第6話 騎士団団長




 騎士団。

 暴風(台風、竜巻など)、豪雨、豪雪、洪水、地震、津波、火山爆発、火災、感染症などの自然災害、及び、摩訶不思議生物の襲来など、国民生活に大なり小なり危害を加えるほど生じた異変への対応を任された組織。




「これでキミのお気に入りが早く記憶を取り戻すといいね」


 局長室から足早に出て行った禾音かのんを追って、瑠衣るいなぎに頭を下げて出て行ってのち、凪は自分が居る客間とは別に、局長室にもう一つ併設されている事務部屋へと繋がる扉へと声を投げかけた。

 すれば、扉を開けて、一人の男性が姿を見せた。

 本人は筋肉ムキムキになりたいが、体質的に筋肉がつきにくいのか、ほどよい筋肉マッチョにしかならない事をひどく気にしている騎士団団長、怜央れおである。

 怜央は規則正しく歩いて凪の前に立つと、深々と頭を下げた。

 

「世話をかける。もしも、貴様の部下の仕事に支障をきたすようならば言ってくれ。こちらで引き取って、力づくで記憶を取り戻させる」

「まあ、禾音クンは記憶をなくす前からしょっちゅう瑠衣クンの傍に居座って、何故だか知らないけど、バーベキューをしていたからね。瑠衣クンにとっては、そんなに環境が変わらないから、仕事に支障をきたす事はないと思うけど。もしも本当に、瑠衣クンの仕事に支障をきたすと、瑠衣クン自身が申し出るか、私が判断した場合、即刻追い出すからね」

「ああ。是非そうしてくれ」

「しかし、まだ騎士団に正式に入ってそう時間が経たない禾音クンの為に、騎士団団長がわざわざ、私に頼み事をするなんて。よっぽど気に入っているんだね」

「まあ。な」


 にまりにまり。

 凪は嬉しそうに怜央を見つめた。

 怜央はその笑顔から逃げ去るように、協力感謝すると言い置いて、その場を立ち去って行った。




 記憶を取り戻さない方が、キミにとっては、都合がいいだろうに。

 ぽつり。

 そう呟いた凪は両腕を上げてのち、首を二、三度左右に動かして、お茶でも飲もうかと立ち上がり、客間の端に設置されている豪華で華麗なオリジナルキッチンへと向かったのであった。


「ま。そうは言っていられない。か」











(2024.7.3)



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