脈アリだと思ったらそんなことは無かった。

くうき

第0話 出会い

 恋をする。たったそれだけのことだ。しかし、それが一人、いや複数の人間の人生を狂わせた。たった一人の少女によって。崩れたのだ。


「一樹~、また明日な。」

「うん、また明日。桐吾君。」


 他愛の無い別れの言葉を交わし、彼ら宇藤一樹うとういつき鹿目桐吾かなめとうごはそれぞれの向かう方向へ足を進めた。

 その一方で、教室の片隅で頬杖を突く少女は暗い笑みを浮かべる。


 6月のじめじめとした纏わりつく嫌な雰囲気が醸し出す空間に、その少女は鞄を持って、一樹の元へさり気なく、足を進める。


「さて、はじめちゃおっ♪」


 毒を含んだ言葉は、少しだけ転がる。誰も気が付かない。その心の奥底には誰も、届かないのだった。



 少し時間が経ち一樹は一人、電車に乗ってただ、座席で小説を読む。物静かになる田舎の電車の風景を眺めながら家の帰路まで時間を潰していた。そんな時だった。


「ねぇ、隣。いっかな?」

「え?あっ、はい。どうぞ。」

「じゃあ、お言葉に甘えちゃうネッ♪」

「………鷺宮。お前、帰り道反対の方向じゃないか?何でここに?」

「あぁ~、私少し家庭の事情で親戚の家に泊まることになっているの。」


 一樹は、隣に座った少女鷺宮日向さぎみやひなたに質問を投げる。彼女は少しだけ考えて発言をした。しかし、一樹は些か疑問に思った。


「俺の家の周辺には鷺宮って名字は無いはずだぞ?」

「えっ………あっ、あぁ~。それはね、私の遠い親戚で”小森”って名字の家に行くんだ。」

「あぁ、そうなんだ。」

「………それでね。宇藤君に聞きたいことがあって。」

「はぁ、何。」

「宇藤君そこら辺の地域詳しいでしょ?」

「まぁ、人並みには。」

「だから、教えてほしいの!!お願いっ!!」


 両手を合わせて上目遣いで一樹のことを見る。彼は断ろうと思った。しかし、彼女はそこで涙を流した。周辺に誰もいなくても、彼にとって女の子を泣かせたというものは外聞に悪いと感じたのか、彼は了承してしまったのだ。



 彼女の素性を一つも知らないままで。


 第一部:思込編へ続く。


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あとがき。


なんか、久しぶりですね。ラブコメを投稿しました。今回のはかなり好き嫌いが分かれる作風になると思います。ただ、思いついて、構成も決めているので文章に書き起こしながらのんびりとやっていきます。


応援してくれるとありがたいです。

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