映画デート①
今日は久々の休日だ。
その前日の夜に美憂をデートに誘った。
今日は某有名ロボットアニメの映画公開初日だった。デートとしてはありえない選択肢だが、以前からその話をしていた為、美憂はしっかり全話履修していた。
彼氏の好きなものは全部知りたいと言う彼女は理想の彼女と言えるだろう。
限定もののプラモデルを無事に購入できた俺は隣に美憂がいることを忘れて映画に熱中した。
本編で明確に愛の言葉を使わなかった主人公とヒロインがお互いのことを愛していると明言した時は涙が出た。
これこそが愛なんだと思うシーンだった。
忙しくて積みプラばかりになっているが作りたくなるほどいい映画だった。
映画を見終わった俺達は車にプラモを置いて喫茶店に向かった。
「すまん。デートで見る映画では無かったよな…。」
冷静になって謝る。間違いなく選択ミスだ。
「そんなことありません!主人公とヒロインがお互いに愛していると言ったシーンには思わず涙が出ました!それに最後のキスシーンは最高でした!それにそれに…」
美憂は自分の感想を一気に捲し立てる。
元々好きではなかったはずなのにしっかりと本編を見て映画にも集中しなければここまでの感想は出てこない。俺に合わせてしっかりと見てくれたんだろう。それだけで俺の胸は熱くなるのを感じた。
「君と出会えてよかった。」
思わず言葉が漏れる。
「ふぇ!?あ、ありがとうこざいましゅ…。」
一気に赤くなる顔。そのコロコロと変わる表情が可愛いし愛おしい。
「次は美憂の見たい映画を見ようか。」
「もう一周します?」
返ってくる言葉に思わず吹き出す。
「いやDVDが出たら買うよ。そしたらまた一緒にみよう。それより見たい映画はないか?俺は美憂が見たい映画が見たい。」
美憂は少し悩んで現在公開中の恋愛映画の名前を挙げる。
「いいね。じゃあこの後行こうか。」
「はい!」
うん。いい笑顔だ。
どうやら今の流れで正解だったらしい
確か恋愛ゲームでも恋愛は寄り添い合うところから始まると言ってたはずだ。
現実でも選択肢が出てくれるといいんだがそううまくいかない。しかも残念ながら俺もちゃんとした恋愛など初な為、咄嗟に喜びそうなことも浮かばない。大体は恋愛ゲームからの学びを利用している。だが長い事1人で過ごしていたせいで趣味を優先する悪癖は抜けない。
達也と茜は俺が出不精なのを知っているからか基本は俺の家に集まるから外に出るのも映画と買い物くらいだった。
やはり恋愛は難しい…。
だが美憂に見捨てられると困るので俺はこの後のプランを必死に考えるのだった。
喫茶店から出て再度映画館に向かったところ見知った2人の後ろ姿が見えた。
もちろん達也と茜だ。腕を組んで歩いている。
達也はどこかぎこちないが、仲良くしているようでよかった。
「声かけますか?」
美憂の言葉に首を振る。
「茜の不興を買うのは怠い。」
「デート中ですもんね。でもこの方向は恐らくですけど目的地は一緒ですよ?」
きっとそれは正しい。茜…達也に恋愛映画は選択ミスだろ?と思いながらため息を吐く。
「バレなければ問題ないだろ。バレたら間違いなく達也は俺に声をかけてくるけど上手い事後ろをついていくしかない。」
「なんか尾行している探偵みたいですね。」
美憂は楽しそうだ。
探偵に興味があるのだろうか。
「気づかれても気付いてなかった事にしなきゃな。茜は達也の事になると情緒不安定だから危険なんだよ。」
「それはちょっと怖いですね…。」
美憂は苦笑いを浮かべる。
美憂はまだ知らないのだ。達也が関わった時の茜のヤバさを。デート中ともなればさらにおかしな事になってもおかしくない。
アイツは生粋のヤンデレだし…。
中学の頃なんて…いやこの話はいいか。
兎にも角にも今は美憂とのデートを楽しむ以外の選択肢はない。
「まぁとりあえず俺たちだって外でのデートは久々だ。邪魔されるのも嫌だしこっちからは絡まない方向でいこう。」
「はい♪」
うん。いい笑顔だ。今日も推しは可愛い。
俺たちはその後絶妙な距離を取りながら映画館に入ったのだが…。
「宗司!来てたのか?なんだよそれなら声かけてくれても…。」
「よ、よう。奇遇だな。」
ジュースを買ってたら見つかった。あとの言葉は言わせねぇよと遮ったが冷や汗が流れる。
「どうした?体調悪いのか?」
達也が俺の顔をジロジロと見る。
美憂は気まずそうに茜を見ている。
気づいていないのはコイツだけだ。
茜は真っ直ぐに俺の目を見ている。
この2人もお互いに忙しい。
おそらく2人っきりのデートは久々だろう。
勿論邪魔をする気などない。
だからこっちの邪魔もしないで欲しい。
その目が上手く距離を取りなさいと告げているがそんな技能は俺にはない。
美憂は俺の目を見て頷いた。
「達也さんも今日はデートですよね?私達はFの7、8の並びです。カップルシートを取りました。達也さんは?」
「俺達はFの14、15だ。同じくカップルシート。」
距離は離れている。自然に離れられそうだ。
美憂が開場の案内をしている電光掲示板をみやると両手を合わせた。
「そうですか。ではだいぶ離れていますね。あっ開場みたいです。カップルシートは他の人が来てからでは座るのも気まずいので来る前に座りたいですよね?行きましょう。」
「お、おう?なんか今日は強引だな?」
お前のせいだ。気づけよ。
「私達は久々のお外デートなんです。だからダブルデートはまた今度お願いします。宗司さんは今日は私のですから。」
笑顔でサラッと言ったが美憂らしくないと言えばらしくない。その目はチラリと茜に向けられていたからだ。
茜はそれを受けて頷く。
「そうね。勿論4人でいるのは好きだけど今日は付き合ってから初めて休日が合ったデートだから私も美憂と同じ意見よ。また後日4人で会いましょう。」
茜の目線が俺に向くので頷く。
「あぁ。また連絡する。」
俺は美憂を抱き寄せて歩き出す。
その際茜が美憂に笑顔で手を振り、美憂も笑顔で振りかえしたのが見えた。達也はそこでようやく悟ったのか後ろで茜に謝っていた。
「助かったよ。」
美憂にお礼を言うといえいえと微笑む。
「ちょっと強引でしたかね…。」
「いやそんな事ないよ。あれくらいの勢いで言わないと多分気付かなかった。」
「ちょっと緊張しましたができるだけ自然に運べました。ダブルデートは楽しいですがやっぱり今日は独り占めしたいです。」
そう言って頬を染める美憂が本当に可愛かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます