第1部:思込編
第1話:公園
一樹と日向が分かれた後。一樹は少しだけ連絡をする。相手は桐吾だった。彼と話した内容は、他愛もない世間話。この先生はあたりだとか、このクラスの女の子レベル高いな。とか、男子高校生がしそうな話だけだった。
そのタイミングで、一樹は桐吾に少し、相談をした。
「少し聞きたいんだけどさ、鷺宮さんってどんな人かわかる?」
「あぁ、鷺宮?知らねぇな。ただ、野球部のやつらはみんなこぞって容姿を誉めては、恋人になりたいとか、下賤な考えを抱く奴らばっかだ。」
「そうなんだ。」
「あぁ、そうだな。後は、良くない噂か?色々ヤバいことやっているとか、してないとか。良く分からなねぇんだよな。どこか、一歩踏み込んでこないだろ?誰にでも、おんなじ対応をする。」
桐吾は少しずつ、話しているうちに、時間は小一時間経過していた。それに伴い、彼は、明日の朝練を理由に通話を切った。その後、一樹のスマホに、不在着信が何十件と掛けられていた。
「えっ・・・ナニコレ?」
独り言が部屋に小さく響くと同時に、スマホからは木琴の着信音がやさしく響き渡る。
「はい、もしもし………あっ、鷺宮。」
「あっははっ。もしもし♪宇藤君!今、暇かな?」
「えっ?まぁ、暇だけど。」
「そっか!なら良かった!今公園に来れる??」
日向の突然の提案に困惑を隠しきれない一樹。彼女は、声を少し低く、どこか艶めかしい声で。ゆっくりと囁いた。
「これる・・・よね?」
「は、はいぃ。」
彼は、情けない声を彼女に聞かせてしまったことに後悔しながらも返事をした。日向はそれに「じゃあ、待ってるね。」とそのまんまの声で囁き、通話は切られた、一樹は、少し腰を抜かしながら、下腹部に、若干の温かさを残し、外に出る準備をした。
「あっ!来たね。宇藤君!」
「来たよ。鷺宮。それで要件は何だ?」
「うん、町を回りたいなって。」
「はぁ?今、23時だぞ?こんな時間に、何で?」
「………君は、知らなくてもいいんだよ?」
出会った矢先、彼女は突然、町を回ろうと提案した。一樹は困惑しながらも真意を探るために、質問をした。しかし、彼女は秘密を仄めかし、勝手に歩き始める。それに、彼はついていかざるを得ずに、ただ真っ暗闇の街を歩き始めた。
昼とは違う、少し荒廃が進んだ町は、どこかホラー映画の導入にもありそうな雰囲気があり、人気のなさから2人ッきりの状態だ。
でも、どこか大人もいない、子供だけの自由な時間がそこには同様に広がっていた。
「ここが、商店街。今は店も閉まってるけど。大体、休日はここら辺に人が集まるよ。」
「へぇ~そうなんだ~。宇藤君、おすすめの場所とかある?」
「あるけど。」
「なら、連れてって?」
「分かったよ。じゃあ、商店街抜けよっか。」
2人は商店街から抜け出し、少し街道から外れて小さく、古びた木造建の映画館があった。
「・・・ここは?」
「ん?映画館。と、言っても都会のように最新作とかが写る訳でも無い。半分は歴史的な建造物。半分は廃棄物だ。」
「でも、何で気に入ってるの?」
「何でだろ?個人的な思い出なんじゃないかな?僕は、ここのおじさんにとても良くしてもらってたから。」
「へぇ~そうなんだ♪それは、とてもいいものだね!」
そこで2人は、空を眺める。電柱も無ければ建物もほとんどない。ただ、古びた映画館と周辺の山、草原。そして、満天の星空は薄ーい雲に張られながらも輝き続けていたのだった。
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