第2話:デートしよ?

 2人が街を巡って数日が経ち、季節は夏へと変貌し7月と暦の上でも変わり始めた。なんも変哲のない日常がつらつらと紡がれながらも、学校には1学期の期末考査が待ち構える。


「ふぅ。まぁ、今回も問題なかった。桐吾は?」

「あぁ~多分2、3個落としたかもしれん。」

「あらら。まぁ、補講あったら教えて?できる限り、教えるから。」


 そんなことを言って午前中の学校はチャイムと共に生徒が校門から出ていき、勉強や、余裕のある時間に歓喜し遊んだり、様々な選択肢から各々が決めて享受していた。

 一方で、一樹は家に帰ると同時に、LINEの通知が鳴り響いた。相手は日向だった。


日向:『ねぇ、今からデートに行かない?』


 乾いた一言がぽつんと画面に映る。彼は、何も考えずに了承の連絡を返した。


時間は変わり、すっかりと夕闇が空を包みかける時間に一樹と日向は集合した。


「ごめんね~。少し準備に時間が掛かっちゃって。」

「いやいや。問題ないよ。それで、どこ行くの?」

「えっ?宇野くんが決めてくれてるんじゃないの。」


 お互いが顔を合わせて「「えっ??」」と情けない声を出す。ただ、そこに気まずい空気が流れた。1秒後、日向は咄嗟に彼の手を掴んでいきなり走り出した。


「ご飯!食べに行こっ!!」

「えっ!?わ、分かった!!」


 強引に引っ張る彼女にまんざらでもない表情になりながら一樹は引き摺られていきながら駅前にあるファミレスに行きついたのであった。


「宇野君、何頼む?」

「うーん、鷺宮から先に決めて。」

「そっか、分かった♪」


 ファミレスに行きつくや否や注文するものを考えた。一樹は何も考えることができない状態にあり、一先ず日向に頼むモノを先に決めてもらった。


「決まったよ~。あっ、宇野君ドリンクバーとサラダつける?」

「あっ、つけよっかな。」

「そっか分かったよ♪。それじゃあ、呼んじゃって大丈夫?」

「よろしく。鷺宮。」


 呼び鈴を押して店員を呼ぶ、それぞれ日向はパスタ。一樹はハンバーグプレートを頼む。そこからはドリンクバーとサラダから適当につまんでは飲んでをしていると、注文した料理がそこにはやって来る。

 食欲をそそる匂いに、2人は喋ることよりも食べることを優先しており、デートとは何なのか分からない状態で食事は粛々と続いていった。一樹も日向も空腹には勝てなかった。


「食べたね~宇野君。」

「うん、食べたな。鷺宮。」

「それはそうとしてぼちぼちいい時間になって来たね!」

「だな~。どっか行くか?」

「そうだ!映画館!!」


 日向は悪気も無く言葉を連ねる。一樹もそれがあったかと言わんばかりに手を叩く。そうして2人は映画館に向かって歩き始めた。


「到着!!」


 元気な声が星空がうっすらと見える時間の田舎町に小さく響き渡る。一樹は少し寂しそうな眼をしながら映画館の外観を見る。少しだけ寂れていつかは壊されてしまうであろうこの建物に哀愁を感じていた。


「ねね、宇野君!何観る??ここ結構面白い映画が多いねッ♪」

「う~ん、そうだな~。鷺宮が選んでよ。」

「ホント?じゃあ、これっ!!」


 そう言って彼女が選んだ映画はハートフル映画に見せかけた鬱映画だった。日向はにこにこしながら一樹のことを再び引っ張っていき、誰もいない映画館へ足を運ぶ。そして、半券を買った。僅か300円と何処か時代を間違えているのではと不安に思うくらい安かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

脈アリだと思ったらそんなことは無かった。 くうき @koooodai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ