘリの窓から見える夕陽を眺める。
ドラグノフは胸ポケットから一本、煙草を取り出す。持っていたライターで火をつけようとしたが、バチッ、バチッと一瞬火種が出るばかりであり、中々火がつかない。
もう一人の男は前の座席から、新品のライターを放り投げる。
ドラグノフはそれを受け取り、煙草に火をつけた。
「…しっかし、すっかりとどめをし損ねちまったな。次会った時には、アイツをバラバラにしてやらァ……!」
立ち込めた灰色の煙は、ゆっくりと上に上がっていった。
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