第8話 もしかしたら




『るいちゃん!るいちゃんっ!やだよ!ねえ!ねえってば!』




 大きく揺さぶったらダメだ。

 瑠衣るいが死ぬ。


 周囲の誰かだったか。

 駆けつけた母親だったか。

 瑠衣の母親だったか。

 自分の母親だったか。


 とても、とても、

 恐ろしい声だった。

 恐ろしい言葉だった。


 とても鋭く大きく厚い剣に、身体の中心を軸に全身の端々まで貫かれたかのように。今現在ですら、否、未来永劫、貫き続けるように。

 痛みと熱と恐怖を与え続ける。




 本当は、もっと優しく言われていたのかもしれない。

 本当は、もっと違う言葉をかけられていたのかもしれない。

 本当は、誰にも何も、言われていなかったのかもしれない。

 錯乱した自分が、創り出した、幻聴。だったのかも、しれない。




 現実に在った事なのか。

 現実には無かった事なのか。

 関係ない。


 ずっと、ずっとずっと、自分を蝕み続ける。

 ずっと、ずっとずっと、自分を諫め続ける。


 もしかしたら、

 もしかしたら。


 自分が瑠衣を殺していたのかもしれない。











(2024.7.4)



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