目が覚めても悪夢(2)
「あ、貴方…何故このような…」
“信じられない”と、そう言うよりないほどの状況が揃ってしまっている。収まっていたパニックが帰ってきて、もはや頭は真っ白だ。
そんな真っ青な顔のリリーナを見たディードリヒは、優しく笑って言葉を囁く。
「そうだな…まぁ、“ストーカー”ってやつだからだよ」
そう囁いた笑顔は今にも爽やかな風が吹きそうで、正しく王子のよう、だったのに。
「はぁ…」
相手の宣言にも似た発言に卒倒しそうなリリーナの横で、物憂げなため息が聞こえた。ぎこちない首の動きでそちらを見ると、瞳を濁らせただけの美形が自分の髪に顔を近づけては物憂げなため息に変換している。
「はぁ…リリーナはいい香りがするね。まだ牢から出して間もないからこれが君の香りなんだってよくわかるよ…この香りがだんだん僕の家の石鹸の香りになってくるなんて、興奮が抑えられそうにないな…」
「ひっ…」
反射的に顔を離した。本気で怖い。
「あ、待ってリリーナもうちょっとだけ…」
そのままディードリヒは首筋に顔を近づける。
「やっぱ最高かも…このまま食べていい?」
その言葉にまた一つ顔が青くなった。
「お…」
もう耐えられない、と言うように震える喉は精一杯に声を放つ。
「お こ と わ り で す わ ぁ !!」
牢に入れられるより何より、この現実が自分への罰なのではと考えてしまって、彼女は自分の行いを心から悔いた。
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